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» 2019年04月02日 08時00分 公開

稟議書100件と決別、PC費用300万円の削減――0円ツールを使った企業のPC改革

属人化したデータベースソフトで500台ものリースPCを管理していたYAMAGATA。煩雑な管理の手間を激減させ、年数百万円ものコスト削減をもたらした「決め手」とは何だったのか?

[白谷輝英]

 PCの管理が煩雑でどこに何があるのかを把握しきれない、PC調達や配布の工数に多くの時間を取られ、本業に専念できない――こうした悩みを抱える企業の情報システム部門は珍しくない。

 印刷業に加え、マニュアルなどのコンテンツ制作業を営むYAMAGATAも同様の課題を抱えていた。全社には約500台のPCがあり、情報システム部門と各部の担当者が手分けして管理をしていたが、煩雑な作業に課題を感じていた。10数年使用してきた管理ツールは、属人化しており、担当者以外は中身を把握できない状況だったという。

 同社は0円で使えるツールでこの状況を脱した。PCの調達コストを年間で300万円ほど削減し、PC利用申請にかかわる稟議書の文化もなくしつつある。どのように実現したのか。

十数年使ったPC管理ツールが属人化

 1906年に創業したYAMAGATAは、印刷会社として事業を拡大した後、マニュアルや取扱説明書などの制作事業にも進出。1980年代以降は、顧客企業の海外進出に対応して外国語版のマニュアル制作も手掛ける。現在の事業の柱は、「印刷」「翻訳とローカライズ」「マニュアルなどのコンテンツづくり」の3つだ。取締役を務める佐々木 誠一氏は、こう語る。

YAMAGATA 佐々木 誠一氏

 「YAMAGATAは『人々に物事を分かりやすく伝える会社』です。最近、力を入れているのは、電子マニュアルの制作事業です。紙の商品カタログや従業員向けマニュアルを電子化してより使いやすい形に変えています。また、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を取り入れたマニュアル作りにも挑戦中で、Microsoft製のヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を使い、自動車や鉄道車両などを修理する際の手順や情報を実際の光景に重ねて見られるようにする取り組みは注目を集めていると感じます」(佐々木氏)

 従業員数は約530人で、社内には500台ほどのPCがある。従業員の半数以上を占める制作スタッフは、高性能なデスクトップを利用する。活用するアプリケーションは、DTPソフトの「FrameMaker」やドローソフトの「Illustrator」といったアドビ製品に加え、翻訳支援ツールなど千差万別だ。

 これらの管理体制として、情報システム課がハードウェアの管理を担当。ソフトウェアのインストール作業などは、各部門の「システム管理担当者」が現場の状況をみて行う体制をとっている。しかし、管理の負担が課題だったと管理部 情報システム課 課長の今村 隆氏は話す。

 「システム管理担当者は各部門に1〜3人、全社で約40人いますが、それぞれが制作業務などの本業を抱えています。彼らの負担を減らすことは以前からの課題でした」(今村氏)

YAMAGATA 今村 隆氏

 管理ツールにも課題があった。YAMAGATAは、PCなどをデータベースソフト「FileMaker Pro」で管理していた。しかし、十数年にわたって総務担当者がカスタマイズを重ねた結果、「どのPCがどのように管理されているのか、現在の状況はどうなのか」が担当者以外は分からない状況に陥っていたという。

 「さらに、以前は各部門が導入したソフト・ハードウェアの情報がExcelシートで寄せられ、担当者がそれをFileMaker Proに手入力していました。連携がうまくいかず、既に廃棄されたPCが台帳に残っていたり、逆に、申請忘れなどで導入されたPCが台帳に記録されなかったりするケースもあったのです」(今村氏)

 同社はこの状況を打破するため、解決策を模索しはじめた。

YAMAGATAで使われていたFileMaker Proの画面。担当者によってカスタマイズが繰り返された結果、本人以外は内容を把握しづらいものになってしまったという。

0円の資産管理ツールと、レンタルの組み合わせにした理由

 幾つかのサービスを見て、同社は横河レンタ・リースが提供するクラウド型PC管理・運用サービス「Simplit Manager」に移行することに決めた。

 無料で活用できることが1つの決め手だった。「多くのIT資産管理ツールは有料である一方、Simplit Managerは無料で活用できます。当初は『何かしらの料金を請求されるのでは?』という疑問もあったのですが、そんなことはありませんでした」(今村氏)

 さらに、Simplit Managerの導入とあわせて、従来リースで調達していたPCをレンタルに切り替えるという決断もした。「当社には、PCの購入やリース・レンタルのプロがいませんし、オフィス機器や消耗品など、いわゆる『間接材購買』を支援する仕組みもありません。情シスの人員は限られており、予算にも限りがあります。社外のプロフェッショナルと相談しながら、自社に合ったPCを調達するのが一番だと考えました」と佐々木氏は振り返る。

 Simplit Managerには「カタログ機能」が搭載されており、管理者がレンタル可能な端末の中から標準機を選んでカタログ化し、従業員がそこから利用したいPCに対して利用申請を行って、管理者が承認、手配するまでのフローをワンストップで行える。このカタログ機能とレンタルの組み合わせで、PCの調達や配布などが効率化されることを期待し、2018年2月に導入を決めた。しかし、従業員の間では従来のPC利用のフローが変わることの戸惑いがあったという。

レンタルに戸惑う従業員、どう説得した?

 そこで佐々木氏は、横河レンタ・リースの担当者とともに社内で説明会を開き、PCをレンタルする仕組みやそのメリットを伝えた。

 「まずは、PCの納期が早くなるということを説明しました。リースの場合、使用中のPCが壊れてしまった際は、従業員の利用申請からPCが届くまで1カ月程度かかるのが普通。しかしレンタルにすれば、翌日にPCが届きます。さらに、リースは一定以上のPC使用期間が定められるのですが、レンタルは任意の契約期間が設定できるので、高性能なマシンに短期間で変えたいというニーズにも対応しやすい。制作部門のメンバーにとって、手元にPCが届くまでのリードタイムは深刻な問題なので、レンタルの方がスピーディーに対応してもらえると聞き、意識が変わった人は多かったようです」(佐々木氏)

 説明会を機に、レンタルの利点が周知され、リースからの切り替えも徐々に進むようになった。さらに、「Simplit Manager経由のPC利用申請は稟議書不要」という仕組みを作ったことで、この流れは決定的なものになった。

 「リース時代は、PCが必要な理由などを記入し、複数の見積もり書を添付した稟議書を提出しなければなりませんでした。しかし、この作業は現場の従業員にとって非常に面倒な作業だったのです。そこで、Simplit Managerのカタログ機能を使って利用申請を行う場合は、稟議書がいらない仕組みとしました」(佐々木氏)

 2018年4月に説明会を実施してから2019年2月までの10カ月間で、全社にある500台のPCのうち、130台がレンタルに切り替わった。従業員の間でもSimplit Managerのカタログ機能による利用申請が浸透するようになったという。

Simplit ManagerのPC利用申請画面

年間およそ300万円を削減、約100通の稟議書がなくなる

 どのような効果が出たのだろうか。まずは、Simplit Managerで資産管理を行うことでリアルタイムにPCの台数や現状が分かるようになり、「各部門のシステム管理担当者や情シスの担当者にとって、管理が楽になりました」と佐々木氏は話す。

 レンタルPCに切り替えたことで、PC調達にかかるコストも大幅に削減できた。標準的なデスクトップPCの年間コストが1台で平均2万3000円ほど削減され、全体で300万円程度のコストが浮く見込みだという。経理担当者の工数も減り、リースのように、物件の金利を交渉し、1台あたりの利率を計算する必要もなくなった。「これまで数人がかりで処理していた仕事をゼロにできたのではないかと感じています」と佐々木氏は話す。

 さらに、Simplit Managerのカタログ機能の活用が広がり、社内全体でPC利用申請や承認のオペレーションが楽になったという。

 「これまでは、PCのリースについて年に100通以上の稟議書がつくられていました。記入する従業員だけでなく、承認する管理職や役員にも負荷がかかっていたのです。今では、その手間がほとんどなくなりました」(今村氏)

 従業員の中には、カタログの標準機にはない高性能マシンを求める人もいるため、稟議書で購入やリースを申請する仕組みも残している。しかし、その種の申請に対しては、「本当に必要なのか」と質問を重ねることで、従業員に「標準機でも間に合う仕事は、標準機で何とかしよう」という意識が根付き、結果的に稟議書による申請はほぼなくなったという。

 同社は今後、Windowsの更新作業や保守なども、横河レンタ・リースに依頼することを検討している。その背景には、PCの導入や保守、管理といった業務を外部のプロに任せ、制作スタッフや経理、情シスが本業に打ち込める体制を築く狙いがある。

 「世の中には、『オペレーションに血が通っていない』と感じさせる会社もあります。仕組みだけ提供されて後はほったらかしになる危険性がないとはいえません。横河レンタ・リースさんは仕組みの提供だけでなくオペレーションにもこだわっていると感じます。例えば、以前PCを包装している返却段ボールの処分に困るという話をしたところ、段ボールは処分し、PC裸引き取り対応をしていただけました。他にも、ハードウェアを運ぶ搬送用具に独自の工夫を施して製品の安全性を守ろうとしています。そうした企業なら、アフターケアやメンテナンスもきちんとしてくれると感じています」(佐々木氏)

PC管理に携わるYAMAGATAの従業員の方々

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