AI導入は6割、でも8割超が「チャット止まり」 業務自動化まで進まない原因は?
「AIを導入したが、チャットに使うだけ」。そんな中小企業は少なくない。クラウドワークスの調査では、AI利用企業の8割超がチャット利用にとどまった。業務自動化を阻む原因は何か。
導入したAIを業務システムと連携させ、自動化まで進められない。今、そこに悩む企業が多いようだ。AIを使える環境を用意するだけでは、業務そのものを変えるところまでたどり着くのは難しい。
特に中小企業では、AI活用を推進する人材や時間の不足がボトルネックになっている。AIに詳しい推進リーダーがいない、費用対効果が分からない、自社の業務にどう当てはめればいいか分からない。企業の課題はAI導入の次のフェーズに移っている。
クラウドワークスが2026年9月に発表した「中小企業のAI活用レベル調査」からは、こうした実態が見えてきた。
AIを使う企業は約6割 でも8割超が「チャット止まり」
クラウドワークスは、従業員5~299人の企業を対象にAIの導入状況や推進人材の確保状況を調査した。経営者と役員、部長クラスを対象とし、スクリーニング調査は4172人、本調査は576人が回答した。
AI活用の段階を、未導入から個人利用、全社的なチャット利用、業務の一部自動化、複数AIによる業務全体の最適化まで6段階に分類した。その結果、AIを利用している企業は59.6%だった。
ただし、利用企業2485社のうち80.9%は、個人利用か、全社導入後もチャット機能の利用にとどまる段階だった。AIと業務システムを連携させ、一部業務を自動化している企業は19.1%にとどまった。
AIを「使っている」企業と、AIによって「業務を変えている」企業との間には、まだ大きな差がある。
なぜAIは「チャット止まり」になるのか?
AI導入のボトルネックについて、チャット利用にとどまる企業と、業務自動化まで進んだ企業を比較すると、チャット利用にとどまる企業ほど複数の課題を抱えていた。
最も差が大きいのが、AIに詳しい推進リーダーの不足だ。
「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した割合は、チャット利用にとどまる企業で74.5%、業務自動化まで進んだ企業で54.0%。20.5ポイントの差が開いた。「費用や費用対効果が不透明」は70.0%対51.7%、「自社へ事例を当てはめにくい」は56.5%対39.8%だった。
AIツールそのものを導入することよりも、AIを自社の業務にどう組み込み、誰が推進するのかという部分で差が生まれている。
「AI推進者が十分いる」企業は11.1%
人材不足は、AI活用の段階が進んでも解消されていない。
部署や会社単位でAI導入を主導する推進者について、「十分な人員を確保している」と回答した企業は全体の11.1%だった。
チャット利用段階では5.5%、業務自動化まで進んだ企業でも26.1%にとどまる。一方、「推進者はいるが人員不足」は34.9%、「推進者はいない」は50.5%だった。つまり、AIによる業務自動化を進めている企業でも、AI活用を担う人材を十分に確保できているとは限らないということだ。
では、不足するAI人材をどう確保するのか。
推進者の確保を検討した経験がある企業に聞くと、採用では47.5%、育成では45.1%、外注では48.3%が「中断」または「未着手」だった。採用では募集要件に合う人材が見つからないこと、育成では学習内容や社内で指導できる人材が不足していることが壁になった。
外注についても、コストや委託先の選定・契約管理に加え、短期間の依頼を引き受ける企業が少ないことなどが障壁となっている。AI人材が不足しているから外部に頼る、という単純な構図にもなっていない。
自動化より難しい「業務の見極め」と「社内展開」
AI導入の各工程を自社人員だけで対応できるかを尋ねた設問では、「自動化する業務の見極め」は40.3%、「手順の整理・標準化」は37.7%、「AI・ITツールの選定」は39.2%だった。一方、「ツールの連携設定」は21.7%、「不具合の調査・修復」は17.7%、「社内展開・教育・定着」は23.8%にとどまった。
AIを導入する際には、単にツールを選ぶだけでなく、どの業務を自動化するのか、業務手順をどう整理するのか、導入後に社員へどう定着させるのかといった工程がある。特に連携設定や障害対応、社内展開では、自社だけで対応できる企業が少ない。
自社だけで対応できない理由としては、「通常業務が優先で時間がない」が45.5%、「知識・スキルのある人材がいない」が41.7%、「判断・確認できる人がいない」が24.4%だった。AI活用を進める以前に、AI導入を進めるための人材と時間そのものが不足している状況が見える。
業務自動化まで進んだ企業ほど「外部AI人材」を活用
一方で、外部人材を活用している企業には一定の傾向が見られた。
外部AI人材を既に活用している企業は、チャット利用にとどまる企業では7.0%だったのに対し、業務自動化まで進んだ企業では26.1%だった。業務自動化まで進んだ企業の方が、外部AI人材を活用している割合が高く、チャット利用にとどまる企業の約3.7倍となった。
AI活用のレベルが上がるほど、社内だけで全てを担うのではなく、外部の知識やスキルを組み合わせる企業が増えている。
「AIを入れる」から「業務を変える」へ
今回の調査で浮かぶのは、AI導入の有無だけでは見えない企業間の差だ。
AIを利用している企業は59.6%に達する一方で、その8割超は個人利用やチャット利用にとどまる。業務システムとの連携や自動化まで進めるには、AIツールの導入だけでなく、業務の見極め、手順の整理、人材確保、社内展開など複数の工程を乗り越える必要がある。しかも、業務自動化まで進んだ企業でも、AI推進者を十分に確保できているのは26.1%だ。
クラウドワークスは調査コメントで、AIツールの導入や既存システムとの連携を社内だけで抱え込まず、人材と時間が不足する工程を業務ごとに外部へ任せる方法を提示する。
生成AIの導入が広がる中、次の課題は「AIを導入するか」ではなく、「誰が、どの業務に、どう組み込むか」へ移りつつある。中小企業のAI活用では、ツール選びだけでなく、導入後の業務設計や人材・時間をどう確保するかが、活用レベルを左右するポイントになりそうだ。
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