今ある仕事の47%がAIに奪われる時代に、われわれは何をなすべきか。日本有数のAIベンチャーで法務や事業開発を担ってきた人物が語る、将来AIに仕事を奪われる側の人間がこの先生きのこる方法とは。
機械学習やデータマイニングあるいはMR(複合現実)の技術が登場したことで、単純労働だけでなく、一般道での輸送トラックの運転操作や法務文書作成といった業務の多くもコンピュータを使った情報技術で代替できるようになることが見込まれている。
「2010年の米国の雇用を構成する職業のうち、約47%の仕事が『コンピュータによって代替されるリスクが高い』」という論文が発表されたのは、2013年のこと。日本国内でも「AIが雇用を奪うのではないか」と大いに注目を集めた。
「私はAIに仕事を奪われる47%の側の人間です」――こんな宣言から講演を始めたのは、メルカリの弁護士 齊藤友紀氏だ。
齊藤氏はもともと、AIベンチャーであるプリファードネットワークスで法務や事業開発を担当してきた経歴を持つ。現在はメルカリで企業法務および事業開発などを担う他、経済産業省「AI・データ契約ガイドライン」策定委員会にも名を連ねる。
日本ではまだ「特定の法人が持つデータを利用して構築したデータモデルは誰のものか、データ提供者か、モデル構築者か」といったAI活用の成果物の法的な扱いに関するルールが定まっていない。今はAIを活用した新規の価値創出を目指して外部の開発者や企業にデータを提供して開発を依頼する場合や、AI技術を持つ企業がAI活用を提案する場合に、このリスクを各自で回避する必要がある。契約時にこの問題を正しく評価し、判断するには、国内法の知識に加えて、先行する海外の動向や事例、最新のAIとデータ活用の技術詳細への理解が欠かせない。全ての企業がこうしたスキルを持つわけではないため、企業がリスクなくAIを活用できるようにすることがガイドラインの目的だ。
本講は「第6回 JAPAN LEGAL TECHNOLOGY CONFERENCE」(AOSリーガルテック、レクシスネクシス・ジャパン主催、2018年11月28日)の講演「AIと法務の現在と未来」を基に編集部で再編して掲載した。
AI技術と法務の両方に深い知見のある齊藤氏は、自ら「AIに仕事を奪われる47%の側」に位置すると宣言する。そして「この流れは止めようがない」とも語る。
続けて齊藤氏は別の調査を引き、180万の職が消える一方で「230万の新たな職が生まれる」という予測を示した(ガートナー調査、2017年)。先の論文と併せて読めば「新しい技術に適用しない職業人は淘汰(とうた)される。しかし、新たに生まれる労働に適応できれば既存の業務が消滅しても何ら問題はない」と断言する。
しかし、AIが人類の目の代わりになり、音を読むことすら可能になった今、新たに生まれる労働などあるのだろうか。
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