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「IT介護がつらい……」ヘルプデスク担当者の苦悩と3つの対応策

ヘルプデスク担当者はさまざまな苦悩を抱えがちです。私自身も新システムを導入した際に多くの苦労を経験しました。本稿がヘルプデスクの体制づくりや目標設定、今後のキャリア展望の参考になればと思います。

» 2022年12月09日 07時00分 公開
[久松 剛エンジニアリングマネージメント]

 情シスを取り巻く業務の一つにヘルプデスクがあります。ヘルプデスクの業務量は、情シスメンバーの数や利用しているシステムの種類や数なども関係しますが、従業員のITリテラシーにも依るところが大きい傾向にあります。

 今回はヘルプデスクの業務量が多い企業を念頭に、担当者が抱えがちな苦悩についてお話しします。情シスの方は体制づくりや目標設定の参考に、ヘルプデスクの方は今後のキャリア展望の参考になればと思います。

著者プロフィール:久松 剛(エンジニアリングマネージメント 社長)

 エンジニアリングマネージメントの社長兼「流しのEM」。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学で大学教員を目指した後、ワーキングプアを経て、ネットマーケティングで情シス部長を担当し上場を経験。その後レバレジーズで開発部長やレバテックの技術顧問を担当後、LIGでフィリピン・ベトナム開発拠点EMやPjM、エンジニア採用・組織改善コンサルなどを行う。

 2022年にエンジニアリングマネージメントを設立し、スタートアップやベンチャー、老舗製造業でITエンジニア採用や研修、評価給与制度作成、ブランディングといった組織改善コンサルの他、セミナーなども開催する。

Twitter : @makaibito


「ヘルプデスクは感情の捨て場じゃない」担当者を巡る3つの課題

 私自身も新システムを導入した際にヘルプデスクの苦労を経験しました。ヘルプデスクには露骨に感情をぶつける人は少なからず存在したものです。情シス部門の配下にヘルプデスク担当者やヘルプデスク機能を設けると、次の3つの課題に遭遇する傾向にあります。

業務量管理

 ヘルプデスクの業務量を左右するものは主に下記の2つです。

  • 新入社員の数とPC1台当たりセットアップやキッティングの時間
  • 従業員の質問への対応時間

 本来セットアップやキッティングは外注したり自動化したりすることである程度工数を削減できます。しかし時折、「手作業でセットアップし、長時間労働することがやりがいになっている方」にお会いします。新卒採用人数や中途採用が多い企業であればかなりの業務量となります。

 質問回答時間は従業員のITリテラシーに大きく依存します。エラーが起きた際にある程度自己対応できるかどうかだけでなく、新システムを導入した際のフォロー時間や頻度も考慮する必要があります。

 ITリテラシーが低いと俗に言う「IT介護」状態に陥ります。マニュアルを作ったり操作動画を作ったりしても見てもらえず、理解しようとすらされないことも多々あります。「困ったらヘルプデスクを呼べばよい」と、自己成長を放棄した従業員は「IT介護」に陥る傾向があります。

 「IT介護」の守備範囲には「業務ツールを変えたくない抵抗勢力との争い」も含まれます。この勢力に遭遇すると、サポートコストが新旧環境の両方で発生するので対応時間が長くなります。私自身「Microsoft Office」(現在は「Microsoft 365」)を導入してメールサービスを「Microsoft Outlook」に移行した際、従来利用していたPOPと「Becky! Internet Mail」の構成から移行を拒否する一団に遭いました。

メンタリング

 情シスへのキャリアチェンジを志す方の一定数は、クライアントワークのサーバエンジニアなどに疲れ、「自社のある見知った相手の世話を焼いて穏やかに暮らしたい」という旨の理由を話されます。

 この期待が大幅に裏切られるのがヘルプデスク業務です。ヘルプデスクが呼ばれるのは何かトラブルが起きた時であり、不機嫌な従業員の対応をすることになります。私も経験がありますが、社内の従業員は顧客や他社ではないため、イライラを露骨にぶつけても構わないという方も少なからず存在します。

 結果的に「PCを壊した本人が他責にして怒っているのを受け止める」ようなことにつながり、非常にストレスがたまります。過去に元小売り接客業の方にヘルプデスクを依頼したことがあったのですが、実に見事な対応でした。こうした特殊な経歴で無い限りはメンタリングが不可欠です。

 世間的には、情シス担当者のファーストステップとしてヘルプデスクを経験させる傾向があります。しかし、集中的に負の感情を受け止める立ち位置であることから、ジュニア層のアサインやキャリアチェンジの第一歩には全くお勧めできません。

評価

 正社員としてヘルプデスクを自社に招いた場合、問題になるのが評価軸です。ユーザーからの問い合わせで一日が終わるような環境であれば、毎日の問い合わせをさばくことで手いっぱいになるため、本人の成長を狙った目標設定などは難しいものです。

 問い合わせ件数が少なくても、キッティングのようなマンパワーが求められることが主業務であれば、問い合わせ対応と同様に成長につながる目標設定は難しいのです。

ヘルプデスク問題の前向きな対応策

 ここまで述べてきたように、ヘルプデスクは業務量やメンタル、評価や待遇面でも不利になりやすい傾向にあります。こうした課題への対応策をお話します。

仕組み、システムで解決

 情シスやヘルプデスクが対応工数を取られるポイントを仕組みやシステムで解消します。例えば自動化による工数削減が挙げられます。自動化前後の作業時間の短縮などを評価につなげられます。

 では、自動化に取り組むための工数をどのように捻出すればよいでしょうか。それには次の2点が挙げられます。

従業員教育によるリテラシーの向上

 新しく導入するシステムの浸透度合いや問い合わせ件数の減少を評価する際、サポートからユーザー教育にシフトするという発想は大切です。

 ある医療機関の情シスの方は、全体教育は非効率的だと考え、三桁の医療従事者の予定を個別に抑えてレクチャーすることで、院内情報システムへの「Slack」導入を達成されていました。

 個別対応すると遠慮無く質問できる上、自分事化できることから、「時間はかかったもののかえってSlackの速やかな浸透につながった」とのことです。

専業のSESを契約する

 正社員にヘルプデスクを任せずSES(System Engineering Service)で代替するというものです。実際に私も契約したことがあるのですが幾つかの点において非常に効果的でした。

 1つは、ヘルプデスクが自社の従業員ではないため、依頼者に多少の遠慮が発生することです。業務委託先であるため、自社の従業員に当たり散らしていたような言動が減少しました。

 もう一つは評価です。自社に評価の義務はないので、目標設定をひねり出すようなことは不要です。あるとすれば貢献度合いに応じて単価を調整するくらいです。

ヘルプデスクのキャリアパス

 DX(デジタルトランスフォーメーション)はエンジニア採用によって達成することはなければ、システム導入によって達成されることもありません。最終的にはシステムや仕組みを利用する全従業員への教育に帰着します。理想を言うと、ヘルプデスクに相当する職種は社内から無くすのがDXのゴールでしょう。

 そのためにもヘルプデスクメンバーの意識を高めながら、ただ問い合わせを消化するだけの現状から脱却する一歩を踏み出せるような成長を意識した目標を設定する必要があります。

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