2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のプラットフォームメディアである「RPA BANK」との包括的パートナーシップを結ぶ「米国RPA AI協会(Institute for RPA and AI)」。総会員数79,000人を擁し、米国のRPA及びAI市場では最大ネットワークとなっている。年間、数百社を超えるRPAユーザーとの接点を持つ同協会の会長であるフランク・カザーレ氏に、米国における最新のRPA活用動向や、成功する企業の共通点、RPAの次に注目するべきテクノロジー、日本企業に対する見解について聞いた。
──米国におけるRPAの普及状況について教えてください。
日本ではこの1、2年の間にRPA市場が活性化していますが、米国では5年ほど前から企業の間でRPAを導入する動きが見られるようになり、現在では多くの企業・組織の間に浸透しています。特に広く普及しているのがアウトソーシング業界と金融業ですね。
──なぜ、その2つの業界で際立ってRPA導入が進んでいるのですか。
まず米国では、リーマン・ショックをはじめ深刻な金融危機を過去に何度か経験しており、そのたびに経営が圧迫され、潰れる企業が多発していました。そうした危機を乗り越えるためのソリューションとなったのが、アウトソーシングによるコスト削減です。金融業というのは何回も繰り返すプロセスが多いため、アウトソーシングによってコストを抑えるには理想的だと言えます。それはまたRPAにとっても同じであり、従来はアウトソーシングしていた業務が、RPAによって自動化するという流れが加速しているのだと見ています。
──米国の他の業界においても、RPA導入の最大の目的はコスト削減なのでしょうか。
コスト削減がRPA導入の理由のすべてではありませんが、やはり最も一般的な理由であることは間違いないでしょう。シンプルに、できるだけ多くの仕事を、できるだけ少ない人数でこなせるようにするためのツールとしてRPAを導入しているのです。
先述したように、かつてはコスト削減のための最適解はアウトソーシングでした。ITの業務であればインドなど国外へのオフショア・アウトソーシングが盛んでしたよね。それが5年ほど前から国外の企業ではなく、ソフトウェア──つまりRPAにやらせてしまおうという流れが次第に強まっていったのです。仕事をRPAに任せることで人件費が削減できるという、コストセービングの新しい道を米国企業は見つけたというわけですね。
いっぽう、日本では多くの企業が雇用を維持しながらより生産性を上げていくためにRPAを導入しています。そこが米国との大きな違いでしょう。残業時間を減らすなど、労働時間を抑えながら生産性を維持、もしくは向上させるためにRPAを活用するというのは、日本的なアプローチだと言えます。
──社内業務にRPAを取り入れる際の姿勢について、米国企業と日本で目立った違いなどありますか。
RPAやAI(人工知能)といった新しいテクノロジーに対して企業が見せる反応は、大きく二種類に分かれます。新しいものへの期待と好奇心でワクワクして取り組む企業と、未知であるだけにリスクを重視して消極的になる企業ですね。この傾向は欧州も日本も同じでしょう。そして積極的な企業であっても大企業の場合は、少しずつ進めていくケースが多いです。
──RPA導入に成功している企業の共通点とは何でしょうか。
うまくいっている企業ではトップの意志と理解があることはもちろんですが、同時に現場における理解もあります。RPA導入プロジェクトにおける早い段階から、現場のサポートがあるかどうかというのはとても大事です。これはツールがどうこうと言うよりも、マインドセットの話です。トップダウンにせよボトムアップにせよ、実際にRPAを使うことになる現場が関わらなければ、ツールだけを取り入れたところでまったく変化は起きません。
──AIの導入については、米国企業の動きはどのような状況でしょうか。
いま米国では誰もがAIについて夢中になって話していますが、ほとんどの企業が実際に使っているのは現在のところRPAです。ただし、5年前のRPAブームからの次のステップとして、いまIA(インテリジェントオートメーション)
「データ収集→入力→データ処理」のような一連の業務を遂行する上で、処理される情報の流れをRPAなどの活用を通じてデジタル化し、データサイクルを最大化。こうした形態に、知的テクノロジーと言われる機械学習(コグニティブ)や自然言語処理などを活用することで、業務プロセスの継続的改善と高度な自動化を実現する取り組みのこと。
に進もうとする企業が増えています。RPAを導入して2年ほどで一定の成果を出した企業が、次にIAを取り入れて、最終的にAIの活用を実現していこうという流れが起きているのです。
よく、RPAのステップを省いていきなりAIに行けばいいのではないか?と質問されるのですが、そのときにはこう答えるようにしています。「AIはよりパワフルだが、RPAよりもはるかに複雑だ。まずRPAで小さな問題を解決し、小さくとも成果を得てからその先に進めるというアプローチが懸命だ。そうでないと大変なことになるかもしれない」
──日本企業でのRPA導入が、欧米の企業と比べてかなり遅れている点について懸念する声もありますが、その現状についてどう見ていますか。
確かにRPAの普及度合いは欧米よりもかなり低いですが、そこは大きな問題ではないはずです。なぜならば、いますぐにでも始めることで数年前の米国企業よりも簡単にベネフィットを得られるからです。つまり日本企業にとっての強みは、米国や欧州の企業が過去5年に経験してきた成功例からも失敗例からも学ぶことができ、それらを参考に自社に最適なツールを選ぶことも可能だということです。
米国RPA・AI協会が立ち上がった5年前には、RPA導入の事例というものはほとんどなく、またツールの選択肢も少なかったです。それがいまでは事例もツールも豊富にあるので、それらを活かすことで簡単にベネフィットが得られるはずです。
我々、米国RPA・AI協会も膨大な事例を蓄積しており、Webサイトやイベントなどで精力的に発信しています。また日本にはRPA BANKがあるので、そのコンテンツを大いに参考にできるはずです。本日行われているようなカンファレンス(2018年7月4日に開催された「RPA DIGITAL WORLD 2018」)も、RPAについて勉強したり、自身の体験を共有したりするのに最適な場であると言えるでしょう。
──最近は特に、日本の労働生産性の低さが話題となっています。そこで生産性向上のための手段の1つとしてRPAに注目が集まっているわけですが、生産性改革に取り組む日本企業に対するメッセージをお願いします。
まず声を大にして言いたいのが、“ゲームはチェンジした。いつまでも過去を振り返っていても始まらない”ということです。
RPAやAIといったテクノロジーを駆使することで生産性を飛躍的に向上できる可能性があるというのは、どこの国の企業であっても同じです。これから2、3年の間に日本企業が真剣にRPAと向かい合えれば、日本が世界一の生産性を勝ち取ることも決して夢ではないのです。私には、日本にそれができない理由などは絶対にないと断言できます。しかしそうなるためには、経営者にせよ政治家にせよ、リーダーのマインドセットとビジョンが変わることが必須だと言えるでしょう。
──本日はありがとうござました。
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