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Excelの利用状況(2020年)/前編

好きではなくても仕事をする上では使わずにはいられないExcel。利用動向調査では「満足しているのに、不満」という不思議な現象も。大企業はデータ活用が進んでいる可能性も見られた。

» 2020年02月06日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2020年1月10〜27日にわたり、「Excelの利用状況」について調査を実施した。全回答者数205人の内訳は事業部門が44.4%、情報システム部門32.7%、管理部門16.6%、経営者・経営企画部門が6.3%だった。

 今回はMicrosoft Excelの導入率や導入バージョン、利用用途に課題の有無など企業におけるExcelの利用状況を調査。全体の98.5%とほぼ全ての企業で利用されている一方で、約6割のユーザーが利用における課題を持っていることなどが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

脱Excel、O365推しも何のその、パッケージ版Excelは強し

 ノンプログラミングで業務アプリを作成できる「脱Excelツール」が注目を集めて久しい。従来Excelで作業していた業務のいくつかは、脱ExcelツールでWeb型の業務アプリにした方が効率よく作業できる場合があるとされるからだ。

 そこで調査では初めにExcelの導入状況について尋ねた。「導入していない、導入の予定はない」と回答したのはわすか1.5%だった。残りの98.5%の企業はExcelを利用している。

 ExcelをはじめとするMicrosoft Office製品は、パッケージ版に加え、オンライン版やモバイルアプリなど多様な利用形態で提供されている。特に最近は働き方改革などを背景に複数のモバイル端末などからも利用でき、契約プランによっては専用のコミュニケーションツールなども利用できる「Office 365」を採用する企業の例も増えている。そこで調査では初めにどのExcelを利用しているかを尋ねた。

 導入しているバージョンは「Excel 2016」が43.1%と最も多く、次いで「Office 365(Excel Online)」27.2%、「Excel 2013」20.8%、「Excel 2010」7.9%、「Excel 2000〜2003」が合わせて1.0%と続いた(図1)。オンライン版の利用は全体の3割弱とまだまだ少なく、多くがパッケージ版を採用している。

 この結果を2017年12月に行った同様の調査と比較すると、高い導入率に変化はないが、導入しているバージョンに大きな変化が見られた。特に分析機能が強化された「Excel 2016」やWeb上で共同編集が可能になった「Office 365(Excel Online)」についてはそれぞれ25.1ポイント、15.6ポイントと2年前より大きく伸びており、企業でのExcel活用にも少し変化があるようだ。

図1 導入しているExcelのバージョン 図1 導入しているExcelのバージョン

「Excel方眼紙」ユーザーは減った? Excelの利用用途は大企業で変化「アリ」

 次に「Excelの利用用途」を聞いたところ、1位は「表計算、集計業務(財務会計など)」89.6%、2位「資料作成」82.2%、3位「データ分析、レポーティング」64.9%、4位「帳票作成」62.9%、5位「見積作成」50.0%と続いた(複数回答可)。

図2 Excelの利用用途 図2 Excelの利用用途

 上位は前回調査時から変わらず、表計算や集計業務、資料作成など、表計算ソフトらしい使われ方が上位に並んだ。他方、「Excel方眼紙」と呼ばれることも多い帳票的な利用方法も依然約6割の企業が利用している状況が見えた。

大企業ではデータ活用の道具としての利用が目立つ

 これを従業員規模別に見ると1001人以上の中堅〜大規模企業で「データ分析、レポーティング」が7割を超えており、中小企業に比べて利用率が高い傾向にあった。

 オンラインでの顧客の行動や、購買履歴、ジオターゲティング情報など、前回調査を実施した2年前と比較して、企業が今までにないデータを収集したり分析したりといった新しい取り組みを進めるための環境が整いつつある。今回の結果からも分析対象となるデータの多い大企業では特にExcelによるデータ分析やレポーティング機能を活用している可能性が考えられる。

利用者の大半が満足するも6割が「課題あり」

 次に導入しているExcelの満足度を聞いたところ「とても満足」12.9%、「まあ満足」75.7%と合わせて88.6%が満足と回答する高い結果となった。一方、利用中のExcelについて課題に感じる点があるかを聞いたところ「課題がある(課題があった)」が62.4%、「課題はない」が37.6%と約6割の企業で課題を抱えていた(図3)。この満足度と課題感との差は資料作成からデータ分析まで幅広く利用できるツールであるため一定の"満足度"はあるものの、実際は不便に感じる点も少なくないという実態から生じているものと考えられる。

図3 Excelへの課題の有無 図3 Excelへの課題の有無

 そこで具体的にどのような点を課題と認識しているのか調査したところ「マクロにより作成されたシステムが、作成者以外だと改修しづらい」「知識がないとマクロ(開発機能)が使えない」が同率で63.5%、次いで「共同編集ができない(リアルタイムに共有できない)」55.6%、「データ量が多すぎる際、処理速度が遅い」50.8%「データが不慮の事故により壊れることがある」48.4%と続いた(図4)。

図4 Excelに課題を感じている(感じていた)項目 図4 Excelに課題を感じている(感じていた)項目

 このように"重い"ファイルの存在や部門ごとに運用ルールや形式が違うファイル、最新版が分からないファイルの点在と、いつの間にかExcelを中心に業務が作られている組織も少なくないのではないだろうか。昨今、働き方改革の観点からも"脱Excel"が叫ばれ、Webブラウザ上で編集や共有・管理できるWebアプリツールに転換する企業も少なくない。ただ現状のExcel導入状況を見るに、まだまだ"脱Excel"ができた企業は一部なのだろうと見ることができそうだ。

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