3〜4年のレンタル期間を経て返却されたPCを販売するリフレッシュPC販売サイト「Qualit」。今、個人だけでなく法人もリユースPCを求めるという。その背景を担当者に聞いた。
2019年4月に働き方改革が施行され、2020年1月には「Windows 7」の延長サポートが終了する。テレワークを始めるのであれば、モビリティやセキュリティなどを考慮し、モバイル端末やシンクライアント端末など必要に応じてテレワークにふさわしいデバイスを選択する必要があるだろう。また、長きにわたって最前線で活躍したWindows 7のPCを「Windows 10」へ移行するに当たってスペックが不足しているようであれば、それに見合ったスペックのPCへリプレースする必要がある。
こうしたイベントが立て続く中、ハードウェア調達の問題は企業担当者の頭を悩ませる。もちろん注文ロット数が増えるにつれてその分購入費用も掛かる。特に、ヒト・カネ・モノが不足しがちな中小企業にとっては、こうした問題は特に大きな負担となるだろう。
ハードウェア調達の負担を軽減する手段として、リユース品がある。しかし、PCなどビジネスユースのハードウェアを調達するに当たって、リユース品は解決策となり得るのだろうか。横河レンタ・リースが運営するリユースデバイスの販売サイト「Qualit」(クオリット)の担当者に話を聞いた。
「Qualit」は、リユースPCの販売サイトとして2018年2月15日にオープンした。横河レンタ・リースは、PCなどを企業へ貸し出すレンタル事業を主軸とする。Qualitは、企業にレンタルした機器を回収し、清掃、整備した後に、リユース品としてオンラインで販売する。オープン当初はコンシューマー向けとしてサービスを開始したが、最近は法人からの注文も徐々に増え始めているという。
リユースPCというと「一般消費者が利用するもの」という印象が強いが、法人にはどういったニーズがあるのだろうか。横河レンタ・リース(事業統括本部 IT事業本部 Qualitセンター長)の亀田隆彦氏に、法人がリユースPCを求める背景について尋ねた。
「Qualitを利用する法人はさまざまですが、主に中小企業やスタートアップが多く見受けられます。特にスタートアップなどこれからビジネスを始める企業は、人数分のPCやデバイスを一からそろえなければなりません。しかし事業への投資も必要な上に、加えて社用PCなどにそこまで予算を掛けられないでしょう。そこでリユースPCで対応するケースがあるようです。またタイムリーなニーズとしては、2020年1月に予定されているWindows 7の延長サポート終了の影響もあってか、Windows 10がプリインストール済みのPCに人気が高まっています。中でも、ノートPCの需要は大きいですね。最近は、iPadなどをビジネスの現場で活用するケースも増えているせいか、アップル製品は販売するとすぐに売り切れる状態です」(亀田氏)
Qualitで販売するリユースPCを「リフレッシュPC」と呼ぶ。横河レンタ・リースのレンタル事業部が企業に貸し出しレンタル期間を満了したデバイスを自社で回収し、神奈川県相模原市にあるテクニカルセンターに集約する。回収されるのは、36カ月〜48カ月前つまり約3〜4年前に貸し出されたデバイスが中心だ。レンタルの回収品というと気になるのが使用感だが、独自にランク付けして販売しており、超美品にはSランク、キズやヨゴレといった使用感が目立つにつれてAランク、Bランク、Cランクと格付けされる。
センターで外観チェック、データ消去、動作試験の後、同社の品質基準を満たしたものだけがピックアップされ、リユースPCとしてQualitで販売される。販売価格は、一般の中古市場価格よりも1〜2割ほど安価に設定しているという。
製品は、PCであればDellやヒューレット・パッカードなど国内外の主要メーカー9社の製品を取り扱う。もともと法人向けにレンタルされていたため、CPUにはIntel Core i5およびi7シリーズを搭載している製品が中心で、リフレッシュPCとしても法人での需要を満たすスペックや仕様の製品を多くそろえる。Windows PCの他にも「MacBook」や「iMac」「iPad」といったアップル製品も見られる。
亀田氏に最近の法人の購買傾向を尋ねると、「最近の企業からの注文を見ると、パナソニックの『Let's note』シリーズやマイクロソフトの『Surface』シリーズ、アップルのiPadといった製品の需要が高いですね」と人気製品を挙げた。
製品の保証期間は基本的には6カ月であるが、法人需要の増加に伴い、今後法人向けには24カ月までの保証を検討中だという。数十台単位などまとまった数の注文にも備えて、大口注文にも対応している。
こうしたリユースデバイスを購入する場合、大きな心配となるのがマルウェアのようなセキュリティリスクが潜んでいないかどうかだ。この点について亀田氏は「当社では作業員の手で1台1台ディスクをクリーンアップしています。また機器ごとに『いつ、どの企業へ貸し出されたか』を記録しているため、セキュリティリスクを可能な限り排除した状態で販売しています。Qualitは企業に直接レンタルしたものを自社で回収し、リフレッシュして販売しています。デバイスの“出どころ”が明確であり、安全な状態で出荷しています」と説明した。
ではリフレッシュPCはどういった工程を経て販売されているのか。横河レンタ・リースのテクニカルセンターを見学し、中古PCがどう再生されるのかを取材した。
神奈川県相模原市にある横河レンタ・リースの物流倉庫兼テクニカルセンター「橋本テック」で、Qualitで販売するデバイスの「リフレッシュ作業」が行われている。ここにレンタル期間を終えて返却された機器が寄せられる。
まずは同施設内で動作確認および内蔵ストレージのクリーンアップが済んだ後に再セットアップしストックする。担当者がその中から良品をピックアップし、Qualit専用ラインへと運ばれる。その後、出荷までの工程は全て手作業で行われている。その過程をのぞいた。
作業担当者の一人である大塚さんは、Qualit専用ラインへと運ばれた製品を取り出し目視とともに表面を指先でなぞり、細かなキズを探る。クリーンアップ時にクリーニングされ、ストックの中から厳選してピックアップされているため問題になるような傷はほとんどないが、念のために再度確認し問題なければノートPCの底やキーボード周りなどに貼られているラベル類をはがしていく。
キーボード周辺はもちろんゴム足やヒンジ周り、細かな段差などに残っている微細な汚れを水やアルコール、専用洗剤で落とす。Windows PCに関しては、専用ツールによって80%以上のバッテリー性能を保つ製品のみ販売されることとなっているため、バッテリーもチェックする。付属品のケーブル類も、清掃後に結束ひもでまとめられる。
「梱包箱も当社で独自に開発したもので、できるだけ新品に近い状態でお届けしています」と大塚さんは作業をしながら説明する。こうした清掃処理を経て、出荷される。
使える予算が限られている企業にとっては、ハードウェア調達は頭の痛い問題だ。特にまとまった台数が必要になる場合は、相応の経費が必要となる。そうした場合には、リユースPCを選択するという方法もある。中古ハードというといささかの抵抗感を感じるが、中には法人利用として配慮した製品を販売する業者や販売サイトもある。その中から自社にとって適切な販売業者を選ぶことで、ハードウェア調達に関する問題も少しは軽減できるのではないだろうか。
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