「O-RAN Alliance」とは? 5Gインフラをインテリジェントにする最新規格を解説(2/3 ページ)
5G時代にC-RANでは解決できない2つの課題とオープンインタフェース仕様とは
現在の4G無線アクセスネットワークでは、通信処理の主要部分を担う「親局」であるベースバンド処理部と、主に電波の送受信を担う「子局」である無線部で構成されており、これを「Centralized RAN」(C-RAN)と呼ぶ。この構成によって、親局側で子局を含む無線ネットワークリソースをプーリングして、ニーズに合わせた高速な(性能のよい)リソース配分を実現している。親局側に主要な装置の多くを集約できるため、スペースとコストの節約にもなる。しかし5Gの登場により、従来のC-RANには2つの解決すべき課題が顕在化してきた。通信関連機器の相互接続とフロントホール部分の帯域の問題だ。O-RAN Allianceはそれぞれの課題を解消する仕様を提案している。
無線基地局の構成機器のマルチベンダー化を進める「O-RANフロントホール」仕様
1つ目の課題は、通信関連機器の相互接続性である。
5G時代には親局、子局ともに従来よりもはるかに多数が必要になると考えられている。親局と子局を結ぶ回線(主に光ファイバー)の通信(これをフロントホールという)インタフェースはこれまでCPRI(Common Public Radio Interface)の規定しかなく、その標準自体の規定が不十分であるため、現実には機器ベンダーの独自インタフェースを使用することがほとんどだった。そのため、特定のネットワークオペレーターの特定地域内の基地局設備は、同一ベンダーの機器を利用することが世界的にも一般的になっており、そのネットワークの一部に他ベンダーの機器を採用すること自体が困難であり、また複数ベンダーの機器間での相互接続試験も実施されることがまれだった。
単一ベンダーによるシステム構成は安定性に優れる長所はあっても、速やかな拡張や新技術・新仕様の採用には不都合な面が多い。その短所を除いて5G普及に拍車を掛けようとしているのが、O-RANアライアンスのWG4である。WG4は同アライアンス発の最初の標準仕様となる「O-RANフロントホール仕様」を2019年3月に公開した。これは親局・子局の通信機器をマルチベンダー製品で構成することを念頭に策定された仕様だ(図1)。
フロントホール部分のボトルネックを回避する仕組み
C-RANのもう1つの課題は、フロントホール部分の所要帯域だ。マルチベンダー機器の相互接続がうまくいっても、5G時代には周波数帯域幅が大きくなり、マッシブMIMOの採用などによってアンテナ数が段違いに必要になるため、フロントホール部分に求められる帯域がこれまでとは比較にならないほど増える可能性がある。これがネットワークサービスのボトルネックになりかねないため、フロントホール仕様にも回避策が必要だ。
「O-RANフロントホール仕様」では、これまで親局(べースバンド処理部)にあったレイヤー1(物理層)機能の一部を、無線部に配置することでこの問題を回避することにしている。従来は親局が担ってきた処理の一部を親局の装置から切り離し、子局に担当させる仕組みが規定された。レイヤー1の機能を細かく分けると、図2の左側にあるような機能群になる。
図中のO-RU(O-RAN Radio Unit)が子局の装置、O-DU(O-RAN Distributed Unit)が親局の装置だ。フロントホールの所要帯域を小さくしたい場合は、より多くの機能をO-RUにもたせればよい。極端にいえば全部のレイヤー1機能を子局が担うとフロントホールの帯域は問題にならなくなる。だがそのためには子局の装置に高い性能と大きなメモリ量が必要になり、機能拡張やメンテナンス時には全ての子局を対象にしなければならず、コスト的にも設置スペース面でも課題がある。図2に見るように、フロントホールの所要帯域と、実装要求・機能拡張性・相互接続性はトレードオフになる。
「O-RANフロントホール仕様」では、このトレードオフのちょうどよいバランスを考慮し、図2中の「リソースエレメントマッピング」から上の機能は親局側に、「デジタルBF」(BF:ビームフォーミング)以下の機能は子局の側が担うようにした(「Split Option 7-2x」規定)。
また、これまで無線基地局内部のインタフェースに利用されてきたeCPRI仕様に準拠した上で、同仕様に規定されていないマルチベンダーRANの実現に必要なCプレーン(制御信号転送プロトコル)、Uプレーン(ユーザーデータ転送プロトコル)、Sプレーン(装置間の同期プロトコル)、Mプレーン(保守監視信号プロトコル)についても詳細に規定している。
この仕様は、O-RAN Allianceに統合される前のxRAN Forumで作成、公開したxRANフロントホール仕様を引き継いだものだが、既にNTTドコモはLTE時代から世界に先駆けて共通インタフェースによるマルチベンダー相互接続を実現しており、その経験がこの仕様策定に大きく寄与しているという。
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