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米軍が「AIに常識を教えよう!」とたくらむワケ:487th Lap金曜Black★ピット

AIに「ゴミ箱の中では何を見つけられる?」と質問すると、一体何と答えるのだろうか。DARPA(米国防高等研究計画局)の研究が始まった。

» 2018年10月19日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 AI(人工知能)が優れた能力を持つことは間違いない。スマホの音声アシスタントやスマートスピーカーを実際に使ってみれば分かる。AIを搭載するアプリも増え、その精度はどんどん高くなることだろう。

 一方で「AIは人間ならば誰しもが持っている『常識』というものが欠けている」と指摘する組織がある。米国防総省の研究機関である「DARPA(米国防高等研究計画局)」だ。彼らは「Machine Common Senseプログラム(MCSプログラム)」を実施して、AIに対して常識を教えようとしている。

 一体、どうやってAIに常識を教えるのだろうか。そもそもDARPAの言う「常識」とは何なのか。

 DARPAの組織の1つである「情報イノベーションオフィス(I2O)」のプログラムマネージャーを務めるデイブ・ガニング氏は「常識がないと、AIシステムは世界を理解して人々との自然なコミュニケーションを通じ、予期せぬ状況で合理的に行動することや新しい経験から学ぶことができなくなる」と言う。つまり、今後AIがより広く使われるためにはAI自身が常識を学ぶことが欠かせないということだ。

 MCSプログラムには、シアトルに拠点のあるアレン人工知能研究所(Allen Institute for Artificial Intelligence)が協力する。同研究所のWebサイトに、AIに示す常識として以下のような設問が提示されている。

  • 靴下を引き出しに入れたら、それは明日もそこにあるか?(If I put my socks in the drawer, will they still be there tomorrow?)
  • ゴミ箱の中では何を見つけられる?(What would you typically find in a trash can?)

 「何とも簡単な……」と思うかもしれない。しかし、われわれが常識だと思うことは、AIにとって非常に難しい問題になるのだ。アレン人工知能研究所のオレン・エツィオーニCEOは「常識はAIにとって『暗黒物質』(未知の物質)だ」という。例えば、上記の質問に対しては「引き出し」や「ゴミ箱」というモノの名称だけではなく、それぞれが持つ特徴や仕組みを知りながら、提示された設問の「文脈」を読む力が必要だ。

 同研究所ではこういった設問を10万件以上も用意し、AIに学習させるという。DARPAはMCSプログラムに参加する研究者を集め、「常識」を学ぶための設問を求めたり、アルゴリズムを募集したりする競技会のようなものを開催する予定だ。

 AIを研究する複数のテクノロジー企業は、あくまで自社の製品やサービスに関わる極めて狭い範囲のAIを強化しているにすぎない。より汎用(はんよう)的なAIを将来的に開発するには、ガニング氏が指摘するように「常識のなさ」というAIの欠点を補うことが必要だ。


上司X

上司X: DARPAが「AIに常識を教えるべき」と言いだしたという話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 確かにスマートスピーカーに質問しても、内容によってはさっぱり回答が来ないですからね。でも、AIに常識を教えるなんて必要ですかね。


上司X

上司X: 「ゴミ箱の中には何が入っている?」と聞かれれば、俺たちは特に何の説明がなくても「ゴミ」と答えるだろう?


ブラックピット

ブラックピット: そうですね。でもAIにとっては「ゴミを入れたという状況説明がないのにゴミが入っていることを導き出すのは困難だ」ということですかね。


上司X

上司X: 「常識的」に考えて、ゴミ箱にはゴミが入っているということを知らないからさ。


ブラックピット

ブラックピット: AIに向かって「そんなの当たり前だろ、JK」とかは通らないってわけですね。


上司X

上司X: JKって……あまりに古すぎるネットスラングだろ、JK。まあ、俺たちが当たり前の知識として持っているさまざまな事柄をAIに教えていくのがこのプロジェクトの真意なんだろうな、きっと。


ブラックピット

ブラックピット: AIが「常識的な知識」まで身につけたら、スカイネットが世界を支配して惨憺(さんたん)たる世界が待っているとかにならないですかね。


上司X

上司X: ならないだろ、JK。DARPAは自分たちのメリットだけではなく、AIの将来的な発展を考えているのかな。もしかしなくても米軍の何かにAIが使われるだろうが、今の時点ではAIの性能を引き上げるきっかけになることに期待しておこうじゃないか。


川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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