キーマンズネット会員230人を対象にアンケート調査を実施した。導入を想定する時期や期待する機能などRPAの利用実態が明らかになった。
キーマンズネットは2018年8月10〜31日にわたり、「RPA(Robotic Process Automation)導入に関する意識調査」を実施した(有効回答数:230件)。回答者の内訳は情報システム部門が44.8%、営業・販売・営業企画部門が13.5%、製造・生産部門が10.9%、経営者・経営企画部門が6.5%だった。
今回は「RPAに期待する機能」や「導入を想定している時期」に加え、「具体的な導入を検討する際の障壁」などを調査した。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
前編では全体の4割で「業務の半分以上が定型業務」である実態や、8割がRPAを認知、理解しているなどの調査結果を基に、企業におけるRPAニーズの高まりを紹介した。
後編ではまず、全体に対して「今後、RPAに期待する機能」を聞いた。その結果「画像認識AIを組み合わせた自動文字認識とデータ入出力」が過半数の51.3%、「低コストでの既存システム間連携」46.5%、「契約書などの文書確認に関わる処理の効率化」41.3%、「音声データ解析を組み合わせた自動入出力」33.9%、「推論や予測分析などのAIを使った伝票処理の効率化」30.0%と続いた(図1)。
画像認識による文字データや音声データなど複数データの自動解析や、それらにAIを組み合わせることによる、さらなる業務効率化を求める声が多数集まった。この要望を見るだけしても企業におけるRPAへの期待の大きさが見て取れよう。
適用で効率化が期待できる業務が存在し、かつ認知や理解度も高いRPAだが、実際の導入はそこまで進んではいない。RPAを「導入済み」の企業が全体の14.3%にとどまっていることからも明らかだ。
また、RPAについて「興味がある」「導入を前提に調査中である」「導入計画がある」と表明している回答者を対象に「導入を想定している時期」を聞いても、54.4%と過半数が「未定」と回答し「1年以内」は38.9%にとどまる結果となった(図2)。導入検討企業であっても、具体的に導入時期が想定できている企業より「未定」の企業の方が多いことになる。
調査ではこの他、回答者全員に対して主要RPA製品について製品名の認知度合いや使用経験の有無などを聞いた。その結果、製品名の認知度が最も高い製品でも「知っている」とした回答者の割合は35.7%と決して多くはないことが明らかになてっている。
こうしたことからも、RPAに興味はあれど具体的な製品名に落とし込んで検討できている企業はまだ多くないようだ。
それでは何がRPA導入の障壁になっているのだろうか。
RPAの導入検討企業や導入企業を対象に「RPAの具体的な導入を検討する際に障壁となるもの」について聞いたところ、1位は「導入/開発費用」で48.8%、2位は「RPAロボットの作成スキルがない」で43.1%、3位は「運用費用」で40.7%、4位は「作成したロボットの管理が煩雑」で39.0%、5位は「導入成果の算出が難しい」36.6%と続く結果となった(図3)。
この結果についてそれぞれ選択理由をフリーコメントで聞いているので詳細を見てみると、1位の「導入/開発費用」については「スモールスタートで始めたいが初期費用が高額である」という意見があった。
また、「Windows 10対応との兼ね合いでRPA導入予算確保が難しい」という意見も寄せられた。現在はPCやオフィススイート類のサポート終了対応が喫緊と課題となっている企業が少なくないため、新規のRPA導入に予算を確保しにくい状況があるようだ。
また、5位の「導入成果の算出が難しい」についても「社内稟議(りんぎ)で費用対効果を提示できず、導入しにくい」「一連の業務フローの『一部』に適用する場合、説明が難しくなる」など、費用対効果の算出や社内稟議を挙げる際の説明のしにくさなどを理由に挙げる声も目立った。
アンケートでは「場合によってはRPAよりもシステム開発の方が安くつく」「システムのように細かな品質管理が難しいため、運用後の想定漏れに対応する負荷が高くなる」「修正が必要な場合はプログラムコードの編集が必要なので、ユーザーが自在に扱えるとは思えない」など、RPA導入よりもシステム化した方が安価に実現できるのではないか、といった意見も複数寄せられた。
そもそもRPAはシステム化しにくいかシステム化予算が付けにくいために手作業で残された業務を自動化する際に効果を発揮する。このため、システム化できるものを無理にRPAで実装する必要はないだろう。
ただし、前編で紹介したように、IT化が進んだ現代ですら、多くの企業に定型の繰り返し業務が多数残されている状況がある。RPAが注目されるのは、過去、多くの情報システム部門がシステム化から取りこぼしてきた業務が多数現場に残されているからに他ならない。生産性向上を考えるならば、システム化できない業務への視点を変えてみるのも方策だろう。
ロボットの作成や運用管理面の課題も多数挙げられた。2位の「RPAロボットの作成スキルがない」については「効果を出すためにはRPAに適した業務の洗い出し、対象業務のプロセス化、ロボット作成を全てできる人材が必要だが、決定的に不足している」「例外を前提としたRPA化のための業務分析スキルが不足している」などのコメントが挙がった。
運用体制を検討した結果、断念せざるを得ない、という意見だ。コンサルタントなどの外部の専門家に頼らずに運用するには、相応のスキルが必要になることを懸念していることが分かる。
この傾向は4位の「作成したロボットの管理が煩雑」にもつながる。「生成ロボットのメンテナンスが問題」「管理する人員がいなくなると使われなくなる可能性がある」「野良ロボット対策が課題」など、自社でロボットをメンテナンスし続ける点を懸念する意見だ。
こういったRPAの運用に対する不安はよく耳にする。確かにロボットはシナリオ通りに動くわけで、例外の業務フローやシステムの仕様変更などへの柔軟な対応は見込めない。そのため一度シナリオを作成して終了ではなく、むしろそこから継続的にメンテナンスを行い生産性向上のための運用体制を構築する必要がある。またその際、RPA導入現場もIT部門も一緒になり、場合によっては全社横断組織なども組成し運用体制とルール策定、継続的なモニタリングを促進することも重要だ。
RPA稼働状況の診断およびメンテナンスをアウトソースで引き受けるサービスも出てきており、社内に人材が不足している場合は利用するのも一手だろう。
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