複数のクラウドを適材適所で使い分けるマルチクラウドの一般化を背景に、ハイブリッドクラウドを構築する企業も増えている。構築の際に、最も重視されることとは?
IDC Japanは、国内ハイブリッドクラウドインフラストラクチャ利用動向調査結果を発表した。本調査は、2019年2月に国内企業/組織におけるITインフラ導入の意思決定やITインフラ導入のプロセスに関与する349人を対象に行ったアンケート結果を基にしている。
本調査から、企業がハイブリッドクラウド構築で重視するポイントや、今後のパブリッククラウドの利用意向が見えてきた。
同社は、ハイブリッドクラウドを「複数のクラウドサービスやプライベートクラウドなどを連携し、統合的に運用管理すること」と定義する。アンケートで、ハイブリッドクラウドの構築で重視する項目を聞いたところ、「ITインフラコストの最適化」「セキュリティの強化」「運用管理コストの最適化」「統合的な運用管理の実現」が上位となった。次いで、「ビジネスニーズへの迅速な対応」が挙がり、特に従業員規模1000人以上の大企業や同500〜999人の中堅企業で高い回答率となった。
今後のITインフラの利用意向としては、「パブリッククラウドサービス」「プライベートクラウドサービス」「オンプレミスプライベートクラウド」が上位を占め、パブリッククラウドサービスの利用意向は高い。
ワークロード別にパブリッククラウドの利用意向を見ると「ERM」(Enterprise Resource Management)、「データベース」「電子メール/グループウェア」「ファイルサーバ」ではパブリッククラウドサービスに移行できると回答した割合が比較的高かった。一方で、これらをパブリッククラウドサービスに移行するとした回答はそれほど高くなく、必ずしも円滑に移行が進むわけではないとIDC Japanはみている。
さらに、パブリッククラウドサービスを利用中の回答者のうち、8割弱が今後パブリッククラウドサービスからオンプレミスITインフラに移行する予定があると回答した。要因としては、セキュリティの向上、容易な導入、PaaS(Platform as a Service)機能の統合提供、運用管理負担の軽減などが挙げられ、オンプレミスITインフラにおいてもパブリッククラウドサービスに近い使い勝手や機能が求められる結果となった。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ シニアマーケットアナリストである宝出幸久氏は「複数のクラウドを適材適所で使い分けるマルチクラウドの一般化を背景に、ハイブリッドクラウドを構築済みの回答者が増加しており、今後1年以内に構築する計画を持つ回答者も大きく増加した。一方で、オンプレミスITインフラに対する再評価も進んでおり、その刷新が求められていることも明らかとなった」と考察する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。