キーマンズネットは2019年11月に「営業部門の業務課題」に関するアンケートを実施した。営業部門が今後導入を検討しているITツールの1位はRPAであることなどが明らかになった。
キーマンズネットは2019年11月22日〜12月6日にわたり、「営業部門の業務課題」に関するアンケートを実施した。全回答者数68人のうち、情報システム部門が25.0%、営業・販売・営業企画部門が17.7%、製造・精算部門が17.6%、経営者・経営部門が10.3%といった内訳であった。
今回は「営業部門の独自予算」や「ITツールによる効率化を実施している業務」「営業部門が導入しているITツール」など、営業部門の業務課題とIT活用の現状を把握するための質問を展開。その結果、営業部門が今後導入を検討しているITツールの1位はRPAであることなどが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
営業力強化を目的に、営業部門でもIT活用が進んでいる。はじめに営業部門が“独自の裁量”で業務支援ツールを調達することがあるかを聞いた。その結果、全体の20.6%が部門独自の裁量でツールの調達ができ、27.9%が情報システム部門承認の元で部門予算を利用して調達できると回答した。まとめると、48.5%と約半数の企業で営業部門が業務支援ツールを導入しうる“独自予算”を持っており、そのうち半数の20.6%が独自の裁量をもってツールを導入できることが分かる。一方、51.5%と過半数は「部門独自では調達できない」結果となった(図1)。
続いて営業部門の“独自予算”を持つ回答者を対象にその予算を聞いたところ「11〜50万円程度」が24.2%と最も多く、全体では約7割が年間500万円以下の独自予算を持っていると分かった(図2)。
この結果を2018年に行った同様の調査と比較すると、「10万円以下」が50.9%から18.2%と大幅に減少する代わりに「100万円以上」が24.6%から57.6%と倍以上の伸びを示しており、営業部門が独自に使える予算の相場が上がったことが明らかになった。これまで、比較的安価に調達できるSaaS型の業務支援ツールを中心にIT活用を進めてきたであろう営業部門においても、活用できるツールの幅が広がっていると予想できる。
実際にどのような業務にITを適用しているのだろうか。既にITツールによる効率化を図っている業務として「営業部門内のナレッジ共有、コミュニケーション」(44.1%)、「精算業務などの効率化」(39.7%)、「場所にとらわれない業務環境の実現」(38.2%)が上位に挙がった。営業部門の業務を効率化し、営業活動のコアタイムを捻出するためにITツールを活用している状況が見て取れる。コミュニケーションや働く場所をボトルネックにせず、顧客接点を効率的に増やせるような環境整備が進められているようだ。
一方、今後ITツールによる効率化を検討している業務としては「顧客、パートナー管理、顧客分析」(27.9%)、「売上目標管理」(26.5%)、「営業支援(契約書類、伝票の作成など)」(25.0%)などが続いた(図3)。
関連して「営業部門が営業力を強化する上で不足していると感じるもの」について調査したところ「顧客管理能力」50.9%、「市場予測」42.6%、「ヒアリング内容を生かした提案スキル」36.8%などが上位に挙がった。この結果から、今後は単に本業にかける時間を増やすためだけでなく、顧客の情報を管理し、その課題を把握した上で、適切なタイミングに最適な提案をするという目的でITを活用するケースが増えるのではないかと予測できる。
調査では、営業部門で実際に導入しているITツールと今後導入予定のITツールについても聞いた(図4)。
その結果、端末環境はノートPC(79.4%)とデスクトップPC(58.8%)より普及率が高く、スマートフォン(55.9%)やタブレット(39.7%)、モバイルルーターなどのネットワーク機器(51.5%)など外出先で利用するデバイスも利用が進んでいると言えるだろう。背景として、企業の間でモバイルワークやテレワークが浸透していると考察できる。
関連して、44.1%が導入済みと回答したオンラインストレージも、場所を選ばない働き方をサポートするツールだと言える。近年は、エンタープライズ仕様の管理・セキュリティ機能を強化するツールが増えており、クラウドでデータを共有することに抵抗があった企業も徐々に利用をはじめていると考えられる。
一方、営業部門が営業力を強化する上で不足しているものとして挙がった「顧客管理能力」や「市場予測」に寄与するSFAやCRMについてはそれぞれ20.6%、32.4%と導入率が低く、市場予測を可能にする分析系のツールについては16.2%と更に低い結果となった。
この分野ではSaaS系のサービスを中心に豊富な機能を持つ多くのツールが市場に参入しているが故に、どのような基準で何を選べば良いのか検討に時間が掛かっている企業も少なくないのだろう。
またフリーコメントでは「どの営業支援ツールも(日々の日報作成機能や、案件情報登録・照会機能が)複雑すぎて使いこなせない。もっとシンプルに単純にしてほしい」といった声も出ている。いくら機能が豊富でも営業部門が使わなければツールは定着せず、実際に「ExcelとSFAといったシステムの二重入力による非効率」といったコメントも寄せられている。ITリテラシーに関する課題から導入に二の足を踏む企業も一定数存在しそうだ。「ITリテラシーが低い(ITをイットと読む人たちしかいない)」といった“嘆き”のコメントも寄せられており、製品選定の際は機能を○×表で比較するだけでなく、自社の営業部門で本当に求められている機能を明確にした上で、普段の業務の中で使い易いかどうかを検討する必要があると分かる。
なお、定型作業を自動化するRPA(Robotic Process Automation)は17.5%と導入率は低いものの、今後導入予定が26.5%と全項目の中で最も高かった。経理業務やシステム部門の自動処理業務などバックオフィス業務で使われる事例の多いRPAだが、市場や顧客データの自動収集やデータ更新管理、レポート作成など、今後はフロント業務での活躍にも注目が集まっている。
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