働き方改革関連法がスタート。中小企業には多少の猶予はあるとはいえ、労働時間の管理はより厳密さが求められます。タイムカードの集計だけで本当に乗り切れますか?
2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」。さまざまなルールがありますが、中でも多くの企業が関心を寄せるのが、時間外労働の上限規制や就労時間の適正な管理を義務付けた点でしょう。特に、いままで紙のタイムカードで管理してきた企業にとっては、どうルールに対応していくかが課題となります。本稿では、紙のタイムカードから勤怠管理システムに移行する際の現実的な課題や費用の考え方などを解説していきます。
働き方改革では時間管理の適正化が求められています。つまり、勤怠の管理も正確かつ詳細な集計が必要です。またそのタイミングも月末を待たずにリアルタイムに近い管理が必要になります。入力ミスや不正の防止に努める必要もあります。
従業員がPCで仕事をする人だけならば、Webアプリなどで勤怠を入出力してもよいでしょう。しかし、そういう事業所が全てではありません。PCやスマートフォンでの操作が前提のツールが導入しにくい現場も多いはずです。
そうした現場では、紙のタイムカードと機械式タイムレコーダーは勤怠管理ツールの主流です。ある市場調査によれば、タイムレコーダー出荷台数は年間約8万台といいますから、紙のタイムカードが重宝されていることがお分かりいただけるでしょう。
ここで、皆さんは「まだ紙のタイムカードを使っているのは、自分のところだけではないんだな」と、ちょっとホッとするかもしれません。
ただし、ホッとしていられない状況が近づきつつあるのが現実です。市場規模が年間8万台といいましたが、これは徐々にシステム化が進んだ上での数字です。業務システムの導入は一般的に大きな企業から進むものですが、勤怠管理システムについてはすでに中小企業にまで広がっていると見て良いでしょう。
例えばミック経済研究所の調査によれば、クラウド型の勤怠管理システムだけを見ても、100人未満の企業向けの市場規模は、2017年度は27.4億円、2018年度は34.2億円、2019年度は43.7億円と成長を続けている状況です(注)。
(注)ミック経済研究所「経営改革を追い風に躍進するERPフロントソリューション市場の実態と展望 2019年度版」
もちろん紙のタイムカードにもメリットはあるでしょう。年配の人が多い職場でも抵抗なく使えますし、修正も手書きに捺印で柔軟な運用が可能です。
ただしこうしたメリットはデメリットと紙一重の要素を持ちます。例えば、手書きの修正が可能ということは、不正打刻があっても見分けることは難しくなります。会社が把握しないところでサービス残業を強要する文化が生まれていたとしても、把握して指導できないかもしれません。こうした状況下で万が一、従業員に健康上の問題などが生じてしまった場合、その責任は会社が追うことになります。
勤怠管理システムの導入が進むのは、企業側にも従業員にも利益があるためです。さらに、安く使いやすい勤怠管理システムやサービスが増えていることもこうした動きを後押ししています。
「そうはいってもコストをかけられないし、複雑なITツールを従業員全員に使わせるのは難しい」というケースもあるでしょう。
こうした企業が、働き方改革や時間管理の正確さを求めるときの最適解はどういったシステムやサービスを選べば良いでしょうか。連載では数回に分けて、勤怠管理の見直し方を説明していきます。
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