AIの進化が目覚ましい今、コンサルティング企業やSIerに期待される役割はどう変わるか。キーマンズネットの調査結果から、AI時代に人間のパートナー企業にしか提供できない価値を探る。
IT戦略の立案や要件定義、プログラミング、テストといった、従来はコンサルティング企業やSIerといったパートナー企業が専門性の高さを生かしてきた領域で、AIの能力が急速に高まっている。
キーマンズネットはAI時代におけるユーザー企業とパートナー企業との関係の在り方や、パートナー企業が提供する価値を探るべく、「パートナー企業に関する実態調査(2026年)」(調査期間:2026年1月5〜16日、回答件数:171件)を実施した。
前編では「AI時代にSIerは不要になるか」という問いに対し、ユーザー企業の過半数が「パートナー企業は今後も必要」と回答したのに対し、実はSIerやコンサルティング企業といったパートナー企業の過半数が自らの存在意義に疑問を抱いている──そんな"ねじれ"が浮き彫りになった。
後編となる本稿では、パートナー企業が自社の強みがAI時代に通用すると考えているかどうかや、ユーザー企業とパートナー企業との関係性の理想と現実とのギャップ、そして人間であるパートナー企業にしか提供できない価値に迫る。
1. AI時代にパートナー企業に求められる価値とは?
2. ユーザー企業とパートナー企業が互いに思う「課題」や「不満」
3. 従来の「パートナー企業への丸投げモデル」は継続可能か?
4. ユーザー企業の意識に変化の兆し パートナー企業は対応できていない?
まず、パートナー企業に「自社の強みは今後のAI時代にも通用するか」を尋ねたところ、次の図のような結果になった。
「提供方法や付加価値の転換が必要」または「新たな強みをゼロから再構築する必要がある」という回答を選んだパートナー企業は8割に上った。
次に、ユーザー企業・パートナー企業の双方に「AI時代に、人間である外部パートナーにしか提供できない価値は何か」を尋ねたところ、全体で最も多かったのは「正解がないビジネス上の問いに対し、経験や知識に基づいて『意思決定を支援』」(43.9%)だった(複数回答可)。「AIが生成した成果物を、プロの視点で『最終的な品質保証とリスクを引き受ける』」(38.6%)、「プロジェクトにおける複数のステークホルダーの調整や合意形成の支援」(37.4%)が続いた。
ユーザー企業とパートナー企業で内訳を見ると、順位に若干の違いはあるものの、上位に挙がる項目はおおむね共通している。「意思決定の支援」「品質保証とリスクの引き受け」「ステークホルダーの調整」といった、AIでは代替しにくい「人間ならではの判断や調整」が、両者から価値として認識されていることが分かる。
一方で、注目すべきギャップも見えてきた。ユーザー企業がパートナー企業を選定する際に重視するポイントと、パートナー企業が自認する強みを比較すると、「内製化支援」の領域でズレが生じている。
ユーザー企業がパートナー選定時に「内製化や自社開発を支援し、自社の自走を助けてくれる教育的な姿勢」を重視すると回答したのは12.3%で割合は高くないものの、一定のニーズが存在する。一方、パートナー企業に自社の強みを尋ねた設問で「内製化や自社開発を支援し、顧客の組織的な成熟に寄与する伴走力」を選んだのは5.1%にとどまった。ユーザー企業が求める「内製化支援」を、強みとして提供できているパートナー企業は限られている。
前編で紹介したように、ユーザー企業がパートナー企業を頼る最大の理由は「IT人材不足」だった。従来から日本ではIT人材がIT関連企業に偏在しており、こうした構造が「ITシステムの構築や運用をIT企業に丸投げするユーザー企業」「継続的な仕事を確保するために御用聞き体質なパートナー企業」といった構造から抜け出せない原因だと指摘されてきた。
しかし、IT人材不足はもはやユーザー企業だけの問題ではないようだ。
「IT人材が不足しているか」を尋ねた設問では、「極めて不足」「不足」「やや不足」と回答した割合は、ユーザー企業が83.9%であるのに対し、パートナー企業は93.2%とむしろより深刻な状況にある。
人材不足を解消するために現在取り組んでいる施策を尋ねたところ、パートナー企業では「経験者(プロフェッショナル)の中途採用の強化」が61.8%と最も多かった。「M&A(IT系企業の買収)や資本提携による人材の獲得」も12.7%が選んでおり、外部からの人材調達に注力している様子がうかがえる。
ユーザー企業が「人材が足りないからパートナー企業に頼る」という構図は、パートナー企業側の人材不足によって物理的な制約を受ける可能性がある。「内製化支援」を求めるユーザー企業のニーズに応えたくても、そのためのリソースがパートナー企業側にも不足している可能性もある。
AI時代において、多くの企業が気になっているのがシステム全体の「品質」や「セキュリティ・ガバナンス」の最終的な責任を誰が負うべきかという問題だろう。この問いに対する回答には、ユーザー企業とパートナー企業で違いが見られた。
「ユーザー企業が全面的に責任を負うべきだ」と回答した割合は、ユーザー企業が27.7%であるのに対し、パートナー企業は13.6%にとどまった。特に従業員2000人以上のユーザー企業では「ユーザー企業が責任を負う」を選んだ割合が35.1%に上った。
大企業のユーザー企業の一部を中心に「責任は自ら負う」という意識が芽生える一方で、パートナー企業側は「ユーザー企業が主導し、パートナー企業が技術的に補完すべきだ」(37.3%)、「契約に基づき責任を折半すべきだ」(33.9%)という、責任の分担を前提とした関係を想定する回答が上位を占めている。現状では、システム開発においてパートナー企業側が成果物の完成責任を負う請負契約が一般的であることから、ユーザー企業が主導したり責任を折半したりすることでリスクを低減したいという意識が強く働いている可能性もある。
ユーザー企業とパートナー企業は、互いにどのような課題や不満を抱えているのか。
パートナー企業と契約・協力関係にあるユーザー企業に不満を尋ねたところ、「提供価値に対してコスト(単価)が見合っていない」(34.2%)が最多で、「担当者によってスキルや品質のバラつきが大きく、信頼性に欠ける」(28.9%)、「担当者が指示待ちの姿勢で、自走的な改善や工夫が見られない」(28.9%)が続いた。
一方、パートナー企業(59社)がユーザー企業に感じている課題や不満を見ると、「要件が曖昧(あいまい)なまま依頼され、大幅な手戻りや仕様変更が発生している」(59.3%)が突出して高い。「ITをコストとしか捉えておらず、付加価値や専門性に対する適正な対価が支払われない」(49.2%)、「実現困難なスケジュールや、契約範囲を逸脱した過度な対応を求められる」(39.0%)が続いた。
ユーザー企業は「コストに見合う価値が得られていない」と感じ、パートナー企業は「本来提供すべきサービスの範囲を超えて対応しているのに適正な対価が支払われていない」と感じている。双方の認識に大きな溝があることが浮き彫りになった。
フリーコメントでは、ユーザー企業から「ユーザー企業とパートナー企業がwin-winとなる方策を提案してほしい」「長い目で見た信頼関係に尽きる」といった声が寄せられる一方、パートナー企業からは「ユーザー側が最終の責任を負わないとパートナー企業はリスク回避に終始してしまい、まともな提案ができない」「ユーザーは金払いを減らすことしか考えず、パートナーは金を稼ぐことしか考えない」という率直な声も上がった。
ユーザー企業とパートナー企業の理想の関係を尋ねたところ、「お互いの強みを生かし、ビジネス価値を共に共創する『共創関係』」(63%)が多くの人に選ばれる一方で、現在の関係については「明確な役割分担に基づき、発注側が受注側に開発・運用を委ねる『補完関係』」(31.9%)であるとの答えがトップになった。
この「理想と実態のギャップ」を埋めるために何が必要か。最も多くの票が集まったのは「両者のコミュニケーションの質を高め、信頼関係を構築」(46.7%)だった。注目すべきは、「従来の人月単価に縛られない、成果や価値を基準とした柔軟な評価・契約形態」が32.6%の支持を集めていることだ。ユーザー企業とパートナー企業で内訳を見ると、ユーザー企業は27.6%であるのに対し、パートナー企業は39.0%と、パートナー企業側でより高い支持がある。
パートナー企業がユーザー企業に感じる不満として「『工数(人月)』で評価されるため、生産性を向上させても自社の利益に直結しない」が33.9%を占めていたことと合わせて考えると、従来の人月ベースの契約形態が両者の認識に大きな溝がある一因になっている可能性がある。
調査結果からは、AI時代の到来によってユーザー企業とパートナー企業の関係が転換点に差し掛かっている様子が見えた。
ユーザー企業、特に大企業では「ITシステムに関する責任は自ら負う」という意識が芽生え始めている。一方で、内製化を進めようにもIT人材やスキルが不足しており、パートナー企業への依存から脱却できない状況が続いている。
パートナー企業側では、AI時代に自社の強みが通用しなくなるという危機感を抱えつつも、深刻なIT人材不足に直面している。「ビジネスにおける意思決定支援」や「合意形成支援」「AIが生成した成果物の最終的な品質保証」といった新たな価値提供を志向する声はあるものの、現時点でそれを強みとして確立できている企業は少ないようだ。
フリーコメントには「ユーザー企業とパートナー企業はあくまで対等な立場。お互いに協力するという姿勢がなければ良い仕事は不可能だ」という声があった。ともすれば発注側が強い立場になりがちな日本社会において、テクノロジーだけでは解決できない「人と人との信頼関係」をどう成立させるかが鍵となりそうだ。
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