企業のデジタルシフトが進む中、従業員は所属部署やバックグラウンドに関係なくITと密接に関わりながら業務を進めることが求められている。だが、従業員のITリテラシーやデジタルスキルが十分であるとは言えないようだ。
キーマンズネット編集部は2022年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「従業員コミュニケーション」「Windows 11」「オフィス」「デジタルスキル」「人事制度」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2021年11月10日〜12月11日、有効回答数678件)。企業における2022年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。「デジタルスキル」だ。
DX(デジタルトランスフォーメーション)叫ばれ企業のデジタルシフトが進む中、従業員は所属部署やバックグラウンドに関係なくITと密接に関わりながら業務を進めることが求められている。近年は、RPA(Robotic Process Automation)や、APIで「画像認識」「OCR(光学文字認識)」「音声認識」の機能を利用できる構築済みAIといった事業部門の利用を想定するツールも登場し、それらを使いこなすための人材育成に力を入れる企業も現れた。
従業員のデジタルスキルは十分なのだろうか。アンケート調査の結果を基に現状や取り組みを俯瞰する。
まずはじめに、回答者が自社の従業員のデジタルスキルやITリテラシーをどう認識しているかを探るために「勤務先での従業員のITリテラシーは十分であるか」を尋ねたところ、「何とも言えない」(30.1%)が最も多かった。ITリテラシーが十分ではないと感じる回答者は、「あまりそう思わない」(25.2%)、「全くそう思わない」(12.5%)を合わせて37.7%。逆にITリテラシーに一定の自信がる企業は「ややそう思う」(24.8%)、「とてもそう思う」(7.4%)を合わせて32.2%だった(図1)。
「デジタルスキル/ITリテラシーが十分でない」と答える回答者の方が、十分だとする回答者よりも多いことが分かる。
回答者は従業員のどのような行動に「デジタルスキル/ITリテラシーが十分でない」と感じているのだろうか。先の質問への回答理由をフリーコメントで聞いたところ、「GitHubにPW投稿」「会社のサーバに個人の音楽データを保存」といったエピソードが挙がり、コメントの端々から回答者の呆れや悲哀が見て取れた。一部を抜粋して紹介する。
ここで挙げた例は一部にすぎないが、中には「そのようなことが分からなければPCを触らないで欲しいと思うくらいのレベルの質問が寄せられる」といった悲痛な叫びもあった。
一方で、リテラシーが十分であるとした回答者は、その理由について「IT企業なのでそれなりのリテラシーはある」「教育体制が充実している」と回答した。
企業のITリテラシー教育の現在地はどのようだろうか。「勤務先で従業員のITリテラシーの向上に向けて何か施策を実施しているか」を尋ねたところ、図2の結果が得られた。「特に何もしていない」(30.5%)、「部門や個人の裁量に任されている」(30.5%)、が同率でトップだった。
先に述べたフリーコメントの中には「通常業務に追われており、研修などもできず専任者もいないので、(ITリテラシーの)向上を求めることが困難だと感じている」といった意見もあり、人的リソースがそれほど潤沢でない企業が教育プログラムを実施することの難しさが見て取れる。
一方で、「コロナ禍以前から体系立った研修/教育プログラムがある」は27.4%、「資格取得支援策や評価への反映をしている」は13.4%、「コロナ禍以降、新規に研修/教育プログラムを作った」は8.0%の回答率となり、ITリテラシーやデジタルスキルの向上に取り組む企業もあるようだ。
近年は、「現場の業務を知る人がITを活用する」ことの意義が叫ばれ、事業部門の利用を想定するツールも登場している。関連して事業部門を対象に新しいデジタルスキル(データ分析やAI活用、自動化ツール開発/利用)の学習プログラムを提供しているか」を聞いたところ、回答者の27.7%が何らかの学習プログラムを提供していた。従業員規模が大きいほど、何らかの学習プログラムを用意している傾向にあるようだ。
具体的な学習プログラムの内容については、RPAやBIツールの操作方法に関する教育プログラムや、データサイエンス、クラウド、IoTの素養を学ぶプログラム、DX人材育成のためのプログラムなどが挙げられた。中には、Python講座といったAI関連のプログラムを用意している企業もあった。
実施方法はオンサイトの研修とe-learningに分かれており、社内独自でプログラムを作成する他、社外の学習支援サービスを利用する場合もあるようだ。RPAなどの導入プロジェクトによるOJTを実施しているという回答もあった。図4はそうした事業部門を対象にしたデジタルスキルの学習プログラムによる効果を示したものだ。「事業部門の従業員がプログラムで学習するツールについて一定のスキルを得られた」(45.7%)、「現場の従業員が業務の課題を認識し、改善の方法を模索するようになった」(31.9%)が上位に挙がった。
「何らかのデジタルスキルの学習プログラムを提供していない」とした回答者を対象にどのようなプログラムが欲しいかと聞いた質問においては、「Officeやメールの操作方法」といった業務アプリの操作方法から、Pythonの基礎知識といったAI関連のスキルまでさまざまな領域の回答が寄せられ、「デジタルスキル」と一口に言っても企業によってその認識が異なることが伺えた。
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