企業におけるPCの利用状況調査を実施したところ、ノートPCの利用者が増加。働き方改革が進み、生産性が向上したかと思いきや、思いかげない新たな課題が浮き彫りになった。Windows Virtual DesktopなどのクラウドVDIの利用意向調査も。
キーマンズネットは2019年10月17日〜11月7日にわたり「PCの利用状況」に関するアンケートを実施した。全回答者数278人のうち、情報システム部門が37.8%、製造・生産部門が15.1%、営業・販売部門が6.8%、経営者・経営企画部門が5.4%といった内訳だった。
アンケートでは「業務で使用しているPC環境」や「今後利用してみたいサービス」「現在業務で利用しているPCについての課題」など、企業で利用されるPCの利用状況を把握するための質問を展開した。働き方改革の進展とともにノートPCの利用率が高まる状況が明らかになった他、ノートPCにまつわる新たな課題も明らかになった。なお、グラフ内で使用する合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
前回の記事では全体の86.7%と大多数の企業で利用端末を「Windows 10」に切り替え済みであり、業務アプリケーションのWindows 10対応も着実に進んでいる現状などが明らかにした。本稿では企業で利用するPC環境の変化を見ていく。
はじめに業務で使用しているPCの環境について尋ねたところ、1位「職場で支給されているノートPCを利用している」73.7%、2位「職場で支給されているデスクトップPCを利用している」50.0%の順で続いた。続いて3位「職場で支給されているタブレットPCを利用している(2in1を含む)」11.2%、4位「BYOD/CYODで自由な端末を利用している」5.4%、5位「職場に設置されている共有端末を利用している」4.7%などが挙がる結果となった(図1)。
この結果を従業員規模別に見ると、100人以下の小規模企業においてはデスクトップPCとノートPCの利用率がほぼ同等である一方で、5001人以上の大規模企業においてはノートPCの利用率がデスクトップPCの約4倍と、企業規模が大きくなるにつれてノートPCの利用率が上昇する傾向にあった。また2018年に行った同様の調査と経年比較をしたところ、上位に変動はなかったものの「BYOD/CYODで自由な端末を利用している」が「職場に設置されている共有端末を利用している」を抜き5位から4位に浮上していた。
「働き方改革」の号令の下で在宅勤務やフレックス制度などの柔軟な勤務体系を整備したり、デバイス管理ツールの普及などモバイルセキュリティ技術が向上したことなども相まって、業務端末もある程度自由度を持たせ従業員の生産性向上を後押しする企業も増えてきているのだと推察できる。
Windows 10端末への切り替えとともにノートPC利用やBYOD/CYODを採用する企業が増える状況が明らかになった。端末を選ばす安全に業務を遂行する環境の1つにクラウドVDIやクライアント仮想化(Desktop as a Service:DaaS)も注目を集める。
そこで今後利用してみたいあるいは検討中のサービスを全体に対して聞いた。
その結果、5割以上の回答者がマイクロソフトが提供するクラウドVDIである「Windows Virtual Desktop」を挙げた(51.1%)。次いでAmazon Web Servicesが提供する「Amazon Workspaces」18.3%、そしてヴイエムウェアが提供するVDI「VMware Horizon Cloud」14.7%が続いた(図2)。
「Windows Virtual Desktop」に関しては日本国内でのサービス提供が開始されたばかりということもあり、大きな関心が寄せられた。Windows 10や「Microsoft 365」「Office 365」との親和性が高く、これらライセンスを保有していれば追加ライセンス費用がかからない点も魅力的だ。またモバイルワークなど社外からのシステム利用も簡単に行え、かつセキュリティリスクを抑えながら管理ツールで運用負荷も軽減できるため”働き方改革“への貢献も期待できる。
さらにWindows Virtual Desktop 利用の場合のみWindows 7向け延長サポートプログラム「Windows 7 Extended Security Update(ESU)」を2023年まで無料提供するとした点もWindows 7の延命ユーザーにとっては選択肢に入る理由になっているのかもしれない。
最後に業務で利用するPCについての課題をフリーコメントで聞いたので紹介しよう。まず目についたのは「古いOSでないと動作しないアプリが残っている」「新しいOSだと今まで利用していたアプリの挙動が変わる場合があり現在業務で利用しているPCについて問い合わせ合わせが多い」など、業務アプリケーション対応を含めたWindows 10移行が完全にはなされておらず業務に支障をきたしているという声である。同様に「Windows 7からWindows 10のUIが変わりすぎて不慣れなため、業務効率が低下している」「Windows 10のサービス設計がオンラインを前提にしているため、オフラインサイト、インターネット分離環境での利用に難がある」などユーザーの使い勝手という点でも、一時的かもしれないが非効率な運用になっている企業の混乱が伺えた。
またWindows 10への移行をきっかけに本格的に”働き方改革“に着手したと思われる企業からも混乱の声が挙がった。例えば「ノートPCを使うようになり、サブモニターが必要になった」「CADオペレーターはシンクライアントで働き方改革できない」「Windows 10対応を機会に働き方改革によるPCの社外持ち出しやペーパーレス化を見据え、ノートPCへの切り替えを進めています。しかしマシンの選択の自由はなく、外出の可能性の高い営業には大きく重く、社内作業をする事務系の人間には画面が狭いという不満があります」など、業務内容や職種に適した端末を整備していなかったことにより “非生産的な働き方”を推進することになってしまったケースが多々寄せられており、意外にも同様の悩みを持つ企業は少なくないようだ。
ここまで紹介してきた通り、全体の9割弱と大多数の企業で既に利用されているWindows 10だが、まだまだ業務での活用が実現できている企業は多くないのかもしれない。少子高齢化が進み労働人口が減少傾向にある日本市場では、従業員の生産性向上や優秀な人材確保が経営課題となっているはずなのにだ。そもそもWindows 10は「WaaS(Windows as a Service)」といった新しい概念を掲げ、業務効率化や多様な働き方を実現するため、クラウドを活用し柔軟な環境に対応しやすいような設計がなされている。にもかかわらず現状活用しきれていないのであれば経営層などの役職者が中心となり、ある程度トップダウンで計画実行を推し進めることも今後必要になってくるだろう。
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