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サーバは水没させる時代、液浸冷却技術で消費電力4割減(2/2 ページ)

» 2017年05月25日 10時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]
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省エネ、省スペース、騒音撃退

 この液浸冷却技術は、先に説明したデータセンターの問題、すなわちエネルギーコストの増大、スペース不足、騒音問題を解決に導く3つの特徴を備えている。

 1つ目は、空冷と比べて40%の電力を削減することだ。富士通によれば、液浸冷却技術は、空気を冷やすことで機器を冷却する空冷式に比べて約1000倍の熱輸送効率を持つ。加えて、大型の空調設備、パーツを局所的に冷やすファンなども不要であるため、結果的にデータセンターの消費電力を40%節約することが可能だ。

 また、2つ目の特徴としては、IT機器の設置スペースを削減することが挙げられる。従来の空冷式では、熱を逃がすために、通常のラックの容量よりも間引いてサーバやストレージを搭載しており、スペースの無駄遣いが起きていた。一方、液浸冷却では「間引き搭載」ではなくサーバやストレージを高密度に収める「フル搭載」が可能だ。

高密度に収納されたサーバ機器 高密度に収納されたサーバ機器

 液浸槽は、19インチラックに準拠しており、16U分の容量がある。これはサーバなら128台(1Uの2CPUサーバを約3ラック分)、ストレージなら32台(4Uのストレージを約3ラック分)のスペースだ。このサイズに収まっていれば、現在使用しているラック内のサーバ機器をそのまま移行することもできる。

 槽は2段まで積み上げが可能で、上、下段にすれば設置スペースはさらに縮まる。加えて、空調用設備用のスペースが丸ごと不要になるために、データセンター全体では70%のスペース削減が見込めると富士通は話す。

 空調用設備がなくなれば、騒音も発生しない。3つ目の特徴は、データセンター内の騒音問題を解決できることだ。空調設備のファンが回る音は予想以上に大きい。液体で機器を冷却すれば、この問題もおのずと解決される。

保守性に問題は?

 データセンターにまつわる課題を、解決するかもしれない液浸冷却技術であるが、その保守性に問題はないのだろうか。

 富士通は、液浸冷却技術は空冷機と同等の保守性を実現すると話す。例えば、サーバノード、HDDなどの主要コンポーネントは、システム稼働状態で保守を実施できるようにした。液浸システムの状態は、CDU内の監視モジュールにおいて常時監視し、システムの異常が発生した際には、管理者に通知が届く。

 一般向けに販売が開始されるのはまだ先のようであるが、同社は社内向けシステムのデータセンターへの液浸冷却技術適用を検討している段階だ。また、自社AIブランド「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」のディープラーニング基盤である「ZINRAIディープラーニングシステム」の液浸オプションとしても投入する予定である。

 導入に際してはファンを削除するなどわずかな変更で済むため、この技術が波及すればAI技術のさらなる活用へと歩みを進められるかもしれない。

富士通の液浸冷却技術がデータセンターを変革 富士通の液浸冷却技術がデータセンターを変革
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