生物の習性や特徴が人間の生み出す技術に採用されることは少なくない。クモの糸に着想を得た超強力な人工糸、ハチドリの羽ばたきを応用したドローン、ヤモリの指先を模倣したテープ。今度はカエルの鳴き声がヒントになった。
応用されたのはニホンアマガエルの合唱だ。筑波大学と大阪大学の合同研究チームが英国王立協会の科学誌『Royal Society OpenScience』で2019年1月9日に発表した。カエルの合唱といえば、ケロケロケロケロと鳴くだけの気がする。だが研究チームは、IoTの進化に役立つ法則性を見つけ出した。それは一体?
ニホンアマガエルは、複数のオスが夕暮れから深夜にかけて合唱を続けるという特徴がある。最大の目的はメスへのアピールだが、どうやって長時間の合唱を維持できるのか。研究チームはそこに着目した。
そもそもオスは単独で周期的に鳴き、コミュニケーションを図る。複数匹が集うことで合唱になるのだ。研究では3匹のオスを別のカゴにいれて50センチ間隔で並べて合唱を観察した。すると鳴き方に一定の規則があることが分かった。
短時間で区切ってみると個々のカエルの鳴くタイミングはずれている。しかし長時間で観察すると、鳴く時間帯がそろい、休むときには一斉に鳴き止むのだ。
研究チームは、カエルは鳴くほどにエネルギーを消費し、どんどん疲労すると推測した。つまり、カエルは自分の疲労度を測りつつ周囲のカエルの状況も把握し、エネルギー消費を抑えるために休むタイミングを見つけているのだ。
そこで発声状態と休止状態を再現する数理モデルを作成し、シミュレーションを実行すると、実際のニホンアマガエルの合唱が再現できた。研究チームは、これをIoT機器の無線センサーネットワークの制御に応用した。
無線センサーネットワークは、複数台のセンサー搭載無線IoT機器によるネットワークであり、近接する端末同士が通信して、バケツリレーのようにデータを送り合って情報を収集するシステムだ。農場のような広範囲の場所の監視などに使われる。
近くのIoTデバイスが同時にパケットを送り合ってしまうことで「パケット衝突」という現象が発生し、データの受け渡しに失敗することがある。また常時稼働することは電池駆動のデバイスにとって大きな課題だ。
カエルの合唱を応用すれば、長期的にはネットワークの通信状態と無通信状態を切り替えることで省電力を実現し、短期的には隣り合うIoTデバイス同士で相互の確認を行ってパケット衝突を回避する仕組みが実現できる。
研究チームは100台のデバイスを用意し、カエルの合唱の数理モデルによってネットワークを制御することに成功した。カエルの研究が先だったのか、はたまたIoTデバイスの研究が先だったのか。5G通信時代が到来してさらにネットワークは広がるだろう。カエルの合唱が一般的に採用される可能性は高い。
上司X: カエルの合唱から無線センサーネットワークにおけるIoTデバイスの最適な制御方法が生み出されたという話だよ。
ブラックピット: ケロケロ鳴いているだけだと思っていましたけど、法則があったんですね。
上司X: ところでキミ、カエルの合唱って聞いたことある? 都会っ子じゃないのかい?
ブラックピット: そういえば、ないですね。田園都市線住みですが近所に田園なんてありません。
上司X: ちなみに俺もない。
ブラックピット: 研究チームの方々はカエルに造詣が深かったんですかね。
上司X: どうだろうな。少なくともIoTネットワークには詳しそうだけど。
ブラックピット: ニホンアマガエル以外にも合唱するカエルはいると思うんですよ。ニホンアカガエルとかアズマヒキガエルとかタゴガエルとかハロウェルアマガエルとかモリアオガエルとか。シュレーゲルアオガエルなんてのもかわいいですね。
上司X: 合唱を聴いたことがないのに、なぜそんなにカエルの種類に詳しいのか。カエルに限らず昆虫や鳥類も鳴き声も何かに使えるかもしれないから、キミもカエルの種類を追究するだけじゃなくてもっと広い視野を持ってみれば?
年齢:36歳(独身)
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