2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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総務省「平成29年通信利用動向調査」によれば、従業員数300人以上の企業におけるテレワーク導入率は23.0%と、その数はゆるやかに増えつつある。同時に、労働生産性の向上やワークスタイルもRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのICTツールの普及により変革が進んでいる。人々の働き方(場所、時間、雇用形態)が大きく変わりつつある今、これからのオフィスにはどのような機能が求められていくのか。また、RPA活用の次なるステージとは。
本記事では、企業の働き方を支える事業を展開する2社にインタビュー。「EmpoweredOffice」を掲げ、企業の「共創」の仕組みづくりをサポートしているNECネッツエスアイ株式会社と、RPAやITエンジニアの人材派遣などのサービスを提供しているキューアンドエーワークス株式会社にワークスタイルの未来を聞いた。
牛島祐之氏
NECネッツエスアイ株式会社代表取締役執行役員社長。青山学院大学経営学部卒業後、日本電気システム建設(現NECネッツエスアイ)入社。主に営業畑を歩む。2013年同社執行役員兼営業統括本部東日本支社長。2014年にグループ会社であるキューアンドエー代表取締役執行役員副社長を経て、2015年キューアンドエー代表取締役執行役員社長に就任。2017年6月にNECネッツエスアイ代表取締役執行役員社長に就任し、現在に至る。
池邉竜一氏
キューアンドエーワークス株式会社代表取締役社長。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年に人材派遣業の株式会社アークパワー設立。2001年、同社代表取締役社長に就任。2013年、キューアンドエーグループ傘下(NECネッツエスアイ連結対象会社)となり、2015年、キューアンドエーワークスに社名変更。2016年7月、一般社団法人日本RPA協会の理事に就任。RPAに関する幅広い経験に基づき、『デジタルレイバーが部下になる日』(日経BP社)を執筆。
―現在、ビジネスシーンではテレワークやサテライトオフィスなどの普及が進みつつあります。働き方改革や生産性向上においてどのような取り組みを行なっているのか、事業内容と合わせてお聞かせください。
牛島祐之氏(NECネッツエスアイ株式会社 代表取締役執行役員社長): 当社は、通信事業者や社会インフラ事業者、一般企業などに対して、システムやネットワークの構築、運用・保守などのサービスを提供しています。企業の通信環境の構築と関連して、2007年からオフィス改革を通して働き方改革を行う「EmpoweredOffice」事業をスタートしました。2010年の飯田橋への本社移転を機にEmpoweredOfficeの全社導入をスタートし、加えて2017年にはテレワーク環境の整備を行うなど、場所にとらわれない働き方を全社員が実践しています。
池邉竜一氏(キューアンドエーワークス株式会社 代表取締役社長): 当社では、RPAの導入支援事業と、人材派遣・技術者派遣やBPO・アウトソーシングなどのヒューマンリソース事業、さらにRPAやAIを組み合わせたハイブリット派遣などを提供しています。NECネッツエスアイ社は働く人や場所を軸とした働き方改革に取り組まれていますが、対して当社は労働力を軸とした働き方改革を支援しています。
牛島:働き方改革の推進、育児・介護の問題、人手不足など社会環境の変化に伴い、人々のワークスタイルは多様化しています。当社もその変化に対応し、場所にしばられずに働けるような環境構築や、AI(人工知能)、RPA、顔認証などの最新技術を駆使したワークスタイルの構築に取り組んでいます。
―NECネッツエスアイでは、キューアンドエーワークスの支援により社内へRPAを導入していますね。導入の目的や活用方法をお聞かせください。
牛島: 人材不足が深刻化するなかで、一人ひとりの生産性をどう上げていくかが、当社にとっても大きな課題でした。そこで業務効率化のためのツールとして、キューアンドエーワークス社のRPAソリューション「RoboRoid(ロボロイド)」を導入しています。現在、定型業務を中心に全社で約50体のロボット(デジタルレイバー)が稼働し、大きな成果を上げています。
初めに導入したのは、ごく簡単な業務です。営業の交通費精算において、交通系ICカードの履歴を、業務利用と個人利用のデータに自動的に振り分けて経費精算するというデジタルレイバーを稼働させました。当社には1,000人くらいの営業担当がいるので、この仕組みだけでも大幅な業務効率化を実現できました。
池邉: 当社はその導入支援をさせていただいていますが、おっしゃるようにまずは経費精算のような事務系業務の効率化から着手して、現段階ではモニタリングといった機能を使って徐々に非定型業務にもRPAの適用範囲を広げていくという取り組みをされています。NECネッツエスアイ社は、デジタルレイバーを一つの労働力としてとらえて生産性向上に取り組むRPA先進企業といえますね。
―取り組まれている非定型業務のRPA活用とは、どのようなものがあるのでしょうか。
池邉: 一歩進んだRPA活用の例としてはプロジェクトにおけるロスコン(loss Contractの略称/赤字を意味する)の発生抑止などです。
プロジェクトで赤字が発生しそうになったときでも、経験豊富なプロジェクトマネージャーがいると、報告書の文言や数値の変化から問題の予兆を察知し、うまくコントロールしてロスコンを防いでくれるものです。そのベテランの経験・ノウハウは業務に長年携わることによって身に付けられたものですが、若手社員に一から教えるには時間がかかるし、そもそも人材も不足しているという状況があります。そこで、過去のさまざまなデータをRPAのクローリング機能を使って収集・分析し、ベテランと同じ回答を導き出せるようにチューニングして、実際のプロジェクトに生かそうと検討を始めました。
―ベテラン社員のノウハウをRPAで再現するというのは、確かに先進的な取り組みですね。RPAの業務効率化とオフィスの改革とを掛け合わせれば、かなり未来的な働き方が実現しそうです。
牛島: そうですね。RPAとオフィス改革の掛け合わせの効果は自社でも実感できたため、顧客企業向けにキューアンドエーワークス社のRPAサービスであるRoboRoidの導入・活用のサポートをEmpoweredOfficeのサービスの1つとしてご提供していくことにしました。RPAを導入する際には、その準備として、対象となる業務プロセスについて見直す必要がありますが、実はその見直しの過程そのものが業務効率化に役立つということもわかりました。そのため、場合によっては、RPAどうこうではなく、そもそも業務自体を削減した方がいいと顧客企業にご提案するケースもあります。
池邉: RPAの導入を検討すること自体が、業務効率化の一つのきっかけになるということですね。省力化とか働き方改革という言葉に惑わされず、人間がやるからこそ効果がある仕事を、しっかりと見極めることが大切です。
牛島: 人間の仕事の一部をデジタルレイバーに任せることができたら、人間はもう一つ上のレベルの仕事にチャレンジできますし、それが企業を強くすることにつながります。そもそも働き方改革は何のためにやるのかというと、企業競争力を高めるためだと思います。会社が強くならなければ、従業員の幸せもつくれませんから。
池邉: そういう意味でも、やはりRPAの活用は働き方改革の目的に合致していますね。ただ、RPAを導入すること自体を目的化してしまうと、ムダな業務をRPA化してしまうリスクが生じます。事業の目的から逆算して、目的に合ったRPAの活用方法を探っていく必要があります。
また、業務の可視化も重要です。製造系企業の生産ラインでは、設計図をもとに機械系のロボットが製品を生みだしています。一方、ホワイトカラーが担う情報ラインでは、ほとんど設計図はなく、属人的に情報を加工しています。ここに着眼したのが、当社の「RoboRoid-HIT.s(ロボロイドヒッツ)」であり、情報ラインでの生産を可視化し、RPA導入のベースを作るお手伝いもしています。
―人々の働き方が変わっていくなかで、今後、オフィスの役割はどうなっていくでしょうか。
牛島: 在宅勤務やテレワークが発達し、場所を選ばずに働けるようになるなかで、オフィスは従業員が机を並べて働くだけの場所ではなくなっていきます。ではどういう場所になるのかというと、普段はバラバラに働いている従業員が定期的に集まって知恵を出し合ったり、外部のパートナーとコラボレーションをしたりと、多様な機能が求められていくと考えています。
池邉: 私もそう思います。テレワークが発達してもオフィスは必要ですね。Amazonで本を買うのは便利だけれども、書店で本棚を眺めながら気になった本を手に取るのもまた楽しい。それと同じように、2つを使い分ければいいんです。テレワークで場所や時間にしばられない働き方をすることは便利で効率的です。一方で、オフィスで人と一緒に働くことは、コミュニケーションがさらに生まれ、また刺激を受けたり、新たなアイデアが生まれたりすることにつながります。オフィスの「偶発性」を後押しする環境づくりを、EmpoweredOfficeやRPAによってサポートできればと考えています。
―「働き方改革」の実現に悩まれている企業も多いと思いますが、実現のために必要なことは何であるとお考えですか?
牛島: その答えは簡単ではありません。一つ問題が解決したら、また一つ新しい問題が出てきますから。ただひとつ言えるのは、大切なのは“止まらずに変わり続けること”だと思います。どんどん変わっていく、変わらなければおかしいという危機意識を持つことが重要になっていると考えます。
池邉: そうですね。変わり続ける、学び続けるのと同時に、逆に“思い切って止める”ことも大切だと思います。「改革」というくらいですから、従来続けてきたことを変えるのはやはり簡単なことではありません。新しい技術を信じて、今までの悪い慣習や業務のやり方と決別するという強い決断が重要だと思います。
―改革によって作りだせる、新たな働き方の未来を見せていただいた対談でした。本日はありがとうございました。
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