草野賢一(Kenichi Kusano):IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー
国内ルーター、イーサネットスイッチ、無線LAN機器、ADC(アプリケーションデリバリーコントローラー)、SDN、NFVなど国内ネットワーク機器市場の調査を担当。ベンダー調査に加え、ユーザー調査やチャネル調査にも携わり、それらの調査結果をベースに、国内ネットワーク機器市場の動向を検証、市場動向の分析および予測を提供する他、さまざまなカスタム調査を実施している。IDC Japan入社前は、エンジニアとしてユーザー企業のネットワークの設計、構築を担当。商品企画にも携わる。
企業ネットワークにおいて欠かせないルーターやイーサネットスイッチをはじめ、最近ではネットワーク接続において欠かせないものとなっている無線LAN製品。これら企業向けネットワーク機器に関する2019年度の調査を見見ると、ネットワーク機器全体では2018年度に引き続きプラス成長を堅持しており、前年比成長率では3.5%、市場規模は2456億9200万円となった。
イーサネットスイッチやルーター自体はすでに多くの企業で導入されており、それほど大きな伸びは期待できない部分はあるものの、ギガビットを超える高速通信が可能な無線LAN環境の整備が引き続き好調だったことが影響してか、ネットワーク全体の最適化を図るために既存の有線ネットワーク環境の刷新が進んだものと考えられる。
また、2019年度は「Windows 7」の延長サポート終了に伴って「Windows 10」への移行が必要になるなど、エンドポイント側の入れ替えが大規模に行われた年だった。そのため、エンドポイント刷新に合わせて、積極的にネットワークの更改も提案したシステムインテグレーターもいるなど、ネットワーク刷新の提案活動が市場全体を押し上げた面もあると見ている。
次に、2024年度までの5年間における企業向けネットワーク機器市場全体を見てみると、2019年〜2024年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)はマイナス2.5%と予測している。好調を維持してきた無線LANは、今後5年間で支出額が4.8%のプラスなると予測しており、無線LANを中心にネットワークアクセス手段を考える「ワイヤレスファースト」という考え方によって、無線LANがネットワーク機器市場を引き続きけん引するだろう。
無線LANについては、「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)関連の製品がエンタープライズから中堅・中小規模向けのラインアップにまで拡充され、2020年時点で「IEEE 802.11ac」において最大1.3Gbpsの帯域幅を提供するwave1対応製品からの乗り換えも進む可能性は考えられる。企業における無線環境は、高密度環境でも快適に利用できる環境づくりを進めていくことになるため、今後もプラス成長を維持することだろう。
ただし、イーサネットスイッチとルーター市場はマイナス成長と見ており、CAGRは前者がマイナス4.1%、後者がマイナス2.7%と予測している。好調な無線LANのプラスを考えても、市場全体としてはマイナス成長になると見ている。なお、今回の予測は2020年3月末に行ったため、2020年4月に発令された緊急事態宣言の影響は加味されていない。
ここで、2020年度における見通しについて触れておきたい。2020年5月現在、世界規模で感染が広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、日本政府が2020年4月7日に特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令したことはご存じの通りだろう。そのため、2020年度におけるネットワーク機器市場については厳しいと予測しており、今回公開した予測よりも状況が悪化する可能性は十分考えられる。そんな状況下において、ネットワーク機器市場に影響を与えることも少なからず存在している。
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