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企業の「Windows 10」導入状況と運用の課題(2019年)

大半の企業がWindows 10に移行を完了。だが不満も増加傾向にあるようだ。1年前と比較して企業のWindow 10利用状況の実態はどう変わっただろうか。

» 2019年11月21日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

この記事で分かる情報

  • 企業のWindows 10移行状況
  • Windows 10利用者の不満とその割合の変化
  • Windows 10移行をきっかけに導入を検討するツールは何か
  • Windows 7サポート延長情報への読者の意見

 キーマンズネットは2019年10月17日〜11月7日にわたり「PCの利用状況」に関するアンケートを実施した。全回答者数278人のうち、情報システム部門が37.8%、製造・生産部門が15.1%、営業・販売部門が6.8%、経営者・経営企画部門が5.4%といった内訳であった。

 今回は、アンケートの内、「Windows 10対応状況」「Windows 7サポート延長の認知度」などを中心に紹介する。次週公開予定の後編では企業内でのPCの使われ方の変化やそれに伴う新たな課題を明らかにする予定だ。

 なおグラフ内で使用する合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

大半の企業がWindows 10に移行を完了するも、不満も増加傾向に

 はじめに業務で使用する端末のOSについて尋ねた。2018年調査で既に「Windows 10」が「Windows 7」を上回っていたが、今回の調査ではWindows 10が86.7%と大半を占めた。次いで「Windows 7」が36.7%、「Windows 8/8.1」が10.1%と続いた(図1-1)。この結果を従業員規模別に見るとWindows 10はどの規模においても8割を超える利用率である一方、Windows 7については100人以下の小規模企業での利用率が高く、従業員規模が小さい組織ほど、いまだ利用を続ける傾向が見えた。

 端末のOS移行に伴い、業務アプリケーションのWindows 10移行についても「移行済み」は65.1%と過半数を占めるまで進んでいる。「移行予定/計画中」の29.5%を合わせても94.6%が既に着手している状況で、特に5001人以上の大企業では80.4%と大多数が「移行済み」と回答。従業員規模が大きいほどWindows 10への移行を終えていることが分かった。

 次に、Windows 10を利用しているとした回答者に、移行後の問題点を訪ねたところ、深刻な問題が発生していることが明らかになった。

 順位は2018年の調査と同じだったが、どの項目も問題とする声が増加傾向にある。1位「アップデートの不具合で業務が止まるリスクがある」は49.0%と15ポイント増加、2位「想定した機能が使えなくなる不安がある」46.5%で24.1ポイント増加、3位「アップデートごとの品質テストに工数が掛かる」34.4%と18.8ポイント増加した(図1-2)。利用者が増え、アップデートの経験回数も増えたことから、不具合や運用負担への経験値が増えたことで、問題点へのネガティブな印象が強まっている可能性がある。

図1-1 図1-1 業務で使用している端末のOS
図1-2 図1-2 Windows 10の業務利用上の問題点

Windows 10移行をきっかけに、導入検討“されるツール”と“されないツール”

 前項で「移行済み」「移行予定/計画中」を合わせ、全体の94.6%が着手していた業務アプリケーションのWindows 10移行だが、どのような方法で行うケースが多いのだろうか。調査したところ、既存の業務アプリケーションに提供ベンダーが対応するか、自社で独自対応するかで意見が二分する結果となった。また業務アプリケーションそのものをリプレースしたりSaaSに移行したりといったケースも一定数見受けられ、Windows 10への移行タイミングが自社の業務アプリケーションを再検討するきっかけになっている様子が伺える。

 一方でWindows 10への移行をきっかけとした導入があまり多くないツールもある。IT資産管理や運用管理といった管理系ツールでは、導入済みの既存ツールを継続利用する企業がほとんどだった。今回の回答者の中には、年2回のWindows 10大型アップデートのサポート期間が18カ月と定められていることで、アップデートの管理対応に追われ業務が逼迫している状況を嘆く声もあったが、「WSUS」(Windows Server Update Services)やIT資産管理ツールを使ったユーザープロファイル移行やアップデート管理を新たに活用しようとする意見は若干数にとどまった。

 また小規模な組織の場合、費用対効果の問題から資産管理ツールが導入できないことを課題として挙げる方もいた。PCのライセンスやソフトウェア資産管理は「情報システム部門が一括管理している」割合が全体で73.7%と過半数を占めるものの100人以下の小規模企業においては56.3%と全体平均より大幅に低く、反対に「個人の管理に任されている」26.3%、「総務部門が一括管理している」22.5%などの割合が高い(図2)。この結果からも比較的従業員規模の小さい企業においては専門ITツールを活用した資産管理運用が十分でなく、アップデートを含む従業員利用PCの管理運用が十分でないことが推察される。

図2  図2 PCのライセンスやソフトウェア資産管理の実施状況

Windows 7サポート“3年延長”情報に「遅い」「知らなかった」など不満の声も

 2019年10月、マイクロソフトは2020年1月にサポート終了を予定していたWindows 7において、延長サポートプログラム「Windows 7 Extended Security Update(ESU)」を2023年まで有償で購入できると方針転換を行った。しかも延長サポートを購入できるのは従業員規模やボリュームライセンス契約の有無に関わらず無条件で全企業が対象になるとし、これまでのポリシーからも随分条件が緩和される形となった。一方、調査の結果このリリースについて「知らない」と回答する方が全体の50.3%と半数に上っており、Windows普及率の高い日本市場にもかかわらずいまだ認知度は低いことが分かった(図3)。

 フリーコメントでは既にWindows 10への移行に着手している企業を中心に「もっと早く決めて欲しかった」「告知が遅い」といった声が寄せられ、中には「相当以前から告知しているので有償とはいえ無条件である必要があるのか、とは思う」「移行してしまった弊社は、何だか損をした気分……」などの不満も聞かれた。

 厳密には毎年1台ずつ有償保守契約を締結して購入する必要があり、3年間価格が上がり続けるので「早めに移行するに越したことはない」

などであり、古いOSを使い続けることによるセキュリティリスクや有償サポートコストを考えたとき、いずれ移行するなら早期に対応した方が良いと考える企業が多いというのが現状のようだ。

図3  図3 Windows 7サポート延長の認知度

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