2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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「RPAを導入したものの全社で展開する道筋をつけられていない」。こうした悩みや課題を抱えるRPAユーザーは少なくないのではないだろうか。こうした悩みの解決のヒントとなるよう、グローバルでスケールするRPAユーザーの実績を多数持つBlue Prism社のCCO(Chief Customer Officer:最高顧客責任者)ジョン・ターコフ氏(「RPAを成功に導いている企業に共通する5つのポイント」)とCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)、デイビット・モス氏(グローバル大企業で多数のRPA成功事例を持つBlue Prismが大切にする製品への想いと今後の製品ロードマップ)に、これまで話を聞いてきた。
第3回目となる本記事では、同社のCEO、アレスター・バスゲート氏にインタビューを実施。同氏は2001年のBlue Prism社創業以前には、Bradford & Bingley住宅金融組合やLynx Financial Systems社に在籍し、ソフトウェアソリューションの提供に携わり、現在に至るまで一貫して企業の生産性向上に力を注いできた。
同氏は、RPAの全社展開を成功させるポイントに「ロボットのメンテナンス性」がポイントになると強調する。また、国内でも需要が高まりつつある、大量の紙文書の問題の解決を担うAI-OCRについて、同社のアプローチについて話を聞いた。さらに、今後のRPAについて、グローバルでは「Intelligence Automation(インテリジェントオートメーション)」のキーワードで議論が進んでいるという。Intelligence Automationを知り、考える上での注意点などを聞いた。
1. RPA導入の成否を決める鍵は、ロボットの「メンテナンス性」
2. 非構造化データである紙の文書をOCR処理できる「Blue Prism Decipher」
3. 関心高まるIntelligence Automation。「無闇に飛びつくのではなく、ベスト・オブ・ブリードの思考を」
――日本のRPA市場について、どのような考察をお持ちでしょうか。
日本では少子高齢化によって働き手がどんどん減っていく一方で、政府は働き方改革を推進しています。このような環境を背景に、自動化の波は今後一層強くなっていくことは間違いありません。
日本は自動車産業に代表される製造業において、ファクトリーオートメーションを代表とする自動化での成功例を持っています。RPAによる自動化も成功できるはずですし、「KAIZEN(改善)」を得意とする日本人の気質とも相性が非常に良いと感じています。
ただ、現在の日本のRPA市場を見ていて感じるのは、RPAに関してはスモールスタートのまま拡大できない例があることです。
――スモールスタートからスケールできない。本日のテーマになりますが、日本でのRPAの動向として、全社展開を成功させている企業と、うまく展開できない企業に二極化している印象があります。成功のポイントはどこにあるのでしょうか。
成功のポイントの鍵は、ロボットの「メンテナンス性」にあります。なぜならば、ロボットが稼働対象とするアプリケーションや操作環境は定期的にバージョンアップされ、そのたびにRPAのメンテナンスが必要になるからです。
多くの企業では初期導入のしやすさ、自動化のしやすさに目を奪われて、座標認識、画像認識、あるいはレコーディング機能でRPAを選びがちです。
しかし座標認識、画像認識、あるいはレコーディング機能で開発されたプロセスは、後からのメンテナンスが非常に大変になることが日本のRPA市場ではまだ多くの方に認知されていません。
われわれBlue Prismは、集中管理型でオブジェクト指向の概念に基づき、プロセス(手順)とオブジェクト(作業する対象)を別々に構築するアーキテクチャにしています。操作対象のアプリケーションソフトウェアや稼働環境がバージョンアップした時には、変更の対象となるオブジェクトを一回だけ更新すればいいので、メンテナンスがしやすいというメリットがあります。
また、画像認識だけではなく、操作を行う様々なアプリケーションの情報を構造的に読み取る機能(例: Webページ向けのHTMLモード、メインフレーム、Windowsアプリ向け、Javaアプリ向け等)を設けているため、安定してそして幅広く自動化を拡大できます。
タイプ | 概要 |
---|---|
集中管理型のオブジェクト指向 | ロボット開発時に自動化業務をプロセスフローのように定義する「プロセス」とアプリケーションに対する個々のアクションを定義する「オブジェクト」とを分けて設定します。同一プロセスでなくても実行する際は共通のオブジェクトを読み込む構造ですので、自動化対象のアプリケーションが変更された際、影響を受ける対象オブジェクトを一回変更する事で対象プロセスのメンテが済む利点がある。また、集中管理されたプロセスを実行ロボットが読みにいく構造なため、個々のロボットへの修正は不要です。 |
レコーディング機能 | 自動化対象のプロセスをレコーディング(記録)しロボットがそのまま実行することが可能。実際には動作条件等の編集を後から追加しないと実用的にならないケースも多い。また、個々のロボットに記録させるタイプは自動化対象アプリケーションに変更が発生するたびに、個々のロボットを修正する手間が発生する可能性がある。 |
構造認識型※UIオブジェクト認識型ということも | ロボット開発時に操作を行うアプリケーションソフトウェアの対象となるオブジェクトを構造的に検出することで、各パーツの属性や機能、識別子を取得してロボットに記録していく方法。 |
機械学習型 | ロボット開発時に操作を行うアプリケーションの画像データを解析し、構造化する仕組みを利用してロボットに記録していく方法。 |
座標(位置情報)認識型※相対位置型ということも | アプリケーションソフトウェアの画面の位置情報(座標軸)を利用してロボットに記録していく方法。個人のデスクトップで動かすようなシンプルな定型作業には効果的だが、レイアウトが少しでも変更されると正しく認識できなくなるというデメリットもあり、組織の業務レベルで活用するには向かないケースもある。 |
画像認識型: | アプリケーションソフトウェア上の画像や表示項目、その中の値などを画像として認識して、ロボットに記録していく方法。こちらもシンプルな定型作業には効果的だが、同一画像が複数存在したり、画像が変更された場合などを考慮すると、組織の業務レベルで活用するには向かないケースもある。 |
――2018年後半頃より、RPAに取り組む企業では、自動化対象領域を拡大するため、大量の紙文書の問題をAI-OCRで解決しようとする取り組みやニーズが顕在化してきています。2019年4月、AIで文書処理を行う「Blue Prism Decipher」が発表されましたが、どのような背景で開発されたのか、またどういった特徴を持つのか教えてください。
開発の背景は、ユーザーからの要望に尽きます。当社の提供するBlue Prismプラットフォーム内で、あらかじめ構造化された文書ではなく、非構造化データである紙の文書をOCR処理したいという声が多数寄せられていました。そこでフォーマットや場所を問わずに文書内のデータを読み取り、解析して、RPAで使用できるようにする機能としてDecipherを開発しました。
Decipherを使って、たとえば請求書のPDFを読み込むように指示をすると、ロボットは請求書番号や金額などの要素を探して自動的に解析してくれます。例えば、請求書番号との表記がなく、「リファレンスナンバー」と表記されていた場合には、ロボットは「これは請求書番号ですか?」と質問してきます。
その質問に答えてあげることで、ロボットは学習して、文書を読み取る能力がどんどん高まっていきます。このようなことがDecipherでは可能になります。DecipherはBlue Prismのユーザーであれば無料でダウンロードできるようになる予定です。
――Blue Prismに各パートナーが提供する最新のテクノロジーをより容易に組み込めるというマーケットプレイス、「Blue Prism Digital Exchange(DX)」も強化されたとのことですが、どのような点が強化されたのでしょうか?
これにより、DX上の特定のアセットについて、指定されたユーザーグループに利用を限定することができるようになりました。
もう一つは、Google Analyticsの統合です。これにより、どのようにアセットがダウンロードされ利用されているか把握、可視化できるようになりました。
――RPAの次のステップとして、Intelligent Automation(インテリジェント・オートメーション)への関心が高まっています。Intelligent Automationを検討するにあたってのアドバイスがあればお聞かせください。
Intelligent Automationは、新しい概念ですので、製品の変化も非常に速い。そのため、無闇に飛びつくのはリスクが高く、自社の状況に合わせて各分野の最適な技術を選ぶ、ベスト・オブ・ブリードの考え方が大切です。
ルールベースで定義されたプロセスを自動化するだけではなく、今まで人間が行っていたスキルを装備することにより、より幅広い業務プロセスの自動化を実現する。Blue Prismはインテリジェントオートメーションを6つのスキルに定義している(知識と知見、資格認識、学習、問題解決、コラボレーション、プランニングと優先順位付け)。
われわれBlue Prismでは前述のDXがあるため、Blue Prismのプラットフォームを活用しつつ、必要に応じてDXから各パートナーが提供する最新の機能を取り込むことで、複雑な処理をこなすプロセスを自動化することができます。このような取り組み方が、Intelligent Automationを実現するシンプルな方法なのではないかと思います。
≪――今後、RPAはどのような変化や発展が考えられるでしょうか。
これからのRPAは、AIと完全に統合されていくでしょう。例えばデータ処理の観点でいえば、今までRPAでは構造化されたデータしか処理しかできなかったものが、AIを使うことで、非構造化データも処理できるようになります。≫
合わせて、RPAの使われ方も変化していくと考えています。今までは、効率化にフォーカスされた使われ方をしていました。今後は、売上の増加やサービスの向上、セキュリティの強化など、企業が抱えている課題を解決したり、ビジネスの付加価値を高めたりする使われ方にシフトしていくでしょう。
たとえば、英国に本社を持つコンサルティングファームのアーンスト・アンド・ヤング社では、従業員の研修の計画を登録すると、ホテルや飛行機の予約について最適な選択を提示してくれる仕組みをBlue Prismを使って構築し、年間40万ドルの旅費を削減しました。
また、米国の運送グループであるシュナイダーエレクトリックでは、IoTとBlue Prismを使って、車両に関するデータを収集・分析し、メンテナンスの最適なタイミングを提示する仕組みをつくました。これらは単に効率化やコスト削減ではなく、サービスの付加価値向上にもつながった例です。
――2019年9月には、日本では初となるユーザーカンファレンス「Blue Prism World Tokyo 2019」を開催されるそうですね。
はい。Blue Prism Worldは、ロンドン、フロリダのオーランド、東京で開催しますが、いずれも、インテリジェントオートメーションや仕事の未来にフォーカスした内容になります。多数の講演や出展を通じて、来場する方々にRPAのベストプラクティスを提供します。特にBlue Prism World Tokyoにおいては、先行企業がいかにして全社展開を成功させたかという、大規模プロジェクトの事例をご紹介したいと考えています。
――RPAで今後目指していくべき未来が見えるお話でした。本日はありがとうございました。
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