HRTech企業「あしたのチーム」のCTOが、クラウドサービス運営の過程で経験した変化と機敏なチーム作りの過程で学んだ経験を紹介する。
本コラムは2018年5月22日に掲載した「技術的負債を解消して変化に強いチームを作る」を再編集したものです。
はじめまして。あしたのチーム CTO(最高技術責任者)の林田幸一と申します。あしたのチームは中小ベンチャー企業向けに人事評価制度を提供する企業です。経営にも大きくかかわる「人事評価制度」を、構築だけでなく運用も丸ごと、ワンストップでサービス提供しています。
このサービスの中でポイントとなるのが、人事評価制度を「クラウドで運用する」というところ。そのクラウドを作っているのが、私が統括しているクラウド事業部です。
筆者は2017年より、あしたのチームCTOとして「コンピテンシークラウド」を中心としたクラウドサービスの事業の推進、構築を行うべく、クラウド事業部を立ち上げました。現在は、エンジニア、デザイナー、マーケターを含む「クリエイティブ事業本部」として組織を率いて、急速に進化しているあしたのチームの全体的なサービスのIT化を進めているところです。
筆者自身は、大学卒業後にシステムエンジニアおよびITコンサルタントとして経験を積んだのち、医療系ベンチャー企業の創業メンバー(取締役CTO)として、患者向けソーシャルネットワークや、製薬・調剤薬局向けグループウェアなどを企画、開発していました。資金集めから事業開発、システム構築までを担う経験をしています。この後、プログラミング言語「Ruby」を使ったWeb開発の専門会社を立ち上げ、同社を6期目に上場企業へ売却、その後、あしたのチームにCTOとして参画しました。
この経験を通じて感じているのは、この数年で企業のITシステムそのものが大きく変わってきたことです。従来は実験的に扱われてきたような開発手法やプロジェクト管理手法が、事業推進のドライバーとして注目され、積極的に取り入れて成果に結び付けようと考える企業が増えています。
例えば、ここ5年でWebをベースとしたシステム開発が増え、その開発を支えるための開発環境も変化してきました。キーワードを挙げるだけでも、例えば「JavaScript」のような動的プログラミング言語や「Ruby on Rails」のようなWebアプリケーション開発フレームワーク、設計開発ではドメイン駆動やアジャイル開発の手法、あるいはテストファーストなどの手法が、大手企業の中にも浸透しています。
これに伴い、組織作りやプロジェクトマネジメントなど、マネジメント方法にも変化が見られます。私たちあしたのチームも、たった2人のチームから現在の規模に拡大する過程で、こうした変化を目の当たりにし、変化に強いチームを作り上げてきました。
多くの企業でIT人材の不足がささやかれる中、よい技術を使う、よいエンジニアを集め、よいチームを維持するには、よい人材をよい環境に置くことが重要です。本連載は、私たち、あしたのチームがクラウドサービス運営の過程で経験した変化と、機敏なチーム作りの過程で学んだ経験を紹介して行く予定です。
私たちあしたのチームでは、7年前から運用する人事評価クラウドサービス「コンピテンシークラウド」の5代目となる「バージョン5」を2017年3月にリリースしました。
バージョン1はオンプレミスのアプリケーションとして、バージョン2〜4はPHPを使ったWebアプリケーションとして構築していました。しかし、バージョン5は、プログラミング言語と開発フレームワークそのものを丸ごと変更し、「Ruby on Rails」で構築しています。
過去のバージョンアップでも大変な労力をかけてスクラッチアンドビルドに近い作業を繰り返したことがありますが、直近のバージョン4から5への移行では、過去の「技術的な負債」からの脱却、運用および開発効率の改善を目指しています。
これに伴い、組織や開発手法も全てWeb/Ruby文化を踏襲し、開発組織から作り直すレベルでチームの文化も変えていきました。
次回からは劇的に変化を遂げた組織の、技術や経営、マネジメント手法の経験則を全6回に分けてお話ししたいと思います。次回以降の予定は以下の通りです。
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