インテルがようやく次世代のPC向けプロセッサを発表した。中でも注目なのが、軽量PC向けに作られた「Ice Lake」と「Comet Lake」と呼ばれるプロセッサだ。
「第10世代インテル Core プロセッサー」が発表されたのは2019年8月のことだった。このうち「第10世代Core iプロセッサー」群は、モバイルPC向けの製品で、10nmプロセスで製造される「Ice Lake」シリーズと、14nm++プロセスで製造される「Comet Lake」シリーズの2ラインの製品に分類される。2019年10月上旬、インテルは都内でこの「第10世代インテル Core プロセッサー」のモバイルPC向け製品群についての発表とデモ展示を行った。
「Ice Lake」と「Comet Lake」はいずれもモバイルPC向けのプロセッサーであり、両者とも「Wi-Fi 6」や「Thunderbolt 3」、「Optane Memory H10」といった最新テクノロジーに対応するものの、得意分野がやや異なる。
端的に言えば、Ice Lakeはマルチメディアに関する処理に適していて、Comet Lakeはオフィスなどで生産性を求められるような処理が得意なのである。
Ice Lakeは、新アーキテクチャ「Sunny Cove」を採用し、内蔵グラフィックス機能が強化された。上位モデルでは第11世代「Iris Pro Graphics」が搭載され、グラフィックスカードを追加しなくてもスムーズな画像描写が可能だ。またAI推論命令セット「インテルDL(ディープラーニング)ブースト」やAI処理アクセラレーター「インテルGNA(Gaussian mixture model and Neural network Accelerator)」を搭載したことで消費電力を抑制しながらAI系の処理高速化も実現した。
一方のComet Lakeは、最大6コア/12スレッドのハイパフォーマンスモデルが用意されることからも分かるように、高い処理能力で生産性を高めることを狙った設計だ。グラフィックス処理能力よりも快適にオフィス業務をこなすのに適している。
ここからは第10世代インテル Core プロセッサーの各種機能デモや搭載PC(プロトタイプ含む)を見ていく。
まずは「インテル DLブースト」機能についてのデモを見てみよう。Topaz Labsの「Gigapixel AI」はHD動画および静止画を、AIを活用して4Kに補完するアプリだ。この補完処理に使われるAIの演算にインテル DL ブーストが貢献する。
次はメモリーに近い高速さを武器とするストレージ「Optane Memory H10」のデモだ。
Optane Memory H10は、NANDメモリーよりも高速で低遅延な「3D XPoint」を採用した「Optaneメモリー」とSSD製品「3D QLC NAND SSD」を単一基板に実装した「ハイブリッドSSD」。「サイズの大きなファイルをコピーしながら開く」といった高負荷な処理でも、応答が遅れることがない。デモではOptane Memory H10が従来の一般的なSSDの4倍ものパフォーマンスを発揮していた。
「Wi-Fi 6」もまた、第10世代インテル Core プロセッサーで完全サポートされる新たな規格だ。すでにWi-Fi 6 Certified(認証済み)製品が登場しつつあり、今後のWi-Fi規格の主流となっていく。会場でもCertified製品が展示されていた
下の写真はクラムシェルタイプのノートPCの形状ながら、本体に2基のディスプレイを搭載する、ツインディスプレイPCのプロトタイプ製品だ。写真手前のモデルはキーボード近くにあるサブ画面部分を立ち上げて利用できる。なお今後、「Intel」のロゴを冠した製品も登場する可能性があるという。
次のデモはツインディスプレイ搭載PCの派生モデルとして展示されていたもの。キーボード部分もタッチパネル搭載液晶になっていて、ヨコ開きで使用することであたかも開いた本と同様の形状でコンテンツを楽しめる。
第10世代インテル Core プロセッサーを搭載するPCは全て「Thunderbolt 3」に対応するため、ポート搭載も必須だ。Thunderbolt 3はUSB 2/3/4およびPCIe、Display Portといったインターフェイスの上位互換だ。
これから2020年にかけては、この第10世代インテル Core プロセッサーを搭載したノートPCが主力製品として各ベンダーから登場する見込みだ。Ice Lakeはグラフィック機能の向上が注目されがちなため、ともするとコンシューマー向け製品の強化と認識されているかもしれない。しかし実際のところAI処理の向上やWi-Fi 6、Optane Memory H10の採用やThunderbolt 3など、ビジネスシーンにおける「快適さ」が向上する機会であることも間違いない。
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