メルカリ弁護士が語った「AIにシゴトを奪われる人間」の生存戦略(2/3 ページ)
「とても、とても、愚かなAI」は中華そば屋をスルーできない
齊藤氏は技術革新がもたらした人間の不安は今に始まったことではない、として、産業革命時代の歴史を振り返る。「ラッダイト運動の頃から人類は技術革新に大いに抵抗してきた。だが、それでも技術は発展した。そして社会はそれを受容した。今われわれが取るべき戦略はこの事実を受け止め、『生存に必要なスキルとマインドの再編』を目指すこと」(齊藤氏)
齊藤氏がいうスキルとマインドの再編とはいったい何を指すのだろうか。
「AIが仕事を奪う」が現実のものになるとして、現段階で「AI」という技術がどういったものかを理解する人はどれほどいるだろうか。
そもそもAIの定義は非常に曖昧で、発言者によっても文脈によっても変わる。齊藤氏は「どうもここのところ、AIが万能な夢の道具のように期待されがちで危険な状況。人工“知能”には至っていないことを十分に理解し、冷静に状況判断して欲しい」と、Google AIのAndrew Moore氏がわざわざ「AI is Currently very very Stupid(AIは今のところとてもとても愚か)」と語った例を挙げて警鐘を鳴らす。
「AIに過度な期待を寄せる人々は『鉄腕アトム』のような自律思考型の知性を想像するが、今のところ全くのフィクションでしかない。自律思考型AIは現在のAIとは技術的連続性がないところから生まれる技術だと考えられる。われわれが今考えるべきは今ある『愚かなAI』をどう利用するか、だけでよい」(齊藤氏)
現在もてはやされているAI技術はパターン認識が得意で優れた目と耳を持つが、人間的なコンテクスト理解は不得手だ。齊藤氏は現在のAIの「愚かさ」として、ある画像認識エンジンが「中華そばチェーン店の看板と一時停止の交通標識を誤検知してしまう」という問題が話題になったことを例に挙げる。看板以外の店舗の情報などを総合的に判断できる人間にとって見ればごくごく簡単な問題も、パターンや関連情報を理解できない愚かなAIには難問になってしまう。
法のプロの業務がコモディティ化する日、愚かなAIに任せるべき業務は何か、AI弁護士サービスの実例から
では、法に関わる人材が「愚かなAI」を活用するにはどうすればよいだろうか。ポイントは言語の障壁、コモディティ化する業務の見極めだ。
現在のAIはさまざまな場面で発せられる日本語の「ばか」という言葉に含まれるニュアンスを理解できない。特に言外のニュアンスを共感によって察するコミュニケーションが多い日本語は難度が高いく、AIが理解するには相当の時間がかかると考えられている。
齊藤氏は現在注目を集めるLegal Techサービスを例に、愚かなAIの使いどころのヒントを示す。
愚かなAIを使いこなして新事業を創出する「DoNotPay」、弁護士の仕事を削減する「LawGeex」
形態素解析という文章を要素に分解して分析する技術と、特定のデータベース探索を使って単語同士の関連性を評価付ける仕組みを持つ「IBM Watson」を生かしたLegal Techサービスは既に登場している。例えばAI弁護士サービスとも呼ばれる「DoNotPay」がそれだ。DoNotPayは、チャットbotを使い、法の知識が乏しい一般人が法的に有効な異議申し立てなどの手続きを行えるようにするサービスを展開している。言語が持つ複雑なニュアンスを排除して運用できるよう、対話内容の範囲を制限した上で、やりとりそのものは自然な対話として成立するように工夫している。
イスラエルのスタートアップ企業「LawGeex」は、AIを使って契約文書のレビューを自動化するソリューションを展開する企業として注目を集める。画一的なレビューだけでなく、利用者ごとのレビューポリシーを学習して結果に反映するといった、賢さも備える。LawGeexが弁護士20人とLawGeexのAIとでNDA文書のレビュー対決を行ったテストでは、5本のNDA契約書レビューにおいて人間は92分かかったところをAIは26秒でこなしたという成果も出ている(正答率94%)。
「この結果から定型的な書類のファーストレビューはもはやAIでもよい、という状況が生まれつつある」(齊藤氏)
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