元号改正に伴うシステム対応は帳票周りだけだと考えていたら、それは注意が必要だ。今回は、改元に伴うシステム対応を3つのフェーズに分け、それぞれの注意点と落とし穴となるポイントについて説明する。
前編「リスク山盛りで情シスは大丈夫か “改元システム対応"の近道とは?」では、主にスケジュール計画の考え方と注意すべきポイントについて整理した。後編となる本稿は、新元号対応を進めるうえで、落とし穴にはまらないよう、前編で説明した計画表(図1)を基に「影響範囲調査フェーズ」「システム改修フェーズ」「テストフェーズ」の3つフェーズに分け、それぞれの工程で注意したい点や、確認を怠るとリスクになり得る箇所について解説したい。
上記のスケジュール表を基に作成したのが、以下のチェック表だ。本稿は、以下のチェック表に沿って各フェーズでの注意点について説明したい。
優先順 | チェックポイント | チェック | |
---|---|---|---|
調査フェーズ | 1 | 全帳票の和暦使用箇所の洗い出し | |
2 | 和暦の固定文字列の洗い出し | ||
3 | 外部連携するシステムは、自社システムだけでなく連携先の対応も要確認 | ||
改修フェーズ | 4 | データベースへの項目追加の必要性を判断 | |
5 | 合字、文字コードの注意点 | ||
6 | 新元号でOCRが正しく認識するかどうかも確認 | ||
テストフェーズ | 7 | テスト/レビューの担当者、責任者の予定確保 | |
8 | 新元号発表後の元号適用テスト | ||
9 | 外部連携テスト | ||
元号改正で、影響が大きいのが帳票関連だ。元号改正に伴う帳票への影響範囲を漏れなく把握し、システム的な改修が必要なところがあれば対応する必要がある。外部ベンダーが開発したパッケージやSaaSを利用した帳票作成ツールの場合、ベンダー側がアップデートなどで対応するケースが多い。パッケージを自社でカスタマイズしたり、スクラッチで開発した独自システムを利用したりする企業の場合は、自力で何らかの対策を行う必要がある。
その場合は、事前準備として、現在扱う帳票を整理した上で和暦の使用箇所を抽出し、リストアップしておくとよいだろう。ちなみに、帳票設計・作成ツール「FUJITSU Software Interstage List Creator」の利用者に向けて、新元号対策ソリューション「元号診断サービス」と「元号修正サービス」を提供する富士通では「600帳票を調査して元号の使用箇所を洗い出す」場合、約2人月以上の工数が必要と試算する。600帳票といえば多いように聞こえるが、グループ企業や取引先が多い企業では、十分にあり得る数だ。
また、帳票管理ツール提供ベンダーの中には、新元号対応をオプションとして提供するものもある。前述の富士通「元号診断サービス」「元号修正サービス」の場合、影響範囲の特定に掛かる工数を約75%削減できるという(600帳票の場合、約2週間で対応可能)。
最近のアプリケーションやシステムならば元号をハードコーディングするものはそう多くないだろう。だが、昭和から平成への改元時に応急的に対応したシステムの中には、いまだに元号を固定文字列として持つシステムもある。その可能性があるシステムは、まず、ソースコードを検索して「平成」または「H」などの文字を抽出し、修正対象とする。
また、いまだに昭和で年数をカウントするシステムが存在する可能性もあるという。この場合、2025年には「昭和100年」が発生する。この時、システム内部が3桁に対応していない場合は「昭和0年」と処理され、誤動作の原因となる危険がある。年数の桁数を2桁から3桁にするという手もあるが、この機会に元号もしくは西暦ベースに改修する方が効率的だろう。
特にトラブルが発生しそうなのが、外部連携するシステムだ。特に、取引先の中に物流や小売業を含む場合は、業界に特化したEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)や、貨物の追跡情報や送り状、集計管理に用いられ、生産者や流通業者を結ぶVAN(Value Added Network:付加価値通信網)を利用する場合もある。その場合は、自社側の対応だけでなく、連携先も含めて対応を確認する必要がある。受発注処理や決済にも影響がおよぶ可能性がある部分だけに、慎重に対応したい。
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