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営業部門における働き方改革の取り組み状況(2019年)

キーマンズネットは2019年11月に「営業部門の業務課題」に関するアンケートを実施した。2019年4月からは「働き方改革関連法案」も施行されたが、約1年で営業部門の働き方は変わったのか。

» 2019年12月26日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 営業部門の「働き方改革への取り組み状況」や「社内PCの外部持ち出しに関する運用規定」「就労環境での課題や問題意識」など、営業部門の働き方やその課題に関する質問を展開した。その結果“働き方改革”に取り組む営業部門が2018年と比較して9.5ポイント増加していることなどが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

働き方改革関連法案は営業部門の日常に営業を与えたか

 前編では営業部門における独自予算の有無や導入ツール、効率化を図っている業務などを取り上げた。後編では、営業部門における働き方改革の実施状況について調査から明らかになったことを紹介する。

 はじめに営業部門で働き方改革に取り組んでいるかどうかを聞いた。その結果、「取り組んでいる」と答えた割合は57.4%で、約6割の企業が働き方改革に着手していることが分かった。一方、「取り組んでいない」と答えた回答者は32.4%、「分からない」とした回答者は10.3%だった。

 この結果を2018年に行った同様の調査と比較すると、働き方改革に「取り組んでいる」と答えた回答者の割合が9.5ポイント増加している。要因として、2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されたことが少なからず影響しているのではないか。

 具体的な取り組み内容としては、1位「残業時間の削減」(76.9%)、2位「有給休暇の取得推進」(69.2%)、3位「フレックスタイム制度や時短勤務制度などの導入」(43.6%)、4位「テレワークの推進」(38.5%)、5位「業務効率化のためのIT、機器、システムの導入」(35.9)%と続いた(図1)。

 1位、2位に挙がった残業時間と有給取得については、2019年4月「働き方改革関連法」でルールが厳格化している。

 例えば、時間外労働については月45時間、年360時間を原則とした上限規制が設けられ、年次有給休暇に関しても「10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を与える」ことが義務付けられた。未着手の企業にあっては早急な体制整備が望まれる。

図1 働き方改革の具体的取り組み内容

約7割の営業部門で「PC持ち出しOK」 情報漏えいリスクをどう考える?

 営業部門における働き方改革の取り組みとして、「フレックスタイム制度や時短勤務制度などの導入」や「テレワークの推進」など、柔軟な働き方を実現するための取り組みも上位に挙がった。

 実際に企業では、営業部門が柔軟に働ける環境を整えているのだろうか。

 調査ではその一例として、社内PCの外部持ち出しや自宅への持ち帰りが許可されているか聞いてみたところ、社内PCの外部持ち出しを許可する企業は66.2%と2018年の同調査より4.9ポイント増加している。営業部門においては外出先や移動中に作業ができるかどうかで、業務の生産性も左右されるため、PCの持ち出しを新たに許可する企業が今後も増え続けるかもしれない。

 なお、持ち出しPCからアクセスできるシステムとしては「メール」(80.9%)、「グループウェア」(58.8%)、「ファイルサーバ」(48.5%)、「ワークフロー(稟議申請、承認など)」(41.2%)、「Web会議」(36.8%)、「基幹システム」(35.2%)などが挙がった。一方、SFAやCRMなど営業活動を支援するツールについては1割以下にとどまる(図2)。取引先や顧客データなどの機密情報に社外からアクセスさせることについては、情報漏えいなどのリスクから、許可しないとする企業が多いようだ。

図2 社内PCの外部持ち出しに関する運用規定

 関連して、PCの持ち出しに関して企業ではどのようなル―ルを設けているのだろうか。調査の結果、「都度、持ち出し申請を行えば、持ち出しできる」(31.1%)、「社内PCの持ち出しは常に許可されている」(24.4%)、「決められたメンバーのみ持ち出しが許可されている」(20.0%)と続き、少数ながら「規定があるかどうか不明」(4.4%)といった危険な状況も見受けられた(図3)。

 持ち出しPCからの情報漏えいや不正アクセスといった被害を生じさせないためには、自社の情報セキュリティポリシーに合ったルールを策定し、確実に運用することが重要だ。時勢や状況に合わせてルールを継続的に見直し、それに合ったシステムやツールを導入する必要もある。

図3 社外からアクセスが許可されているもの

営業マンの就労環境を“悪化”させる根源はどこに 営業部門3つの課題

 最後に、回答者全員を対象に、自社の営業活動における「就労環境での課題や問題意識」について聞いたところ、大きく3つの課題が浮き彫りになった。

 1つ目は、時間外労働や残業時間に対する課題だ。具体的には、「労務管理がなされていない」「休日出勤や残業が多い」「定時時間外の作業が多い」「ノー残業にしたいができない。会議が長い」といった声が寄せられた。

 また「業務量が変わらないのに残業時間が縮小され、顧客に負担が掛かる懸念がある」といった意見もあり、生産性向上や効率化の取り組みを伴わない働き方改革に対して不満を抱くケースもあるようだ。

 2つ目は、情報やナレッジ共有に対する課題だ。「個々人のスキルの形式化が必要」「営業の埋もれた知識の共有」「顧客情報の共有が不十分」など、組織内で成功した事例や提案資料などを共有できていない課題が挙がった。

 中には「カネとモノが絡むので自社内での情報共有が大事なのだが、自分の業績を上げるために共有せずに握っている不届き者が弊社に存在している」といったコメントも寄せられた。その他、「システム部門との連携」「製造部門との連携」といった他部門と連携することで、より営業活動を強化できるのではという意見も挙がった。

 3つ目は、提案力を強化するための市場予測や顧客分析が足りていない、できてないことに関する課題だ。「問題の分析力が不足している」「顧客のステータス管理ができていない。また、その後のフォローが遅い」といった意見がそれで、顧客の置かれている市場環境と現状課題の正確な把握ができておらず、適格な提案やフォローが不十分な営業部門も少なくないと分かる。

 前編でも紹介したが「営業部門が営業力を強化する上で不足していると感じるもの」として「顧客管理能力」や「市場予測」が1位2位に挙がっている。これをサポートするSFAやCRMといったツールは導入率が2〜3割と低いのが現状だが、これから導入したいツールとしてはRPAに次ぐ2位、3位にランクインしており、企業における普及が期待される。

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