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企業活力向上に向けた社内実践。そのノウハウを生かしてお客さまへご提供する「デジタライゼーションパートナー」をめざす

» 2019年11月21日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

1962年の設立以来、多様な業界・業種、さまざまな規模のシステムを構築・運用してきた株式会社日立システムズ。データセンターや全国約300カ所の拠点といったサービスインフラを生かし、日本のITれい明期からサービスを提供し続けている。

同社の沿革を振り返ると、2011年に日立電子サービス、日立情報システムズという2社が合併して現在の社名を冠した経緯がある。業務プロセス統合やシステム統合などハード面の改革が進む中、従業員の意識(ソフト面)の取り組みも継続してきた。また、24時間365日のサポート体制の中では、顧客先に常駐する社員も多い。全社的な一体感の醸成、コミュニケーションの活性化を潜在的な課題として見据えてきた。

同社は、それらの課題に対して「ワーク・エンゲイジメント*1」を掲げて取り組んできた。2013年からのプロジェクトでは、テレワークやテレビ会議といったICTツールの導入、サテライトオフィスの拡充やワークスペースの環境整備、RPAの活用などさまざまな施策として具体化している。

同社では、社内でも定型業務を自動化することで、コア業務への集中や業務品質の向上をめざしている。働き方改革を推進する人事総務本部の担当者、RPAなどの仮想労働力やICTツールの全社導入を支えるIT本部、現場での実施や外販に取り組むコンタクトセンタ&ビジネスサービス事業部の担当者に、新たな価値を創出するための試み、RPAやICTツールの導入による働き方改革の進展を聞いた。

*1:ワーク・エンゲイジメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、「活力」「熱意」「没頭」の3要素で構成されるものとされている。

■記事内目次

目次

1.働き方改革の全体像とその取り組み・成果

2.基幹システム開発の経験値が、RPAのスムーズな運用につながった

3.働き方改革を進める中で得たものをソリューション化していく


働き方改革の全体像とその取り組み・成果

──企業活力向上施策におけるRPA導入の狙い、各事業部で進む取り組みについてお聞かせください。

金森: 2013年からスタートした全社職場活性化施策とICT環境改善の取り組みにより、ワーク・エンゲイジメントに関する肯定的回答率の向上や総労働時間の削減など、順調な成果がみられました。2017年からは企業活力向上施策「SMILE Work∞Life Action」と銘打った第2期に入り、働き方改革・健康経営・ダイバーシティの3本柱で統合的に推進しています。働き方改革では、在宅勤務やテレワークの活用、サテライトオフィスの拡充といった柔軟な働き方の推進に加え、間接業務の削減や業務プロセス改革、長時間労働是正施策など、生産性を向上し、いきいきと働ける環境整備を行っています。健康経営では、職場環境改善や労働災害撲滅に向けた取り組みに加え、予防重視の衛生管理など、健康に対する主体的な行動を支援しています。また、ダイバーシティでは、多様性を受容し、問題解決力や創造性を高められるような意識啓発活動を行っています。その中でも「コア業務への集中・業務品質の向上」をめざし、RPAを活用した定型業務の自動化には積極的に取り組んできました。

人事総務本部 ダイバーシティ推進センタ センタ長 金森さつき 氏(左)

安藤: 2016年から、人事、調達、財務といったコーポレート部門でもRPAを適用するプロジェクトが始まっていました。コーポレート部門が集まって業務の棚卸しを行い、スリム化を進めていきましたが、採用したRPAのBizRobo!によって自動化した代表的な業務が「長時間残業防止のためのフォローメール作成・送付」という作業です。

岡崎: 以前は担当者が勤怠システムをチェックし、長時間残業になりそうな社員がいたら、その上長に対して注意喚起のメールを配信していました。対象者の抽出はすべて手作業で行っていたのですが、現場の作業を軽減すべくRPAを導入。ロボットが対象者の抽出からリスト作成、上長の検索からメールアドレスの追加まで自動化できています。

安藤: このように、当社はコーポレート部門からRPAの活用をめざしました。時間外労働を見える化し、そのフォローにロボットを活用していったのです。しかし、社内では2016年以前からRPAに取り組む動きが活発で、それは、営業バックオフィスの効率化という面で進められていました。

IT本部 グループIT企画部 データ分析・管理グループ 主任技師  安藤由人 氏

岡田: 当社は、営業の受注入力作業をバックオフィスセンタが代行しています。従来はオペレーターが手作業で一連の業務を行っていました。そこでボトルネックになったのが、約50もの項目を入力するというフローです。繁忙期には作業工数が増え、手作業のためミスも発生します。また、オペレーターが個々で案件管理を行うため、作業が属人化する傾向もありました。そこで、2016年から営業バックオフィスの「受注登録の自動化」にBizRobo!を導入。その後、基幹システムから各種データをダウンロードする作業にもロボットを活用しています。

基幹システム開発の経験値が、RPAのスムーズな運用につながった

──順調に進んだRPAの導入ですが、その効果をどのように分析されていますか。

岡田: 営業バックオフィスでは、約30体のロボットが毎月3,000件に及ぶ受注登録を自動化することで、月間約300時間の労働時間を削減できました。また、基幹システムからのダウンロードでは月間200時間も削減できています。作業時間の大幅な短縮だけではなく、転記に起因する入力ミスもゼロ。属人化を解消しつつ、業務品質の向上にもつながっています。

渡辺: ロボットによる自動化を進めるためには、現場業務の「標準化」が第一のステップです。業務フローを構造化し、見直していく。RPAの導入にはBPOのアプローチが不可欠です。私たちはITベンダーとして業務プロセスの改善による業務の効率化を追求してきました。その強みはRPAの社内導入に発揮できていると考えています。そこで得た知見は、BizRobo!の導入支援といった外販サービスにもフィードバックできると考えています。↓mz_1533_2019112104.jpg,,コンタクトセンタ&ビジネスサービス事業部 BPOシステム構築本部 BPOビジネス推進部 BPO設計グループ 技師 岡田英樹 氏(左)

コンタクトセンタ&ビジネスサービス事業部 BPOシステム構築本部 BPOビジネス推進部 担当部長 渡辺静香 氏(右)

岡崎: コーポレート部門では26体のロボットを導入しました。先述の長時間残業防止のフォローメール作成をはじめ、トータルで月間約2,000時間相当の作業が削減できています。また、数字では見えないメリットもあります。あるセキュリティ関連の作業は工数の問題から月1回ペースの実行にとどまっていましたが、ロボットの活用により月4回ペースで実行できるようになりました。これにより、業務に安心・安全をもたらしています。

――日立システムズは5つの事業グループを備えていますが、社内全体でのRPA推進はどのように統括されているのでしょうか。

岡崎: 事業グループ全体を見ると、50弱の部署で200体以上のロボットがさまざまな業務で活用されています。これまでは各部署が個別にロボットを開発していましたが、社内システムへの負荷に鑑み、野良ロボットの出現も懸念されたため、開発したロボットは(IT本部が)管理する台帳に登録してもらい、社内環境に過剰な負荷をかけたり、内部統制業務を自動化している場合はロボット管理元にストップをかけるなど、RPAが適正に活用されるよう統制を行っています。

安藤: IT本部で積み重ねてきた知見・ノウハウも横展開すべく、開発要員向けのガイドラインを策定しています。さらに、それぞれの部署でRPAの管理者を設定し、希望者にはロボット開発技術の教育も行っています。こうして、2018年からRPA統括の4本柱「RPAガイドライン・台帳登録管理・RPA管理者の制定・技術教育」を確立することができました。

IT本部では開発と運用の役割分担を明確にし、RPAの企画、開発、運用を三権分立するというルールを策定しました。これは通常の基幹システムと同様の取り扱いです。長年にわたってシステムの開発・運用・保守を担ってきた企業として、RPAも厳格な運用をめざしています。

IT本部 グループIT企画部 データ分析・管理 グループ 技師 岡崎由佳 氏

働き方改革を進める中で得たものをソリューション化していく

──RPAの導入、プロセスの定着化に、長年にわたってシステム開発に携わってきた知見が大いに発揮されていることが分かりました。今後、自社で培ったRPAを含む知見を、働き方改革ソリューションとしてどのように提供し、促進させていくのでしょうか。

金森: 当社は2013年からRPAのリサーチを開始しています。RPAの導入支援においては日本でも先駆けの存在です。営業バックオフィスの自動化は一例ですが、各事業グループで進むRPAの活用に「SMILE Work∞Life Action」という全社的な施策が横串を刺し、さらに幅広く展開していきたいですね。

岡崎: RPAが広く浸透するにつれ、ログインIDやシステム用の社員ナンバーなど、ロボットのIDをどう取得し、運用するのかという課題が浮上してきました。これまではシステムも規則も人間を前提にしたものしかありません。デジタルレイバー用の仕組み、さらに言うなら人事制度も求められています。RPA活用の実績をベースに、さらなる検討を続けていければと考えています。

渡辺: 営業バックオフィスの自動化について、メンバーたちが知恵を絞って進めているのを目の当たりにしてきました。社員がより付加価値を高める働き方にシフトする中、その経験を生かして、お客さまに対してもRPAを活用した業務改善を支援させていただいています。社内のRPA開発、運用で得たノウハウをソリューションとして提供する「デジタライゼーションパートナー」をめざします。

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