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「AI時代にSIerはいらない」 信じているのはまさかの“あの人たち”だった【調査】パートナー企業に関する実態調査(2026年)/前編

「AI時代にSIerやコンサルは不要になる」という言説が最近、聞かれるようになってきた。キーマンズネットの調査によると、この言説を信じているのは意外な「あの業種」だった。

» 2026年01月22日 07時00分 公開
[田中広美キーマンズネット]

 「AIが提案したりコードを書いたりする能力が飛躍的に高まっている今、コンサルティング会社やSIerは不要になる」──生成AIの急速な進化を背景に、そんな言説がSNSやメディアで散見されるようになった。

 これに対し、キーマンズネットが実施した読者調査「パートナー企業に関する実態調査(2026年)」(調査期間:2026年1月5〜16日、回答件数:171件)からは、意外な声が浮かび上がった。

図1 「AI時代にSIerは不要になる」への賛同率:ユーザー企業 vs パートナー企業(出典:キーマンズネット調査) 図1 「AI時代にSIerは不要になる」への賛同率:ユーザー企業 vs パートナー企業(出典:キーマンズネット調査)

 調査データから、AI時代におけるSIerの役割がどう変化するのか、ユーザー企業とSIerやコンサルティング企業などのパートナー企業との関係の理想と現実に迫る。

この記事で取り上げる内容

1. 「AI時代にSIerはいらない」と考えているのは誰か?

2. ユーザ―企業の内製化を阻む「4つの壁」──技術力よりも深刻な課題

3. AI時代に求められる「SIerの価値」

「AI時代にSIerはいらない」と考えているのは誰か?

 「AI時代にコンサルティング会社やSIerは不要になる」という言説に対し、「強くそう思う」「ある程度はそう思う」と回答した割合を見ると、発注側であるユーザー企業が45.5%であるのに対し、SIerやコンサルティング、ベンダーなどの受注側(パートナー企業)は50.8%と、数ポイントではあるもののより高い数字が出た。

 つまりユーザー企業の過半数は今後もパートナー企業の役割はなくならないと考えている一方で、SIerやコンサルティング、ベンダーの過半数はAIの脅威を前に自信を喪失している。

 なぜSIerやコンサルティング、ベンダーの方が「不要論」に傾いているのか。その背景には、自社の強みに対する危機感がある。調査では、パートナー企業に「自社の強みは今後もAI時代に通用するか」を尋ねたところ、「十分に通用する」と答えたのはわずか16.9%にとどまった。69.5%は「ある程度は通用するが、提供方法や付加価値を転換する必要がある」、11.9%は「新たな強みをゼロから再構築しなければならない」と回答している。実に8割以上のパートナー企業が、従来の人月商売や技術提供だけのモデルでは通用しなくなると感じているのだ。

 では、ユーザー企業はなぜパートナー企業との関係を継続しているのか。現在パートナー企業と契約・協力関係にあるユーザー企業に、その理由を尋ねたところ、最も票が集まったのは、「自社のIT人材・AI人材が不足しており、開発や運用のリソース(労働力)を補うため」(56.6%)、「自社内では保有していない高度な技術力や専門知見を活用するため」(55.3%)という回答が次点だった(複数回答可)。つまり、ユーザー企業がパートナー企業を頼る最大の理由は人材不足と技術力不足だ。

図2 ユーザー企業がパートナー企業との関係を継続している理由(複数回答 図2 ユーザー企業がパートナー企業との関係を継続している理由(複数回答)

 他の理由を見ると、「トラブルや緊急事態が発生した際に確実な対応を取るため」(34.2%)、「システムの品質保証やセキュリティ、運用リスクを外部と分担・担保するため」(22.4%)といったリスク低減を求める回答にも多くの票が集まった。

 これらの回答よりは若干ポイントが低いものの、「長年の付き合いがあり、自社の組織文化や業務プロセスを深く理解してくれているため」(27.6%)、「既存システム(レガシー領域)の構造を熟知しており、自社のみでは維持・刷新が困難なため」(22.4%)という回答にも一定数の回答者から選ばれているところからは、後に取り上げる設問からうかがえるように、「伴走支援を求めるユーザー企業」「パートナー企業なしではITシステムの維持・運用が難しいユーザー企業」という姿が見える。

ユーザーの内製化を阻む「4つの壁」

 AI技術の進展によって、将来的にITシステムの企画や開発、運用は誰が主体になって進めるようになるのだろうか。

 最も多くの票が集まったのは、「現在の役割分担の構造自体は大きく変わらない」という回答だったが、ユーザー企業でこの回答を選ぶのは35.7%なのに対し、パートナー企業では30.5%と、やはりここでもパートナー企業の方がAIによる「変化」を大きく評価している様子がうかがえる。

 生成AIの技術的な進展により、コードを書くだけならエンジニアでなくても可能になりつつある。IT戦略の立案でもAIは膨大なデータを分析して示唆を与えてくれる。それにもかかわらず、多くのユーザー企業でITシステムの内製化が進められない(と考えられる)理由は何か。

 ユーザー企業がAIを活用し、ITシステムの企画から開発、運用を自社で完結させようとする際の障壁を尋ねる設問に対しては、「システム全体の設計思想(アーキテクチャ)の一貫性を保つスキルの欠如」(51.5%)に最も多くの票が集まり、「AIが出力した結果の正誤や、ビジネス上の妥当性を判断する『目利き』の不在」(43.3%)、「レガシーシステムとの複雑な統合や、データ連携における技術的な高い壁」(40.4%)が続いた。

 ただし、内訳を見ると、パートナー企業とユーザー企業の"懸念ポイント"には違いがあり、「レガシーシステムとの複雑な統合や、データ連携における技術的な高い壁」(10ポイント差)を筆頭に、「AIが出力した結果の正誤や、ビジネス上の妥当性を判断する『目利き』の不在」(9ポイント差)、「品質保証、セキュリティ、法規制リスクに対する責任能力の不足」(5ポイント差)についてはパートナー企業の方がユーザー企業よりも大きな懸念を抱いていることが分かった。

図3 ユーザー企業がAIを活用してITシステムを内製化する際の障壁(複数回答) 図3 ユーザー企業がAIを活用してITシステムを内製化する際の障壁(複数回答)

 AIによって「提案する」「作る」行為のハードルは下がったものの、「高い技術力が求められる統合や連携」「正しいかどうかを判断する力」「品質保証をはじめとする責任能力」について、パートナー企業の方がユーザー企業の能力をより厳しく見ているという点が興味深い。

AI時代にSIerが必要とされる理由

 「SIerは不要になる」という言説を支持しない人は、なぜSIerが今後も必要だと考えるのか。「(SIerは)不要にならない」と回答した人にその理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「AIには不可能な『最終的な責任の引き受け』や『高度なガバナンスの担保』が必要だから」(54.4%)で、2番目は「ユーザー企業だけでAIシステムを運用・更新し続けるためのリソースや専門組織を維持できないから」(48.9%)、3番目は「AIが生成したものの品質や妥当性を、客観的に評価する『審判』としての第三者が重要だから」(46.7%)で、「最終的な責任を取る存在」「AIによるアウトプットの品質の目利き」としてパートナー企業が求められていることがここでも明らかになった。

図4 AI時代にもSIerが必要な理由(複数回答・「不要にならない」と回答した人のみ) 図4 AI時代にもSIerが必要な理由(複数回答・「不要にならない」と回答した人のみ)

 ここで注目すべきは、先ほどの「パートナー企業との関係を継続する理由」との違いだ。継続する理由としては「人手不足」「技術力不足」が上位だったのに対し、「不要にならない理由」では「責任の引き受け先」が1位になっている。

 この差が意味するのは何か。ユーザー企業の多くはこれまで「人手が足りないから」「技術力が自社にないから」という「IT人材不足」を主な理由としてパートナー企業を頼ってきた。「AI時代にもパートナー企業は必要か」と今後について問われた時に、「責任を取ってくれる存在」「判断の妥当性を保証してくれる存在」という価値を再認識したと言えるのではないか。

 フリーコメントでは、「現段階でのAIに手放しで任せることはできないので、最終的なジャッジに人間は必要」「パートナーは、ユーザーの事業本質を見極める能力により、差別化される傾向が高まると考える」といった声が寄せられた。

しかし、このままでいいのか?

 ここまで見てきた調査結果は、「AIが普及しても、責任を取る役割がある限りSIerは必要とされ続ける」という、SIerにとって一見"朗報"に見えるかもしれない。

 長年のパートナー企業依存によって、ユーザー企業は判断や責任まで外部に委ねている状態が固定化されている。しかし、今後を考えたときに、果たしてこの「パートナー企業が高い技術力を発揮し、IT人材をユーザー企業に提供し続けて、ITシステムに関する最終的な責任を負う」体制は持続可能なのだろうか。

 後編ではユーザー企業とパートナー企業との関係の在り方の理想と現実のギャップや、互いに対する「本音」を探る。

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