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育成期間8カ月、研修回数35回、ロボットクリエイター育成人数600人__グッドライフ社に聞く育成の秘訣

» 2019年07月03日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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現在、不動産事業とIT事業を両軸に急成長を続けている株式会社グッドライフ。2012年に設立された同社では、「不動産」と「テクノロジー」を融合した新しいスタンダードを確立し、人々に喜びを届ける企業になることを目標に掲げている。

そうしたなか2018年11月には新たにRPA事業に着手。事業を率いるグッドライフ ロボティクス事業部部長の竹内 瑞樹氏は、前職の住宅設備機器メーカー最大手リクシルでRPA全社展開のチームリーダーを務めた実績を持つ人物である。

既にリクシルでは、集中的な研修により600人近くのRPA開発者の育成に成功しており、RPA化により15万時間の業務時間削減を見込んでいるという。そしていま竹内氏は、新天地のグッドライフにおいて幅広い企業を対象にした連続性のある研修事業を展開している。

これらの実績を踏まえ、グッドライフ社ではどのような事業展開を予定しているのか、話を聞いた。

(左から)株式会社グッドライフ ロボティクス事業部 部長 竹内 瑞樹 氏 (※元株式会社LIXILのRPA全社展開チームリーダー)、ロボティクス事業部 前澤 真由美 氏

■記事内目次

<目次>

1. RPAツールの選定基準は「現場担当者が自ら開発でき、スケール化後の管理体制を構築できること」

2. 最初にRPA化する業務の選定基準は、「基幹システムへの影響がなく、データにループが生じない業務」

3. RPAの開発者コミュニティ創出を目指して


RPAツールの選定基準は「現場担当者が自ら開発でき、スケール化後の管理体制を構築できること」

──現在グッドライフではどのようなRPA事業を展開しているのでしょうか。

竹内 瑞樹氏(グッドライフ ロボティクス事業部 部長): 2019年3月に、RPA開発者を育成する研修サービスをビジネスとして立ち上げました。今後は研修事業を拡大するとともに、画面共有によるマン・ツー・マンでのサポートなど受講者などからの問い合わせ体制も整えていく予定です。

──竹内さんがRPAに関わることになったきっかけについてお聞かせください。

竹内: 前職のリクシルで、RPAの導入について打診を受けたのがきっかけです。もともと同社時代は、関連会社(=サービス事業会社)の事業に対してシステムを用いて貢献する部署にいたのですが、事業会社とヒアリングするなかで、「最近RPAというものが世の中に出回っているようだけど、うちでも導入できないだろうか?」という声が寄せられたのです。

そこで私もRPAについていろいろ調べたところ“これは絶対に使えるな”と確信し、RPAの導入を2017年秋頃に提案しました。当時、サービス事業会社は残業が多かったので、そこを減らせることができれば効果は大きいと思いましたね。

私の企画に対してリクシルの代表(当時)を筆頭に、経営陣も非常に積極的に賛同してくれ、社長からは「2018年はRPA元年にしたい」というメッセージが発せられたほどです。そんなわけで私もトップダウンでRPA全社展開の担当に任命されました。

──その際のRPAツールの選定は、どのように行ったのですか。

竹内: 実はその時点でいくつかの部署では、それぞれ独自でデスクトップ型のRPA製品を使用し始めていたんです。しかし、全社を挙げて大規模にスケールすることが決まったため、デスクトップ型では管理が大変で野良ロボが問題になると判断して企画書には最初からサーバー型のRPAツールを用いることとしました。

こうして複数のRPAツールを比較検討したところ、情シスでなければ開発が難しいものも多いことがわかりました。最初の1年間で現場に100人の開発者を育成することを目指していたことから、まずそれらの製品は候補から外しました。

その後も検討を進めていった結果、現場の担当者が自ら開発できる容易さがあったことと、スケール化していったときにきちんと管理できる体制を構築できる機能があったことが特に大きな決め手となり、 RPAテクノロジーズ株式会社のRPAソリューション「BizRobo!」をベースに、ソフトバンクが提供している「SyncRoid」を導入することに決めました。

BizRobo!はグッドライフに移った今でも活用しており、BizRobo!開発者を育成するための研修サービスも提供しています。

最初にRPA化する業務の選定基準は、「基幹システムへの影響がなく、データにループが生じない業務」

──導入のご経験を踏まえて、RPA化する業務はどのように選ぶべきとお考えでしょうか。

竹内: まずはなるべく、既存のシステム──とりわけ基幹システムのように、変更のハードルが高く他の業務システムへの影響の大きいシステム──への関わりが少ない業務から、RPA化すべきだと言えるでしょう。実際、リクシルにおいても、RPA化する業務を選ぶ条件としては、まず基幹システムを変更しないで済む業務や、データにループが生じない業務であることを最優先しました。

そしてRPA化するにあたっては、情報システム部門にもITガバナンスやセキュリティの側面で深く関わってもらい、機密性の高いデータを扱う際のセキュリティ面のアドバイスや、より効率的にロボットを開発するためのアドバイスなどももらうようにしました。

──現場への普及をスムーズに進めるための秘訣はありますか。

竹内: やはり、開発者同士のコミュニティを醸成することでしょう。これもリクシルでの経験ですが、同社は部署が異なっても似ている業務も多いので、開発者同士のコミュニティ内で直接対話するように研修時から促していました。

たとえば、開発したロボットをすべて全社で共有するようにしたところ、それを見た他の部署の社員から自部署で活用するアイディアが提案され、どのように開発したのか問い合わせがされる…というような、コミュニケーションがどんどん生まれていったんです。そうしたさまざまな波及効果が全社展開を加速させたと見ています。

前澤 真由美氏(グッドライフ ロボティクス事業部): とにかく誰かがわからないことがあれば放置しない、自分にわからないことがあったならばまわりに呼びかけるという文化が根づいたのが大きいでしょうね。

──数多くのRPA開発者を育成するためのポイントとはなんでしょうか。

竹内: ITに関する知識や経験よりも“意欲”に重きを置いて、意欲のある人材を中心に研修を行うことではないでしょうか。リクシルでも2018年3月から11月までの間に35回ほどの研修を行い、最終的に600人近くのRPA開発者を育成しました。

──8ヶ月で35回の研修というのはかなりのハイペースに思えますが、受講者がついてこれないなどの問題はなかったのでしょうか。

前澤: 一般的なシステム開発であればそうかもしれませんが、RPAはスキルを身につけるためのハードルが低いのでほとんど問題はありませんでした。当時、私はリクシル社内で竹内と同じチームで、RPA開発者の育成やその後の支援、問い合わせなどを担当していましたが、研修の受講者は特別にITの知識や経験がなくてもすぐに覚えてくれました。

実は私自身も、もともと事務派遣でプログラミングは未経験だったのですが、すぐにロボットを開発できるようになりましたから。むしろ意識面のほうが大事で、エクセルで関数をつくってみようとか、マクロについて調べてみようといった意識がちょっとでもある人ならば、誰でも開発者になれるのがRPAの強みだと思いますね。

──その後、リクシルでのRPA導入効果はどれくらい出ていますか。

竹内: 私が担当していた時点で業務部門から提出されているロボットのアイディアが1,000件にも上っており、すべてがロボット化されれば15万時間もの業務時間削減効果が実現できるほどの見込みでした。

既に本番稼働しているロボットも100体以上あって、週10体ほどというハイペースで新たなロボットが生み出され続けている状況でしたね。

RPAの開発者コミュニティ創出を目指して

──リクシルでのRPA全社展開を成功に導いた後、グッドライフへと転職されたのはどのような理由からですか。

竹内: リクシルのRPA導入プロジェクトを通じて、他にも導入展開に課題を感じている企業が非常に多いと実感したからです。これからは業種を問わずそうした企業をサポートできないかという思いを強くしていた時に、不動産とテクノロジーを融合した新しいスタンダード事業を確立するグッドライフのビジョンに強く共感したのです。

実際に私の提案をぶつけると積極的な反応があり、グッドライフでBizRobo!を用いたRPA事業を立ち上げることを決意しました。

──グッドライフでは今後、どのようなRPA事業を展開する予定ですか。

竹内: 最初にもお話したとおり、現在行っているRPA開発者育成の研修サービスを拡大して、RPA開発者となるための、研修を含めた一連の育成プログラムを展開していく予定です。市場を見渡してみると、RPAの研修サービスはあるものの、単発研修のみのプログラムが多いんですね。

これでは本当にビジネスに役立つRPA開発者はなかなか育たないと思います。そこで我々としては、ただ研修にとどまらずに、つながりのあるプログラムを提供していきたいのです。

そして研修だけでなく、画面共有によるマン・ツー・マンでのサポートなどのような、問い合わせ対応の体制も徐々に構築するしていければと考えています。さらにチャレンジしたいのが、全日本のRPA開発者コミュニティの創出です。コミュニティの規模も、ゆくゆくは2、3万人ほどという大規模なものにしていきたいですね。それだけRPAというのはものすごい可能性があるツールなのですから。

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