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トッパンフォームズ「RPA Lab」―社内外との生産性向上を目指したエコシステム構築

» 2019年09月30日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

RPA BANKが2019年4月に実施した「RPA利用実態アンケート調査レポート」によると、RPAの活用拡大を目指したデジタル推進専門組織を持つ企業では、デジタル化戦略・計画、人材調達、育成、評価など、まったく新しい組織を育てていくことに、自社だけで解決しきれないような様々な悩みを抱えていることが分かった。社内だけでなく社外の企業との連携や交流を通じて、こうした悩みを解決できないかと考えている担当者もいるのではないだろうか。

「情報」を核とする「インフォメーション領域」で強みを発揮し、業務効率化に貢献することで企業活動をサポートし続けるトッパン・フォームズ株式会社では、ツール操作方法からシナリオ作成スキル習得に向けた体験型トレーニングを受講できる「RPA Lab」を設け、社内外と連携した生産性向上目指したエコシステム構築のユニークな取り組みを進めているという。同社におけるRPA推進のキーパーソン3名に話を聞いた。

(写真左から)デジタルビジネス統括本部 情報システム本部 システム企画部 小嶋真平 氏

営業統括本部 営業支援本部 営業事務システム推進グループ 主任 谷口美津子 氏

営業統括本部販売促進本部RPA推進部 部長 横溝倫之 氏

■記事内目次

1. 自社と顧客双方での生産性向上を目指し始まったRPAプロジェクト

2. 現場と情報システムとの連携によるRPAの社内利活用の推進

3. 18000時間の削減効果。削減によって強化されていくチームとの絆

4. 「RPA Lab」をハブとした社内外との生産性向上エコシステム構築が目標


自社と顧客双方での生産性向上を目指し始まったRPAプロジェクト

──まずはRPAに着目したきっかけについてお聞かせください。

小嶋真平氏(デジタルビジネス統括本部 情報システム本部 システム企画部): 社内システムの企画・開発・保守を担当し、なかでも新しいシステムの提案が我々の部門の主なミッションなのですが、2016年末頃にRPAについて耳にしたとき「当社でも使えそうだな」と感じたのが最初のきっかけでした。

ちょうど営業部門の事務の負荷が高いと聞いていたので、負荷低減にRPAが活用できるのではと、営業部門に話を持ちかけたのです。

横溝倫之氏(営業統括本部 販売促進本部 RPA推進部長): それと並行して、もともと帳票──つまり「情報の器」を活用した業務効率化を生業としてきた当社にとって、RPAは主事業とのシナジー効果を生むのではという観点からもRPAに着目していました。

グループ内には、お客様の情報システム部門にオペレーターを派遣するトッパンフォームズ・オペレーションという会社もありますので、お客様にRPAを提案し外販するのにうってつけではという想いもありました。

──社内でのRPA導入のために選定されたツールはどのRPAツールだったのでしょうか。そのツールを選定したのはどのような理由からでしょうか。

小嶋氏: 2016年末からすぐにRPA製品の検討に入り、4製品を比較検討した結果、当社のニーズにはWinActorが一番ふさわしいだろうと判断して2017年2月にはWinActorの導入を開始しました。

選定理由としては、現場のPC上で行われている業務のロボット化を目指していたため、研修を受ければ、メンテナンスも容易なWinActorが最も業務を扱いやすかったことが挙げられます。

現場と情報システムとの連携によるRPAの社内利活用の推進

──実際にどのように業務をRPA化していったのでしょうか。

谷口美津子氏(営業統括本部 営業支援本部 営業事務システム推進グループ 主任): 私は今年4月に様々なITツールを活用して生産性を向上してくことを目指す、新しい部門の営業事務システム推進グループに異動となりましたが、それ以前は全国に180人ほどいる営業支援グループに所属していました。

営業と営業支援に関わる業務というのは細かい事務作業が多く、それぞれ手間のかかるものが多いため、どうにかしてもっと楽にできないものかと、常々思っていました。そこで情報システム本部に相談したところ、いいものがあるよと勧めてくれたのがRPAだったのです。

2017年、最初につくってもらったロボットは、お客さまから受け取った注文データに必要な情報を付加し、当社システムにデータ入力をするというものでした。

当時、印刷物の納品に関わる情報をお客さまからExcelデータでいただいているのに、その内容の細かい記録を社内のシステムに手入力し直さなければならず、大きな負担となっていたのです。それをすべてRPAがやってくれるようになり、入力のミスもなくなり大きな効果を実感しました。

小嶋氏: 1つ目のロボットで成果があったのと、運用するなかである程度ノウハウが蓄積できたことから、2つ目のロボットを作成しました。このロボットは、当社のお客さまが指定する購買用Webサイトを使い、受注した資材やオフィス用品の受注データをダウンロードし、当社サーバーへ保存する作業を自動的に行うというものです。

こちらも、それまで営業事務スタッフに大きな負荷をかけ、細心の注意を払いながら行っていた業務をすべてRPAが担うようになり、現場の担当者には喜んでもらえました。

その後は、営業に限らず人事や総務、製造などの部門でひととおりRPAの導入を推進しています。現在は、営業事務部門での利活用が一番進んでいますね。

谷口氏: 様々な部門からRPAの相談を受けることも多くなってきたので、アドバイスしたりシナリオを作成したりもするようになりましたね。

──業務にRPAを適用する際に特に工夫しているポイントはありますか。

谷口氏: 人間が作業するに当たって、普段は何気なく頭の中で判断しているような内容を、できる限り1つ1つ分解して書き出していくようにしています。例えばUFOキャッチャーの動作を分解すると、まず(1)アームを上げる、(2)目的の景品の上まで移動する、(3)つかむ動作を行う、(4)引き上げる、(5)出口の上まで動かす、(6)つかんでいる景品を落とすと、作業を分割させます。

漏れているプロセスがあった際には、情報システム部門のチェック機能が働き、差し戻されるので再度確認・修正して申請します。業務部門と情報システム部門が何回もテストを繰り返しながらシナリオを作成していきます。こうしてシナリオが完成し、いままでは自分たちが行っていた作業がスムーズに動いた時はとても嬉しいですね。

小嶋氏: 最初の2体のロボットは情報システム部門で作成しましたが、元々は現場でつくってもらうのが狙いだったので、いまは少しずつ現場でつくってもらっています。特に営業部門は最近では本当に困った時だけ我々に相談してくるぐらいにまでロボット開発スキルが上がっています。

18000時間の削減効果。削減によって強化されていくチームとの絆

──社内でのRPA活用によりこれまでにどのような効果が表れていますか。

小嶋氏: 基幹システムの改修には大きなコストと時間を要するため、これまで人手を掛けて対処しなければいけなかったわけですが、RPAにより多くの業務の自動化に成功しました。

ヒアリング集計した実績では、2018年度は全社で年間およそ18000時間の削減効果が表れています。昨年度は基本的に本社の目の届く範囲の部署をターゲットにRPA化を推進していましたが、今年度は地方の拠点や子会社からもRPA化の要望が来ており、そちらでも展開しているところです。

谷口氏: 現場としては、とにかく仕事がすごく楽になりましたね。今年の異動の際に引き継いだ業務も、以前は5人で行っていたのがいまは1人で十分にまわせています。その1人もメールを受け取ったらRPAを実行させるだけなので、今までその業務に費やしていた時間を、よりスキルを必要とする他の業務に振り分けることができるようになっています。

元々残業時間の多いチームだったのですが、今ではほぼゼロとなっています。定時に会社を出る前にRPAを実行しておけば、翌朝出社した時には作業が完了していますから。

それに基本的にはロボットはミスをしませんから、作業の品質も手作業の時よりも格段に向上しています。多くのメンバーが負担を感じていた業務から解放され、職場の雰囲気も一層良くなったと感じています。メンバーとの飲み会も増えました。チーム力の強化につながったのもRPAの効果と言えるでしょうね(笑)

「RPA Lab」をハブとした社内外との生産性向上エコシステム構築が目標

──社内でのRPA導入と合わせてRPAの外販も事業としていますが、そちらの取り組みについてもお聞かせください。

横溝氏: 社内での実績を受けて、社内だけでなくお客様の業務も効率化していこうと2018年10月からRPA事業にも進出しました。外販ではWinActorだけでなく、BizRobo!とUiPath、パトロールロボコンの4製品を扱っています。

これは、単純にツールを売るというのではなく、お客さまの業務課題がどこにあるのか話しながら、それぞれの業務内容や課題ごとに最適なソリューションをご提案できるようにするためです。

──業務効率化やRPA事業に関する今後の取り組みについて教えてください。

小嶋氏: 営業事務だけでも全国に41拠点で行われていますので、全拠点への横展開を目指しています。これは同じく全国に拠点を持つ製造部門でも同様です。RPAも活用しながら業務の見直しなども行いつつ、今後はAI活用やモバイル活用などにも取り組んでいく予定です。

AI活用については製造現場で既に進めており、これまで監督者の勘と経験に頼っていたパート社員のアサインや配置にAIを取り入れたところ、既に成果が出始めています。例えばパート社員も、より自分のスキルに適した業務を担当できるようになって満足度が向上しました。

横溝氏: 当社には2000名強の社員がいるので、もっともっと社内の様々な業務へとRPAを展開しながら業務の生産性向上を進めていきます。そして、豊富な社内でのRPA活用事例を外販にも活かしていくことを目指しています。

このように、社内でのRPA活用とRPAの外販という両輪を同時に拡大させるというのが当社のRPA戦略です。そのためにも、社内での組織を越えた情報交換をもっと活発化させていきたいですね。そうすることで、お客さまの生産性向上や働き方改革の推進に貢献できると信じています。

──社内を超えた外部との連携を通じた更なる生産性向上の実現に期待しています。本日はありがとうございました。

▲東京都・新橋駅至近に開設した新拠点「RPA Lab(RPAラボ)」にて。RPA Labでは、ツール操作方法からシナリオ作成スキル習得に向けた体験型トレーニングを受けることができる。

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