機器を液体につけて冷却する富士通の「液浸冷却技術」は、データセンターの電力消費を40%削減する他、機器設置スペースを50パーセント削減し、ファンを回さない静かなデータセンターを実現する。
企業のデジタル変革が進めば、AIをはじめとする最新技術の活用も進むだろう。特に大量のデータを学習していくようなAIが普及し、集約率の高い計算機資源をフルに利用するようになれば、データセンターでは今まで以上に熱対策が大きな問題となり得る。
従来では、データセンターのIT機器を冷やすために大容量の空調設備を設置していたが、これは膨大な電力を消費する。近年の電気料金の値上げも手伝って、エネルギーコストの増加にあえぐ企業も多いだろう。大型の空調設備は、大きなスペースを必要とするため、機器設置スペースの問題も浮上する。そうした設備が発する騒音も無視できない。
AI技術の進歩に伴う、データセンターのエネルギーコスト増大や空調設備によってかさむスペース、騒音などの課題をどのように解決すればよいのか。富士通が開発した「液浸冷却技術」は、こうした課題に対する1つの解決策となるかもしれない。本稿では、この液浸冷却技術の詳細を紹介していく。
液浸冷却技術とは、冷媒で満たした液浸槽の中にサーバ、ストレージ、ネットワークなどのIT機器を浸し、冷媒を冷却、循環させることで機器が発する熱を処理する方法である。
装置は図1のように、機器の入った液浸槽と、熱交換機やポンプ、監視モジュールで構成されたCDU(Coolant Distribution Unit)、冷却水から成り、冷媒から冷却水に熱を逃がしている。
ここで「IT機器を液体につけても、壊れないの?」という疑問が浮かぶ方もいるだろう。筆者もこの冷却装置を初めて見た時に、水のような無色透明の液体の中で、ショートもせずに動作するIT機器を見て不思議な気持ちになった。
「水のよう」と言ったが、これはフッ素系不活性液体(フロリナート)と呼ばれる特殊な液体だ。絶縁性があるために、液の中でも機器のコネクターの抜き差しができる。フロリナートは粘度が低く、切れが早いため、液体を手で触るとさらりとした感触だ。蒸発しにくいために、頻繁な取り換えも不要である。富士通によれば人体や環境に悪影響はないという。
この特殊な液体の中では通常のサーバもショートせずに稼働する。収納されている機器は、ファンが取り外されているという点を除けば、一般的なものと相違ない。ファンを排除すれば専用機器を用意することなく、普段使っているサーバ機器をそのまま使用することも可能だ。
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