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何からはじめる? AI画像認識、3つの活用ステップ分かったつもり? AI画像認識

AI画像認識を導入する際に、必ず踏まなければならないステップがあります。例えば、「AIは運用前の事前作業に最も工数がかかる」といわれますが、どのような作業が必要なのでしょうか。図で簡単に説明します。

» 2019年05月17日 08時00分 公開
[中尾雅俊, 矢嶋 博パナソニック ソリューションテクノロジー]

監修:中尾雅俊

パナソニック ソリューションテクノロジー AI・アナリティクス部ソリューション推進課 主事

2017年にNVIDIAとの協業を担当したことを皮切りに、AI・データ分析中心の業務を推進。初期投資や導入リスクが大きい、「人工知能の現場導入で失敗させない」活動としてセミナー講演など多数実施。受講者からは、「AIがよく理解できた」「そんなノウハウを話しても良いの」と心配されるほど。最近の趣味は実用を兼ねたDIYや果樹菜園など。

監修:矢嶋 博

パナソニック ソリューションテクノロジー 産業IoTSI部ソリューション推進課 係長

製造業向け「AI画像認識ソリューション」のSEとして、営業支援やPoC推進を担当。ソフトウェア開発からITインフラ構築まで、これまでの幅広い経験を生かし、AI画像認識システムの提案から導入、AI学習トレーニングまでを手掛けている。趣味の風景や家族写真撮影に加え、学習用画像収集をライフワークにしている。

 前回までは、製造ラインの効率化という観点から、AI画像認識が「できること」「できないこと」を明確化し、AI(人工知能)画像認識とどのように向き合っていくべきかについて考察しました。では、実際に現場にAI画像認識を適用する場合、どういったアプローチを取るのが適切といえるのでしょうか。

3つのステップで構成する「導入・活用のアプローチ」

 これまでの述べてきたように、AI画像認識による業務効率化を図るうえでは、留意すべきポイントが幾つかあります。1つ目のポイントは、AIは決して万能ではなく、認識させたいモノの種類によっては、AIよりも他の技術を使ったほうが効率的であるケースがあることです。

 また、AI画像認識を実務で活用するうえでは、その頭脳を育てていかなければなりません。具体的には、AIに認識させたいモノに応じて、適切な画像を、適量用意して学ばせる必要があり、そうした画像の選択には、現場の実務に携わっている方の知見を活用することが大切です。加えて、AIの育成時に活用した画像と同様の画像が、実際の現場で撮影できるのかという問題もクリアにしておかなければなりません。仮に、AIに学習させた画像と同様の画像が、AI画像認識の実活用時に全く撮影できないのであれば、せっかく育成した頭脳が有効に機能することはまずないといえるでしょう。

 さらに、AI画像認識そのものが業務を効率化するわけではありません。大切なのは、AI画像認識をどう業務の効率化に生かすかで、その意味で、システム化のプランをしっかりと練り上げることが重要です。

 以上のポイントを踏まえ、パナソニック ソリューションテクノロジーでは、AI画像認識活用のアプローチとして、次のような3つのステップを踏むことを推奨しています。

 今回は、第1ステップ「画像認識の可否評価」について解説します。

第1ステップ 画像認識の可否評価

 画像認識の可否評価とは、そもそもAI画像認識ができるかどうかを評価するステップです。

 このステップでの最初の作業は、ディープラーニングに認識させる対象物を教えるための画像集めです。最初の段階では、対象物の最も典型的な条件の画像を数十枚程度準備します。次に、この画像に映る対象物を指定するための作業(ラベル付け)を行い、このラベル付けした画像を用いて、画像認識するための頭脳を生成します。そして、その教えた画像自身が認識できるかを評価します。

 AI画像認識の頭脳を業務で活用できるレベルに育てるには、最終的には、適切な教師データを大量に用意して学習させることが必要ですが、まずは、一番よい条件で撮影した対象物「そのもの」が認識できなければ、それ以上の複雑な条件で撮影された対象物は認識できません(図1)。

図1 学習させた画像と認識させたい画像

 なお、教師データをどう収集するかは、AIに何を認識させたいかによって異なりますが、例えば、製造現場での「モノの分類」にAI画像認識を使うと想定した場合、最終的には、現場で認識させたい同等の条件で対象物が含まれている画像を適切なタイミングで撮影して、静止画に対してラベル付けを行う必要があります。この際、対象物を、さまざまな条件(方向や明るさなど)で撮影した静止画が必要となりますので、動画で撮影しておいて、後から学習に適切な画像(動画のフレーム)のみを抜き出して利用する方法がよく用いられます(図2)。

 いずれにしても、実際に画像認識を行う場面を想定して、さまざまなパターンの画像を用意しなければなりません。

 また、AI画像認識のシステムを導入する際に、まずは認識させたい対象物の画像が、本当に撮影可能かどうかを確認しなければなりません。

図2 画像認識の主な流れ

 次回は、AI画像認識を活用するに当たって重要な3つのステップのうち、「第2ステップ システム化の条件評価」について解説します。

企業紹介:パナソニック ソリューションテクノロジー

パナソニック ソリューションテクノロジーは本格的なICT時代の幕開け前から30年にわたり、IT基盤の設計・構築、ソフトウェア、SIサービスでお客さまの業務課題解決に努めてきました。さらにICTシステムの設計・構築を起点に、Al・データ分析、IoT、働き方改革、そしてBPOまで分野を広げています。製造業や建設・物流・金融・エネルギー・自治体など、さまざまな業界・業務の知見を基としたソリューションで、お客さまの仕事の仕方・プロセスを加速度的に変え、成長につなげていきます。

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