AI議事録は「文字起こし」で選ばない 表で分かる「Notta/AutoMemo/AiNote」の特性
AI議事録ツールの選択肢が増え、今度は「どれを選べばよいか分からない」という迷いが生まれている。製品導入の専門家が、「Notta」「AutoMemo」「LINE WORKS AiNote」の3製品を機能・価格・管理性の3軸で比較した。
AI議事録ツールの選択肢が急速に増えている。会議の録音や文字起こし、要約といった基本機能は多くの製品が備えているが、導入の際は機能数や料金だけでなく、「どのような場面で使うのか」「何人で、どれくらい利用するのか」「どのような付加機能が必要か」「管理・セキュリティ要件を満たせるか」といった観点から、自社に適した製品を絞り込む必要がある。
今回は、「Notta」「LINE WORKS AiNote」(以下、AiNote)「AutoMemo」の3製品を取り上げ、大塚商会の櫻井綾香氏(MMオペレーション部 クラウドグループ クラウドソリューション課)による比較を基に、それぞれの特徴や違いを整理する。
「多機能」「安い」だけでは決められない AI議事録の選び方
3製品の特徴を大きく分けると、多機能さを重視するならNotta、操作の簡潔さならAutoMemo、話者分離や管理性ならAiNoteという違いがある。ただし、これはあくまで大まかな傾向だ。実際の製品選定では、利用人数や利用時間、必要な機能、管理・セキュリティ要件などを踏まえて、自社に適した製品を見極める必要がある。
では、AI議事録ツールはどのような観点で比較すればよいのか。櫻井氏は、評価軸を「機能」「価格」「管理性」の3つに整理する。単に「機能が多い」「価格が安い」といった基準ではなく、自社の使い方に対して3つのバランスが取れているかを見ることが重要だという。
具体的には、「利用シーン」「利用人数」「月間の利用時間」「必要な機能」「管理・セキュリティ要件」の5点を整理しておきたい。少人数で会議を記録するだけなら高度な管理機能は不要だが、全社利用ではアカウント・権限管理、SSO、操作ログなどが選定条件になる。この5点を踏まえて各製品を比較すれば、自社に適したサービスを絞り込みやすくなる。
文字起こしはほぼ互角、では何で選ぶ?
まず機能面を見ると、3製品ともAI議事録としての基本機能は一通り備えている。スマートフォン・PCへの対応や音声録音、音声ファイルからの文字起こし、文字起こしテキストの編集、話者分離、AIによる要約、Web会議連携、データのダウンロードなどだ。Web会議連携では、「Microsoft Teams」や「Zoom Meetings」などの会議を録音し、文字起こしや要約につなげられる。録音用のbotが会議に参加する方式が一般的だ。
つまり、「会議を録音する」「文字起こしする」「AIで要約して議事録を作る」という基本的な用途であれば、3製品はいずれも候補になる。櫻井氏も、文字起こしの精度については「製品間で大きな差はない印象」としている。そのため、製品選定で大きく差が出るのは基本機能の有無ではなく、付加機能だ。製品別の付加機能を以下の図にまとめ、整理した。
Notta|画面録画・リアルタイム文字起こし・翻訳に唯一対応
オンライン会議の画面録画と、リアルタイム文字起こし、リアルタイム翻訳は、いずれも3製品でNottaだけが対応する。リアルタイム文字起こしは発言と同時に字幕のように文字を表示し、オプション購入は要らない。翻訳だけはオプション購入が前提で、1か国語翻訳と2か国語相互翻訳の2方式がある。
要約テンプレートの幅も広い。商談や週次会議、面接など用途別に30種類以上を標準搭載し、独自テンプレートを作成できるのも3製品でNottaだけだ。オフライン環境での利用は専用機器の購入が前提となる。
AutoMemo|付加機能を絞り、専用レコーダーで補う
Nottaとは逆に、AutoMemoは操作の簡潔さが大きな特徴だ。録音ボタンを押して録音し、後からAIが文字起こしと要約を実行する流れに絞ったサービスといえる。
他2製品と比較して充実しているのが周辺機器だ。専用ボイスレコーダー「オートメモ R」はバッテリーが1カ月以上持続し、「オートメモ S」はタッチパネルとフルカラーディスプレイでその場で結果を読める。いずれも電波の届かない環境で録音できる。大会議室向けには、話者を自動で追う360度カメラ付きマイクスピーカー「ミーティングオウル プロ」もある。
AiNote|話者分離と業界用語対応で認識精度を詰める
AiNoteの大きな差別化点は、話者分離の精度だ。話者分離の国際コンペティション「DIHARD3(2021年)」で世界3位を受賞している。いくら文字起こしの精度が高くても、誰の発言なのかが曖昧だと、議事録としての価値が下がってしまう。話者分離の精度が高ければ、参加人数が多い会議や、決定事項と担当者を正確に残したい会議でも安心だ。
また、人名や固有名詞、専門用語を登録して認識率を上げる単語登録に対応する。業種ごとの専門用語が登録済みのモデルを使える業界用語対応は、3製品で唯一だ。一方、リアルタイム系の機能や画面録画には対応しない。
課金方式はユーザー課金とテナント課金
価格については、どれが安いと一概には言い切れない。金額そのものより先に、何を基準に料金が発生するのかを見る必要がある。
課金方式は2つに分かれる。ユーザー課金は、10人で使うなら10個の購入が必要になる方式だ。一方でテナント課金は、何人で使っても購入数量は1つで、与えられた文字起こし時間を全員で分け合う方式となっている。
・Notta:ユーザー課金。ビジネスプランは文字起こし時間が無制限だが、契約は3~50ライセンス。51人以上での利用や、翻訳などのオプション付与はエンタープライズプランでの個別相談になる。
・AutoMemo:ユーザー課金の「シングル100時間」と、テナント課金の「シェア500時間」「シェア1000時間」の両方を用意する。
・AiNote:全プランがテナント課金。利用人数に関係なく、会社全体で月に何時間使うかが基準になる。
利用時間が人によってばらつく組織では、ユーザー課金だと時間を余らせやすく、テナント課金のほうが使い切りやすい。逆に各人の利用時間がほぼ均等なら、人数分の時間を積み上げるユーザー課金のほうが分かりやすい。
1時間単価で入れ替わる順位 4つの利用シーンの試算
櫻井氏は利用人数と利用時間の組み合わせを4パターンに分け、それぞれ最も安くなる1時間あたりの単価を示した。
人数が多いほど、時間が長いほど有利という単純な話ではない。逆転が起きる理由は、課金方式の違いにある。文字起こし時間が無制限のNottaは、ライセンス単価を利用時間で割る形になるため、1人当たりの利用時間が延びるほど単価が下がる。50人が各自週5回使う条件で最安になるのはそのためで、20人が週1~2回にとどまる条件で最も高くなるのは、その裏返しだ。
テナント課金のAiNoteは、購入した時間を全員で分け合うため、利用人数が増えても単価は上がらない。ユーザー課金のAutoMemoは100時間の枠を人数分積み上げる形で、条件が変わっても単価はおおむね198円前後から動かない。多数の利用者で一定の時間を共有するならAiNote、必要な録音時間を素直に積み上げたいならAutoMemoが検討しやすい。
全社展開で効いてくる管理機能 AutoMemoに管理者機能はなし
3つ目の比較軸は管理・セキュリティだ。少人数のうちは表面化しないが、部署単位や全社に広げるとその重要度は上がる。ここで言う管理者機能は、アカウント管理や権限管理、パスワードの強制変更、アプリの遠隔ロック、組織図の作成、データ削除などを指す。対応範囲はサービスごとに異なる。
・AutoMemo:管理者機能、操作ログ、IPアドレス制限、SSOのいずれも非対応。アカウントは利用者それぞれの個人管理となる
・Notta:管理者機能とIPアドレス制限は標準で対応。操作ログとSSOは、対象プランの契約またはオプション購入で対応する
・AiNote:4項目全てで標準対応する(オプションなし、追加料金なし)
もう1つの確認項目が「データの学習利用オフ」だ。会議の音声や文字起こし結果、利用ログをAIモデルの学習や検証に使うかどうかを指す。学習利用を標準でオフにできるのはAutoMemoとAiNoteで、Nottaはエンタープライズプラン契約にオプションを付けた場合のみ対応する。機密情報や個人情報を扱う会議では、社内規定との突き合わせが必要だ。
管理機能も、項目が多いほど良いわけではない。少人数での利用ならシンプルなほうが運用しやすい。ただし「入退社の際のアカウント管理や監査対応が必要であれば、管理機能が不足すると運用が難しくなってしまいます」と櫻井氏は言い添えた。なお大塚商会自身も、エンジニア部門での評価を経てAiNoteを社内標準に採用しており、事例はLINE WORKSのWebサイトで公開されている。
導入前に確認したい5つの問い 価格比較はその後
櫻井氏は最後に、比較を自社の条件に落とし込む5つの確認項目を挙げた。
1.どのような場面で使うか
2.何人で利用するか
3.月に何時間程度使うか
4.絶対に必要な機能は何か
5.管理・セキュリティ要件はあるか
5項目を整理し、その条件で各製品の価格を比べる。これが失敗しにくい順序だと櫻井氏は説明した。
3製品の得意分野は、明確に分かれている。機能の幅と時間無制限を求めるならNotta、操作の簡潔さと管理負担の小ささを求めるならAutoMemo、話者分離の精度と全社運用を求めるならAiNote。既にLINE WORKSを使っている組織であれば、同じアカウントで使えるAiNoteは選びやすい。「一番多機能」でも「一番高精度」でも「一番安い」でもなく、自社の使い方にちょうどいい製品を選ぶ。それが失敗しない選び方だという。
本稿は、2026年9月8日~9日に開催された「ビジネスソリューションフェア2026秋 in 大宮」(主催:大塚商会)の講演「失敗しない! AI議事録ツールの選び方」における内容を基に、編集部で再構成した。
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