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RPA BANK読者が抱く、テレワークのお悩みトップ3──ソリューション提案企業の回答は?

» 2020年07月10日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

2020年4月にRPA BANKが実施した「テレワーク・リモートワークの実態アンケート」では、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として急務となった在宅勤務への取り組み状況と課題について、読者387人からの率直な声が寄せられた。

本記事では、同アンケートの自由回答欄で頻出した“お悩み”を大きく3つに集約。これらの解決に向けワークスタイル変革に積極的に取り組んでおり、最新ソリューションのファーストユーザーとなることも多いITベンダー2社から、社内の知見を紹介してもらった。

■記事内目次

  • お悩みその1「勤怠管理・情報共有がしづらい」
  • お悩みその2「コミュニケーションが取りづらい」
  • お悩みその3「会社でないとできない作業がある」

お悩みその1「勤怠管理・情報共有がしづらい」

  • 「勤務時間の管理と目標設定がしづらい」(都内・一般社員)
  • 「真面目な人とそうでない人で不公平感がある」(都内・一般社員)
  • 「デスクトップ型PCでの執務が大半だったため、当初は勤怠管理の方法がなかった」(関東・主任)
  • 「勤怠管理と、業務実績が把握しづらい」(東北・中間管理職)
  • 「会議の場以外の接点が減り、自部門外からの情報が格段に少なくなった」(都内・管理職)

離れた場所で別々に作業するテレワークでは「やるべきことができれば、勤務時間の使い方は自己裁量」という成果主義の傾向が強まる。

成果が見えるまでプロセスを共有しない相手とも共通認識を持つには、分かりやすい形で情報をシェアしておくことが欠かせない。また同時に、成果にどれほど重きを置くとしても労働時間が決められている限りは、出社時と同等の勤怠管理を続ける必要もある。

思わぬ事態を境に早急に求められるようになった、新しいワークスタイル。実現を支える多様なソリューションがある中、それらを熟知するベンダー企業ではどのような活用をしているのだろうか。

菊地 聡子氏(富士ゼロックス株式会社 【アドバンスドインダストリアルサービス事業本部デジタルプラットフォーム部 ビジネスプラットフォーム事業推進グループ】): 当社ではコロナ禍前から、働き方改革関連での提案にあたって“言行一致”を図る趣旨で、ノートPCの社外利用をはじめとしたテレワーク対応の取り組みを進めてきました。

クラウドサービスのオフィススイート「Microsoft 365」を導入しており、メンバーの在籍状況、テキストチャット、ビデオ会議などは、同製品の機能で一括してまかなう体制になっています。

緊急事態宣言以降、在宅勤務に全面移行しても、同僚と同じ場所にいなくて不便と感じたことは個人的にはありません。

情報共有がスムーズなのは、「Microsoft Teams」のチャットやビデオ会議に加え、ファイルのローカル保存やメール添付をせず、クラウドストレージを活用する方法に切り替えていたことも大きいです。クラウド上でファイルを共同編集すれば履歴も自動的に残り、場所を問わず最新の内容が確実にシェアできます。

文書管理は当社が強みを持つ事業領域で、製品と併せてコンサルティングも提供しています。ポイントを1つお伝えすると、≪共有ファイルを整理する基本は「内容別」「時系列」でのフォルダ分けです。クラウド上の共有フォルダも目的に応じ、この2軸のいずれかを基準にした階層構造にするのがよいと思います。

下井田智康氏(日商エレクトロニクス株式会社 関西支社長): 今回のコロナ禍を受けて、IT製品の営業職など約40人が所属する当社の関西支社では、3月上旬から2週間オフィスを完全にシャットアウトし、その後も在宅勤務を継続しています。

テキストチャットは「Slack」、ビデオ会議は「Zoom」、ファイル共有は「Googleドキュメント」などテレワークに必須のツールは一通り導入済みで、勤怠管理もクラウドサービスの「LYSITHEA(リシテア)」を以前から利用しています。

勤怠データは自動で集まるものの、直接対面できない上に一人暮らしの社員もおり、管理職としてはなるべく顔を見て・声を聞いて体調を確かめたいという思いも強くありました。そこで、課長職の4人がそれぞれ朝夕2回、部下と必ず連絡を取ることとしており、Zoomでビデオ通話をしていました。

現在、やり取りの多くはSlackのチャットに移行していますが、残業はZoomでの事前申請制で、本人と対話をした上長が必要と認めることを条件にしています。そうすることで、テレワーク下による“働きすぎ”を防ぐことにも取り組んでいます。


テレワークの勤怠管理・情報共有にはクラウドサービス」との回答がそろった。もっとも具体的な選択肢は幅広く、検討する場合は機能や料金体系のほか、導入済みツールとの相性もポイントとなりそうだ。

テレワークを機に働き方が大きく変化したことで、勤怠連絡・ファイル共有・残業申請などに関して社内のルール・マナーを見直すケースは少なくないとみられる。とりわけ急を要しそうなのが、次のお悩みである「コミュニケーション」のモードチェンジだ。

お悩みその2「コミュニケーションが取りづらい」

  • 「メンバーが何に忙しいかがわからず、作業を頼みづらい」(関東・一般社員)
  • 「社内にいればすぐ解決するような疑問・質問のために電話やメールで連絡して回答を待たねばならず、効率が落ちる」(都内・主任)
  • 「口頭での気軽な相談や、課題に関するフリーディスカッションをしづらくなった」(都内・主任)

今回のアンケートでは「ビデオ会議で相手の声が聞きづらく、反応も見えづらいので話しにくい」(都内・一般社員)など、直接対面とは勝手が異なるコミュニケーションに違和感を訴えるコメントが相次いだ。

物理的に離れているだけに、対話でのタイムラグや、相手の様子がよく見えない不自由をゼロにはできない。とはいえ、こうしたズレや制約は少しでも小さくしたいもの。そんな願いに応えるノウハウはあるだろうか。

菊地: 富士ゼロックス社内で利用中のMicrosoft Teamsでは「会議中」「通話中」といったスケジュールや在席状況が共有でき、チャットやビデオ会議と一体の機能になっています。

そのため当社ではなるべく他のメンバーが取り込み中でないタイミングをみてテキストメッセージを送り、内容次第ですぐ音声通話やビデオ会議に切り替える習慣が定着しており、リモートでも必要なコミュニケーションが十分に取れていると思います。

一方、製品やサービスで解決しにくいコミュニケーションの課題としては、リモート会議で発言がかぶったり、逆に間が空いたりして気まずい点があると思います。現時点では私たちも試行錯誤を続けている状況ですが、リモート向けの進行方法を工夫しながら各自が慣れていくにつれ、そう遠くない時期に気にならなくなりそうな感触も持っています。

川崎拓二氏(日商エレクトロニクス関西支社 関西営業一課長): これまで電話やメールでの連絡を補完するツールとして試行していたSlackでのテキストチャットが、全員テレワークの2週間で、完全に社内コミュニケーションの中心になりました。

既に社内のSlackでは「お疲れさまです」といった定型文は省略し、電話するほどではない細かい連絡での利用や、取り急ぎ「OK」の絵文字を押す返答といった、スピードと内容重視のやりとりが当たり前になっています。

これほど切り替えが速かったのは、手軽でスピーディーなコミュニケーション手段として管理職が便利さを実感し、部下への連絡でチャットを率先して使い始めたことが大きいです。

従来と異なる状況で緊急対応を漏らさないよう、お互いにフォローが必要な在宅勤務下では、すぐ電話に出られないときを含めてリアルタイムの状況をキャッチできるチャットのメリットが非常に分かりやすかったと思います。


2社の例からは、コミュニケーションツールが備える機能の理解に加えて、チャット・通話・ビデオ会議の特性を生かして使い分けるという共通認識が重要だと分かる。

テレワーク下でも連携を保ち滞りなく業務を進めるには、形式よりも実質とスピードを重視したコミュニケーションを、影響力の大きいマネジメント層からまず実践することがカギとなりそうだ。

お悩みその3「会社でないとできない作業がある」

  • 「原本提出を要する書類の印刷・押印・郵送や、電子化に向けた運用方法が定まらず、出社している方に毎回頼むのがつらい」(九州・中間管理職)
  • 「当社も取引先もペーパーレス化が遅れている」(都内・中間管理職)
  • 「地方中小企業のIT担当として、テレワーク対応を機にデジタル化とハンコ文化からの脱却を進めたい」(中部・一般社員)
  • 「契約やセキュリティの関係上、ITベンダーがユーザーの環境にアクセスできず十分効果が得られない例がある。一方ユーザーの管理者が在宅の場合は、現場のベンダーに“丸投げ”となりやすい」(都内・主任)

社外からのアクセス制限や、「VDI(仮想デスクトップ)が遅すぎる」(関東・中間管理職)などITインフラ面の不備、あるいは「紙とはんこ」が必須であるため在宅で完結できず、時にはそのために出社を要するといった声もアンケートでは多く寄せられた。

仮想化やペーパーレス化は、いわばテレワークの“基盤”を担うテクノロジーだ。では、上記のような課題に取り組む企業が採り入れられるソリューションにはどのようなものがあるだろうか。

菊地: バックオフィスのテレワーク対応で“紙”がボトルネックになっていると判明した企業から、富士ゼロックスが自社の事務処理にも用いる「買掛金管理自動化支援ソリューション」へのお問い合わせを多くいただくようになりました。

これは、オフィスに届く紙の請求書をスキャンすることで、請求書処理をデジタル化・自動化するクラウドサービスで、一連の処理を可視化して管理するワークフロー機能のほか、スキャンデータから文字と項目を自動認識したり、会計システムとの自動突合を行う機能も備えています。

手元に原本を置いての入力・照合が不要となるほか、最初のスキャン作業を除いて全てWebブラウザ上で処理するため、確認・修正・承認・さらに支払処理までを全てテレワークでできるようになります。

導入にあたっては通常、ユーザー企業の会計システムと連携させるためにオフィスでの設定作業が3カ月程度必要ですが、経理のテレワークニーズにこたえ、最短1カ月でトライアル環境から利用可能な限定プランを用意しました。また、同じく自社も得意先も出社させてしまう請求書発行についても、クラウドで自動発行できるツールのご紹介の機会が増えています。目下の出社制限が大きい企業には、これらの方法が適していると思います。

また、契約締結のように社外と直接やりとりする業務は、社内で完結する事務処理よりも調整が複雑で、これまで「脱はんこ」が困難とされてきましたが、テレワーク対応を機にペーパーレス化が共通課題となったことで、企業間の協力が進みやすい状況となっています。その意味で現在は、当社が活用を推進する電子署名ツール「DocuSign」をはじめとしたデジタル化への移行にも適したタイミングだと考えています。

小松靖治氏(日商エレクトロニクス関西支社 関西営業二課長): 社内保管の資料やデータがあるため出社が必要なケースであれば、最短1〜2週間でテレワーク対応させることが可能です。具体的には、Windows10とMicrosoft 365アプリの利用環境をクラウド化し、タスク自動化ツール「Power Automate」も併用できるサービス「Windows Virtual Desktop」を使って情報のPDF化と自動アップロードを行い、クラウド経由で確認できる仕組みをゼロから構築する方法が考えられます。

ただ多くの場合は、既存のシステムなどとの整合性が求められるため、社内環境にアクセスして開発や検証を行う必要も出てきます。出社が制限された状況下、私たちは外部企業として、技術と手続の両面でこれらを支援することが可能です。

当社はVDIソフトウエア「Citrix(シトリックス)」のユーザーであるほか、クラウド・オンプレ双方の導入支援実績も有し、VDIのメリット・デメリット両面を熟知しています。

仮想環境でのRPA運用にもノウハウがあり、VDIを活用して在宅でRPAの運用環境構築やロボット作成に取り組むユーザーを支援するとともに、出社制限下で外部のサポートを要するユーザーがハードルを一気にクリアできるよう、Citrixによる仮想デスクトップ・Teamsによるチャット・Zoomによるビデオ会議を一括導入できるパッケージも提供しています。

VDIとRPAに関して私たちの経験をシェアすると、Citrix上では主要なRPAツールが、いずれも問題なく動作します。仮想デスクトップでのRPA運用のポイントとしては、開発時と動作時で異なる表示環境の影響を受けないよう、ロボットの操作対象指定で座標や画像マッチングを極力使わないことが重要だと考えています。新型コロナウイルス流行の第2波に備えて、極力出社の必要性を無くしていきたい企業の方々には、ぜひご相談いただきたいと思います。


“ウィズコロナ”時代の常識となりそうなテレワーク。定着を阻む物理的・心理的な要因を、テクノロジーと工夫で取り除く多様なアプローチ、そして着手しやすい最短ルートを示してくれた両社の回答から、すぐ使えるヒントを得た企業も少なくないだろう。

想定外の展開で加速するワークスタイル変革でのお悩み解決に、本企画が少しでも役立てば幸いだ。]

(取材・文/相馬大輔 デザイン/今井裕美 構成/RPA BANK編集部)

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