マイクロソフトが企業活動全体のデータレイク作りに本気を出す。打ち出したのは「現場」データの取り込みだ。意欲的な新ライセンスで、現場と本部の断絶、エッジとコアの分断を解消する。
「Microsoft Office 365」(以降、Office 365)をはじめとしたマイクロソフトのサブスクリプション型サービスは、従来のオフィススイートの使い勝手を維持しながら、執務の場所を制限せず、どこからでもアクセスできることから、働き方改革の推進と併せて普及してきた。だが、ライセンス体系や、ライセンスごとに利用可能なアプリケーションの構成は、デスクワーク中心の利用者を想定したものだった。このため、「Microsoft Teams」(以降、Teams)を使ってコミュニケーションの円滑化と一元管理を実現しようとしても上位ライセンスが必要だった。こうしたことから、例えば働き方改革の助成金を使った上位ライセンス調達などのノウハウが必要だった(関連記事:「中小企業の働き方改革 助成金制度活用術」)。
設備のメンテナンスやアフターサポートなど、多数のフィールドスタッフを抱える組織にはいくつかの共通した課題がある。例えば、多数の人材を抱えるが故に、人の入れ替わりが多いため、大きな教育コストがかかるITツールは導入しにくいこと。場合によってはITリテラシーにばらつきがあること。コンプライアンスなどではいっそうの注意が必要になることなどだ。加えて、人数が多い中でも指揮系統を整え、安全に作業を進めるには現場管理者と本部や本社、関係企業の管理者らとの密なコミュニケーションも必要になる。
日本マイクロソフトは、2019年4月18日、日本の企業の「最前線」で働く従業員「ファーストラインワーカー」の働き方改革推進について、同社の取り組みを解説した。ポイントは、従来手頃なプランには含まれなかったコミュニケーションツールの利用ライセンスを配布すること。本社と現場をつなぐ道具としての使い勝手を極めた構成で展開する。
こうした施策を実施する目的はOffice 365の利用者拡大もあるが、それ以上に事業活動全体の改善基盤としての機能強化の意味合いが大きいようだ。以降でその詳細を見ていく。
日本マイクロソフトは、2020年に向けた取り組みとして「インダストリーイノベーション」「ワークスタイルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」の3つのイノベーションを推進する。今回の発表は「ワークスタイルイノベーション」に該当するもの。
日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)は1990年終盤をピークに減少に転じる。労働政策研究・研修機構によると、生産年齢人口は2025年には7230万人に、2030年には6300万人まで減少し、増加する見込みはまずないという。そしてその影響を大きく受けるとされるのが、製造工場や店舗、建設現場や顧客対応窓口といった企業の「現場の最前線」で働く従業員だ。日本マイクロソフトはそういった最前線で活躍する従業員を「ファーストラインワーカー」と定義する。
現在、既に人手不足に陥るファーストラインワーカーについて、日本マイクロソフト 手島主税氏(執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員)は「バックオフィスとつながらない孤独感があり、新たな学習を進める余裕もない。デジタル化が進まず、紙を前提としたワークフローが主流だ。こうした環境では改善する機会も少ない。業務効率化のためには新たな業務プロセスやツールなど、イノベーションが必要である」と、その「働き方」に危機感を募らせる。
そこで日本マイクロソフトは、ファーストラインワーカーが抱える問題を解決し、デジタル変革を実現する目的で、「Microsoft 365」「Microsoft Azure」((以降、Azure)、「Dynamics 365」「Surface Go」「Microsoft HoloLens」(以降、HoloLens)などを組み合わせたソリューションを本格的に展開する。
中でも「Microsoft 365」は従来のベーシックなライセンスにTeamsを加えた「Microsoft 365 F1」というライセンスが追加される。現場ユーザー向けのコミュニケーション促進に加え、本部との情報連携やガバナンス強化が狙いだ。Microsoft 365であれば「Windows 10」とOffice 365に加えてデバイス管理機能である「Enterprise Mobility + Security」が含まれるため、本社側でデバイス管理やデータガバナンスを一元的に統括できる。
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