フロッピーディスク(FD)を知っている、触っていたという人は少なくはないだろうが、5インチFDや3.5インチFDではなく、8インチFDを活用していたという人は多くないのではないだろうか。
ドッコイ生きてる○○の中──どこかで聞いたことのあるようなフレーズだが、意外な使われ方をしていた「8インチフロッピーディスク(FD)」がようやく”お役御免”になったという。
1970年代初頭に開発された8インチFDが使われていたのは、せいぜい1980年代までだろう。汎用機やオフコンなどに採用されていたので、本格的にPCが普及しはじめた1985年半ば以降は、5インチFDや3.5インチFDが一般的になっていった。
30年も前に消えてしまったと思われていた8インチFDが、いよいよある業務から「退役」するということで話題なった。一体、どんなシステムが8インチFDを使い続けていたのだろうか。
なぜ「退役」という言葉を使ったのかといえば、最近まで使われていた場所が米国内にひっそりと設置されている軍事施設だったからだ。そこは「サイロ」と呼ばれる核ミサイル発射施設だ。軍事技術や関連情報を紹介するWebメディア「C4ISRNET」が、米空軍第595戦略通信飛行隊を指揮するジェーソン・ロッシ中佐の談話として報じた。
ロッシ中佐によれば、8インチFDは全米のサイロに装備された「SACCS(Strategic Automated Command and Control System、戦略的自動指揮統制システム)」のストレージとして長らく利用されていた。そして2019年6月に「その全てが排除され、非常に安全なソリッドなストレージソリューションに移行した」そうだ。
回りくどい言い方だが、軍事機密とはこういうものなのだろう。だが、8インチFDがSACCSに採用されていることは有名な話だった。2014年に放送された米CBSテレビのドキュメンタリー番組「60 Minutes」で紹介されていたからだ。
番組では、米大統領が核ミサイルの発射を指示した場合、SACCSは「IBM Series/1」を稼働させて忠実にその責務を果たすと解説された。1976年にリリースされたSeries/1は、当時としては高性能な16ビットコンピュータだ。データは8インチFDから読みだされるわけだ。
さらに驚きなのは、8インチFDはリプレースされてもSACCSのシステム自体は継続されていることだろう。SACCSの管理担当者に就任するには、はんだごてを片手に顕微鏡をのぞきながら回路を修理する技術を身に付けなければならないという。
ソフトウェアだって古すぎるはずだが……。中佐は「IPアドレスを持たないシステムをクラックするのは難しいだろうね」と胸を張ったという。
上司X: 8インチFDがつい最近まで生きていたよという話だよ。
ブラックピット: 「ドッコイ生きてるサイロの中〜」というところですか。でもそれもオシマイ、と。
上司X: IBM Series/1クラスのオールドコンピュータが稼働する現場なら、どこかで8インチFDが現役かもしれないよ。
ブラックピット: さすがにそれはないんじゃないでしょうか。
上司X: そうだな。国内で8インチFDが現役なら、それも大ニュースになるだろうな。たまに5インチや3.5インチなら、まだ使われているって話は聞くけどな。
ブラックピット: 完全にネットワークから遮断されたUSBポートも付いていないPCで、データのやりとりに使われているという話ですよね。中佐が言うようにセキュリティリスクは少ないのかも。
上司X: FDなら、その場で簡単にデータを破壊できるってメリットもあるぞ。
ブラックピット: でも、8インチFDの最大容量って1.6Mバイトですよね。Excelのシート1枚も保存できないのでは……。レガシー過ぎますよ。
上司X: 確かにな。古いモノに価値を見いだせることは多いけど、さすがにITではムリか。さしずめ「レガシーからレジェンドへ」ってところかな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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