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アミューズメント業界で始まった、攻めのRPA活用━━月額従量課金×遠隔サポートで好スタートを切った株式会社ABC

» 2019年08月29日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

RPA BANKが2018年11月に実施した「RPA利用実態アンケート調査レポート」では、RPAを活用している業務に関して経理・財務、人事、そして総務などバックオフィスでの利用が多いことが分かった。

バックオフィスでの利用イメージが強いRPAではあるが、RPAを顧客接点で活用している企業がある。静岡県を中心にパチンコホールを運営する株式会社ABCは、顧客満足の向上に努める一方で、社員にとって働きやすい環境整備に力を入れてきた、創業1953年の老舗企業である。

近年人材確保が難しくなってきていることもあり、限られた人員でいかに効率よく業務を遂行するか、生産性をいかに向上させるかを検討した結果、RPAの導入に踏み切った。当初はバックオフィスでの適用を考えていたが、いち早くRPAの恩恵を受けることになったのは、最前線である店舗運営の業務だった。

「RPAという言葉も知らなかった」──そう話す同社のキーパーソンに、導入の経緯を振り返っていただいた。

■記事内目次

  • 経営環境の変化に伴い、生産性を向上させ限られた人員で業務効率を実現することが求められている
  • 顧客接点で始まったロボット活用
  • まず使い始めて、RPAの効果を確かめながら拡大中
  • 業界全体の発展のためにも広げていきたいRPA

経営環境の変化に伴い、生産性を向上させ限られた人員で業務効率を実現することが求められている

−パチンコ業界でも、働き手が足りない状況が深刻だと聞きました。時給も高く、待遇面で恵まれている業界という印象を持っていましたが、現在の状況は変わってきているのでしょうか。

稲葉宏紀 氏(営業支援部 部長): もともと離職率が高い業界にあって、ABCはかなり離職率が低いと自負しています。“すべては「社員の笑顔」「お客様の笑顔」「お取引先・地域の笑顔」のために”という、「三方よし」を目指す会社のビジョンがあり、社員を大切にする文化が定着しています。

しかし、この業界を取り巻く環境は、厳しさを増しています。以前はたしかに報酬面で高水準の業界でしたが、労働力不足を背景に他の業界も水準を引き上げているため、優位性がなくなってきています。また、働き方改革を進めていく上で、生産性の向上は大きな課題と考えています。

業界そのものの動向に目を向けてみると、遊技機の規則が厳しくなりつつあり、顧客の減少が予想されます。こうした状況から、効率化を進めて少ない人員で業務にあたることが必然的に求められているのです。

株式会社ABC 営業支援部 部長 稲葉宏紀 氏

顧客接点で始まったロボット活用

−RPAには、いつ頃から着目していたのでしょうか。

遠藤武士氏(経理部 会計課 課長補佐): 昨年あたりから、「RPA」と「AI」が雑誌等で盛り上がっていましたので、経理業務への導入事例が多いということもあり、RPA関連の記事を気にしてはいました。しかし、本格的に着目しはじめたのは、人事給与・会計システムで取引のあった株式会社クレオ(以下、クレオ)の担当者から紹介されてからのことです。

身の回りでどのような活用ができるか検討すると同時に、社内で情報共有を行い、活用案を募集することにしました。すると、真っ先に導入が進んだのは会計まわりではなく、顧客と接する店舗運営の業務からでした。

稲葉: 私はRPAという言葉を知らなかったのですが、話を聞いて、すぐに使いたいと手を挙げました。

株式会社ABC 経理部 会計課 課長補佐 遠藤武士 氏

−どのような業務にRPAを適用したのですか。

稲葉 : 営業支援部では、広告宣伝、店舗の装飾、景品や備品の購買、店舗の接客指導や教育研修と幅広い業務を担当しており、私自身が店長の経験を持つなど現場を詳しく知っていることもあって、RPAを使うアイデアが続々と浮かんできました。

そのなかで最初に取り入れたのは、お客様が店舗に足を運ぶ際にチェックするポータルサイトの更新でした。このサイトには、どの機種が何台導入されているかといった情報を掲載するのですが、弊社が運営する38店舗の情報はすべて異なり、月に2回の機種入替ごとに手作業で入力していました。しかも、複数のポータルサイトと契約していて、それぞれ更新する必要があります。

−手作業での入力ミスはゼロにするのは難しいことですよね。自動化ができれば、ミスを予防することになり、削減時間も多そうです。

稲葉 : 1サイトを1回更新するのに、店舗ごとにおよそ60分かかっていたので、全店舗合わせると1カ月で76時間にもなります。現在、他のポータルサイトでも更新できるようにサイトの運営会社と協力し開発を進めているので、さらに削減される見込みです。

他部門でも入退店記録や光熱費の集計、複数の社内システムから情報を取り出してExcelで加工していた作業を自動化するなど、店舗運営でもロボットに置き換えられる単純作業はたくさん存在します。

まず使い始めて、RPAの効果を確かめながら拡大中

−ロボットの開発は、どのように進めているのでしょうか。

遠藤: 業務を知っている現場の声が大切なので、稲葉を中心にシナリオを作りながら、開発は私が担当しています。わからない点があればクレオに問い合わせて、サポートを得ながら進めているところです。

−数多くのRPAベンダーや代理店があるなかで、なぜCREO-RPAだったのでしょうか。

遠藤: クレオのCREO-RPAを選んだ理由はいくつかありますが、月額従量課金で始められるのは魅力的でした。RPAで何ができるか、どれくらいの効果があるのか、自社の業務で使って理解することができます。初期コストが大きいと、なかなか手を出しづらいですよね。スモールスタートできるということは大きな利点です。

それから、業務イメージに近いサンプルロボットを無料で提供してもらえるので、サンプルをベースに少しカスタマイズすればいい。開発のハードルを大きく下げてくれています。

稲葉: パチンコ業界はITベンダーにとって参入障壁が高いといわれているのですが、それは業界特有の業務が多いからです。大手ITベンダーでも知識を持ち合わせていることは珍しく、こちらとしても特有な業務を一から説明するのはかなりの負担になります。

その点、クレオはもともとパチンコ業界の業務知識もあり、サンプルロボットも適切に作ってくれ、サポートも含めてスムーズに会話できる安心感がありました。

−しかし、東京と静岡で離れていますよね。

遠藤: 遠隔でも不便を感じたことはありません。基本的にはWEB会議を定期的に実施しており、その際にはエンジニアも同席してくれるので、技術的な話をその場で詰めていくことができます。内容は充実していて、スピードもむしろ速い。定着支援は無料で無制限ですし、問い合わせに対しても迅速な返信があります。

業界全体の発展のためにも広げていきたいRPA

−社内では、RPAに対してどのような反応がありますか。

稲葉: ロボットが入った業務では、驚きと喜びの声が多く上がっています。さらに効率化を進めるためには社内で広く認知してもらう必要がありますので、説明動画などを作り、会議や研修で説明したり、社内報にも掲載したりと布教活動を行なっています(笑)。

社内でも「AI」は知っているものの、「RPA」は1人も知らないような状況でしたが、反応は好意的で、「ロボット化したい業務がある!」という声も上がりつつあります。

−最後に、今後のビジョンについて教えてください。

遠藤: 先ほど紹介した、ポータルサイト自動更新ロボットを稼働させるためには、実は、開発以外で大きな課題がありました。利用している業界のポータルサイトが、RPAが使えないWEBの技術で構築されていたので、私たちだけの力ではどうすることもできなかったのです。

稲葉: RPAで情報を更新できるように、ポータルサイトの運営会社にシステムを改修してもらう必要がありました。事情を説明して、この取り組みがパチンコ業界全体の将来に役立つのだという話をしたところ、快く協力してくれることになったのです。

※一部ポータルサイトのCAPTCHA(ボットがWEBページを不正に利用することを防ぐ技術)には未対応。

RPAの導入により、自分たちの業務効率化は継続的に拡大しています。しかしそれだけでなく、ABCが取り組んできたRPAの知見を広く提供していきたいと考えています。そうすることにより業界の発展につながるのであれば、「RPAを導入して良かった」と、さらに感じることができると思います。

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