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PCキッティングのツールとアウトソーシングの利用状況(2022年)/前編

企業におけるPCキッティングは、コロナ禍でどのように変化しているのか。前編となる本稿では、PCキッティングの具体的な手法や費やす時間、アウトソースの有無、課題などを明らかにする。

» 2022年06月09日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2022年5月13〜27日にわたり、PCの各種基本設定や、利用者が業務で必要なソフトウェアをインストールし利用できる状態にする「PCキッティング」に関する調査を実施した。

 前編となる本稿では、企業におけるPCキッティングの手法や費やす時間、アウトソースの有無、課題などを明らかにする。調査結果から、PCキッティング作業における理想と現実の大きなギャップが浮かび上がった。

500人限界説? 大企業ではキッティング体制がガラリ

 PCを最適な状態にセットアップし、”すぐに使える状態”にして業務効率を高めるPCキッティング。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるオフィス移転やテレワークシフトなど環境変化が生じるタイミングでは、特に大量のPCキッティングが発生する。

 はじめに、PCキッティングをどのような体制で実施しているのかを聞いた。結果を全体で見ると「全て自社でキッティングしている」が54.7%で過半数となり、次いで「自社とアウトソースの両方でキッティングしている」(27.2%)、「全てのキッティングをアウトソーシングしている」(12.3%)が続く結果となった(図1)。

図1:キッティング体制

 従業員数別でみると、500人を超えた辺りからアウトソーシングサービスを活用する割合が増えており、全て自社で完結させられるかどうかは、この結果を基に考えると500人が一つの基準となりそうだ。

 また、PC1台当たりにかかるキッティング時間を調査したところ、従業員規模によらず「30〜60分」(31.7%)との回答が最も多く、「30分以下」が1割以下であることを鑑みても、1人当たり平均1時間以上かかっていると予想される(図2)。

図2:PC1台当たりのキッティング時間

 例えば500人規模の企業でキッティング作業にあたる人員が2〜3人ほどと仮定した場合、最低でも全員がまるまる1カ月を費やすほどの業務へのインパクトとなる。費用対効果を考えるとアウトソースサービスを活用する選択肢が出てくるのも納得だ。

キッティング方法、3位「プロビジョニング」2位「クローニング」1位は?

 以降で、回答者の勤務先でのキッティング方法と課題を見ていく。また、キッティングの課題をフリーコメントで聞いたところ、キッティングに対する理想と現実の悲しみのギャップが見えてくる。

 調査の結果、キッティング方法は「1台ずつ手作業でクリーンインストール」(55.4%)が最も多く、「クローニングツールの利用」(34.5%)が続いた(図3)。

図3:キッティング方法(複数回答可)

 一定以上の規模の企業では、クローニングツールでマスターPC作成し、PCイメージをコピーしながら個別設定して、効率的に進めているようだ。

 「Windows ADK」を利用した「プロビジョニング」や、Windowsの標準サービスによって実行できる「ベアメタルビルド」、ネットワーク経由でキッティングできる「Windows Autpilot」などは利用割合は低い。しかし、複雑な構築を短時間で実行できるため選択肢に挙がる可能性は高い。

 また、「キッティング方法の変更」を検討している企業に検討中の方法を聞くと、「クローニングツールの活用」(63.2%)や「Windows Autopilot」(42.1%)の割合が高かった(図4)。

図4:検討中のキッティング方法(複数回答可)

 キッティング手法を決める際の選定基準としては「金額コストが低い」(51.6%)や「作業コストが低い」(49.7%)など、コストに関する項目が上位だったのに加え、「特殊なソフトウェアや環境が必要ではない」(29.4%)などが挙げられた(図4)。

 コロナの影響でハイブリッドワークを選択する企業が増えているため、今後は「出社の必要がない」(5.3%)ことも、重要な選択ポイントになる可能性がある(図5)。

図5:キッティング方法を決める際のポイント(複数回答可)

あなたの会社のキッティング課題は? 本当はツラい3つの現状不満

 続いて、採用しているキッティング方法の”変更”予定を聞いたところ、全体で62.3%が「変更しない」と回答した(図6)。

図6:キッティング方法の変更予定

 従業員規模別に見ても全規模帯で過半数を上回っており、キッティング方法を変更しない理由で「今の方法に満足している」(54.3%)が大半を占めた(図7)。

 ただ、「金額コストが見合わない」(31.0%)や「作業コストが見合わない」(23.4%)など、「キッティング方法の選択時に重要視している点」を理由に、他のキッティング方法が合わないと判断しているケースも少なくない。

図7:キッティング方法を変更しない理由(複数回答可)

 最後に、現在のキッティング体制や方法に対する”課題”をフリーコメントで聞いた結果、寄せられた回答は3つに大別できる。

キッティング方法の平準化が難しい

 1つ目は、さまざまな環境に対応してキッティングするため、仕組みの平準化が難しいという課題だ。

 「社内で稼働するPCメーカーや機種が多数あり、キッティングの平準化が困難」や「PCメーカーごとに違ったドライバをダウンロードしたり、サポートソフトに対応したりする必要がある」といった回答が寄せられた。

 中には「半導体不足のため、納期や台数を確保できず、期間が空くことで機種が変わり原盤を作り直す必要がある」など、昨今の社会情勢の影響で思うようにPCが調達できないことで、非効率な運用にならざるを得ないといった声もあった。

コストや人的工数への理解不足

 2つ目は、キッティングのコストや人的工数への理解不足で、ツールの活用やアウトソースの導入が進まないという課題だ。

 「そもそもツールの環境を整備する作業コストが高い」や「作業の人件費に対する上層部の意識が低いため、手作業した方が安いと思われている」「ライセンス契約やユーザー数を考えると、キッティングの仕組みを入れるだけのコストが見合わない」といった現場の悲痛な叫びが聞かれた。

在宅勤務やテレワークに対応できない

 3つ目は、在宅勤務やテレワークに対応できないといった課題で、「在宅従業員のPC交換対応ができない。機種が限定される」や「どうしても出社が必要な作業がある」といった回答が寄せられた。

 多様な働き方を選択できる企業は増えているものの、キッティング方法によってはいまだ出社が必要なケースもあり、非効率なケースもあるようだ。

 一方、「導入時の初期設定はアウトソースしており、その後の異動に伴う設定は社内で対応している。特に課題はない」といったコメントも見られた。

 回答から分かるように、ツールやアウトソーシングサービスの活用が課題解決につながることも少なくないようだ。そこで後編ではキッティングのアウトソース状況に注目し、アウトソースの方法や選定ポイントについて、調査結果を基に考察していく。

 全回答者数は316人で、従業員規模別で見ると101〜1000人が40.5%と最多であった。次いで1001人以上が34.2%、100人以下が25.3%であった。所属部門別では情報システム部門が43.7%、営業/営業企画、販売/販売促進部門が14.2%、製造・生産部門が10.1%、総務・人事部門が7.9%と続く内訳であった。

 なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるのでご了承いただきたい。

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