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ファイルサーバの利用状況(2019年)/後編

ファイルサーバと同等の機能を備えるクラウドストレージ。最近は、企業での利用も目立ってきたが、クラウドストレージは企業にとって第二のファイルサーバとなり得るのだろうか。読者の意見を聞いた。

» 2019年03月14日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2019年1月30日〜2月21日にわたり「ファイルサーバの利用状況」に関する調査を実施した。全回答者数301人のうち、情報システム部門が42.5%、製造・生産部門が14.6%、経営者・経営企画部門が7.6%、営業・販売部門が5.3%といった内訳であった。

 今回はファイルサーバに加えてクラウドストレージにも焦点を当て、ファイルサーバとクラウドストレージの併用率や利用するクラウドストレージサービスなどを調査した。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

コラボレーションの時代、ファイルサーバとクラウドストレージを併用する割合は?

 ほとんどの企業で利用されているファイルサーバ。前編でも触れたが、その利用率は全体で97.0%と年々増加傾向にある。ただ、「コラボレーション」という言葉が盛んに使われる今や、対社内だけではなく対社外でもデータを共有する場面が増えてきた。現在は、ファイルサーバだけではなくクラウドストレージも併用する企業も多いだろう。データの保存と共有という観点ではほぼ同じ役目を果たす。

 そこで、ファイルサーバに加えてクラウドストレージも利用する割合はどのくらいだろうか。それを知るために、ファイルサーバ利用者にクラウドストレージサービスも利用しているかどうかを尋ねた。その結果、「利用していない」55.5%、「法人契約のアカウントで利用」33.2%、「個人のアカウントで利用」11.3%と続く結果となった(図1)。

図1 ファイルサーバに加えてクラウドストレージも利用する割合 図1 ファイルサーバに加えてクラウドストレージも利用する割合

 クラウドストレージサービスを提供するベンダーも増え、「Office 365」や「G Suite」など機能の一部としてクラウドストレージを提供するオフィススイートもある。その中で、まだ半数が「ファイルサーバは利用しているが、クラウドストレージサービスは利用していない」という結果となった。なお、「個人のアカウントで利用」とした層は、「1〜10人」「11〜50人」規模の企業が中心だった。

 クラウドストレージサービスを「利用している」と回答した層に、利用するサービスを聞いたところ、利用率の高い順に「Microsoft OneDrive」50.0%、「Google ドライブ」33.8%、「Box」20.0%、「Dropbox」19.2%という結果であった(図2)。

図2 利用するクラウドストレージサービス 図2 利用するクラウドストレージサービス

なぜ、クラウドストレージはファイルサーバの代替にはならないのか

 クラウドストレージサービスはファイルサーバと同等の機能を備え、社外からでも保管データにアクセスできるという利点もある。テレワークに取り組む企業や外回りの多い営業部門などにとっては、ファイルサーバよりも利便性が高く感じる部分もあるだろう。“併用”ではなくファイルサーバの“代替”としてクラウドサービスを利用できないものだろうか。

 そこで、クラウドストレージサービスをファイルサーバの代替として活用したいかどうかを聞いたところ、「活用したいと思わない」54.8%、「活用したいと思う」45.2%と拮抗する結果となった(図3)。

図3 ファイルサーバの代替としてクラウドストレージサービスを活用したいか 図3 ファイルサーバの代替としてクラウドストレージサービスを活用したいか

 次に、「活用したいと思う」「活用したいと思わない」としたそれぞれの意見を見てみよう。

 まず、「活用したいと思わない」と回答した層に理由を尋ねたところ、「社外にデータを置くと情報漏えいにつながる」「開発に関する情報を取り扱っており、機密性や運用性を重視するため」「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得しているため、当社では難しい」といった情報の秘匿性を懸念する声や、そもそも勤務先のセキュリティポリシーでは運用できないといった意見が挙げられた。

 次に多く寄せられたのが「十分な回線の帯域が確保されていないため、データによっては転送速度の低下が予想される」「ファイル容量が大きいものはネットワーク負荷が掛かりアクセス速度が遅くなる」といった速度に関する意見だ。確かに、大容量のデータを社内外で取り扱える半面、ネットワーク環境によっては思うような利便性が得られないこともあり得る。

 その他「利用料を見積もると、想像以上に高額だったため」「社内運用のコストと比べると、高くつくため」などコストパフォーマンスに難色を示す声もあった。また、わずかではあったが、「社内利用を前提としたファイルサーバと、社外からのアクセスや顧客と情報共有を行うファイルサーバは区別すべきで、その区別が曖昧(あいまい)な中では利用すべきでない」といった、それぞれの機能を組織が理解していない状態では運用すべきではないという意見もあった。

 こうした点が「クラウドストレージはファイルサーバの代替にならない」と考える主な理由となっているようだ。

これからはファイルサーバだけでは仕事が進まない可能性も?

 一方、「ファイルサーバの代替としてクラウドストレージサービスを活用したいと思う」とした45.2%の層の理由を紹介しよう。

 最も多く寄せられたのが、「出先でもデータの閲覧が可能なため」「外部から接続できるため」といった社外からでもデータにアクセスできるという意見だ。それに関連して「会社で働き方改革がスタートしたが、今後オフィスや自宅、外出先などで自由に働ける環境を整備するために必要となるから」「働き方改革を実行する一つの手段」といった働き方改革を進める上でファイルサーバでだけでは業務の遂行が難しくなるのではないかといった回答も多かった。

 別の視点では、「ハードウェアのリプレースや更新を考えなくても良い」「物理サーバが必要ない」「社内サーバの管理や運用の手間が省ける」といった運用管理の負荷が軽減されることを挙げる声もあった。

 面白い点として、「活用したいと思う」「活用したいと思わない」の双方でセキュリティに関する意見が挙がった。回答を見ると相反する意見であった。「活用したいと思う」とした層は、「活用したいと思うが自社のセキュリティポリシーが足かせとなっている」といった意見だ。一方、「活用したいと思わない」とした層は「セキュリティ面で不安がある」といった意見だ。「セキュリティ」でも、見方が違えば厄介なものにもなり、必要不可欠なものにもなる。

 本調査では、前編/後編を通してファイルサーバの利用状況と現場のデータ共有にまつわる課題を探ったが、ファイルサーバにしてもクラウドストレージにしても共通していえることは、どちらもデータ整理や運用が適切な形でできていなければ、どんなに利便性が高くても結局は同じだということだ。このようなデータ共有手段を考える際は、本アンケートでも紹介したような問題も併せて考えたい。

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