「Microsoft Excel」や「Google スプレッドシート」など、今や欠かせない存在となっている表計算ツール。本稿では、データ分析業務領域の専門ツールであるBIと表計算ツールがどのように利用されているのかを見ていく。
2024年7月にキーマンズネットが実施した「Excelの利用状況/2024年(回答件数:428件)」では、全体の98.6%とほぼ全ての企業が「『Microsoft Excel』(以下、Excel)を利用している」と回答するなど、今や欠かせない存在となっている表計算ツール。一方でデータ管理上のリスクや業務効率低下の懸念から”脱Excel”に舵を切る企業もあり、最適運用を見いだせずに悩むケースも少なくない。
本稿では「データ活用の現状とExcelの利用状況に関するアンケート/2025年(実施期間:2025年11月26日〜12月12日、回答件数:245件)」を基に、データ分析業務領域の専門ツールであるBIと表計算ツールがどのように利用されているのか、現状を見ていきたい。
はじめに、自社でのデータ分析業務にExcelや「Google スプレッドシート」などの表計算ツールを利用しているかを聞いた。
すると「ほとんどExcel、スプレッドシートで完結している」(51.4%)が過半数となった。「Excel、スプレッドシートをメインにBIも使っている」(30.6%)を合わせると、約8割が表計算ツールをメインに分析をしている。BI導入済み企業に絞っても、7割以上が表計算ツールをメインとしていることが分かった。
特にExcel利用率は圧倒的で、データ分析で重要な「データの可視化」領域においては85.7%で利用されていた。BIの導入率に比例して当然BIツールの利用割合も上がるのだが、Excel利用率は8割以上と変わらないことから、BIツールを導入していてもExcelを併用する企業が多いことが読み取れる。
ただし、企業規模別で見ると5001人を超える大企業帯においては表計算ツールを「BIをメインに補助的に使っている」(24.2%)が「ほとんどExcel、スプレッドシートで完結している」(17.7%)を上回っており、この規模帯でのデータ分析業務になるとBIツールを中心に活用しないと対応が難しくなる様子も垣間見れた。
データ分析業務にExcelを中心とした表計算ツールを利用する理由は何だろうか。最も多いのは「Excel、スプレッドシートの方が手軽だから」(51.3%)で、「扱うデータ量が少なく、BIを使うほどではないから」(17.0%)、「最終的なレポーティングや細かな調整はExcel、スプレッドシートの方が柔軟だから」(10.0%)が続く。
従業員規模別では、500人以下の中小企業帯で「扱うデータ量が少なく、BIを使うほどではないから」が、1001人以上の中堅・大企業帯で「最終的なレポーティングや細かな調整はExcel、スプレッドシートの方が柔軟だから」の割合が高くなる傾向が見られた。前者ではデータ量やコスト、人材が限定的になりがちな中小企業の傾向が、後者では経営層や取引先へのレポート提出に際し複雑な報告要件や体裁調整の必要性が高くなりがちな大企業の傾向が現れていると言えそうだ。
こうした実態もあり、今後もデータ分析業務に表計算ツールを継続的に使うつもりがあるのかどうかを尋ねたところ、「Excel、スプレッドシートをメインに併用したい」(37.4%)と「BIツールをメインに併用したい」(35.2%)を合わせ7割を超える企業が併用を希望している。
7割超がBIツールと表計算ツールを併用している中、それらの使い分けはどのようにしているのだろうか。実例をフリーコメントで聞いたところ「使い分けできていない」という意見も多数挙がったが、それを除くと「データ量と規模」「業務の定型性」「プロセス・機能」「組織・共有範囲」の4つに大別できた。
まず、データ量と規模による使い分けでは「データ量が少ない場合はExcel、多い場合はBI」や「BIツールは大量データの高速分析と可視化に強く、ExcelやGoogle スプレッドシートは小規模データの柔軟な集計や個人作業に適している」のように、表計算ツールの行数制限や処理速度の限界を超える場合にはBIツールを利用しているというケースだった。
2つ目の業務の定型性は「固定化されたダッシュボードはBI。固定化が難しい流動的な分析はExcel」や「小回りの利く作業はエクセルで定型的な作業はBI」「動的に内容を変更して参照したい資料はBI」など、定型業務やダッシュボードで固定分析を行う場合はBIツール、非定型業務や単発分析、試行錯誤して傾向を導き出すときや自由に加工したい場合は表計算ツールを利用するとの意見であった。
続いて3つ目のプロセス・機能による使い分けは「データの取得と加工はBI、ビジュアライズはExcel」や「複雑なデータや動的な可視化はBI」「データ入力と検索はBIツール、データベースはExcel」のように、工程ごとにツールを使い分けるパターンだ。
そして4つ目は組織・共有範囲によるもので「誰が見るか」「誰が使うか」という人間関係や組織構造に基づく使い分けであった。具体的には「BIは工場指標等経営層向け。Excelは課や部等の小規模の一時まとめ等に活用」や「個人的な分析や調査はExcel。報告用途はBI」「共有する必要性と範囲」などがあった。
以上、前編ではデータ分析業務におけるBIツールと表計算ツールの利用実態について紹介した。特にツールの併用が多いだけに、実例から見えてきた4つの使い分けパターンは自社運用の参考にしていただきたい。後編ではデータ活用に焦点を当て、成果を上げている企業とそうでない企業の違いを深堀りする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。