コロナ禍によるテレワーク対応などが始まってからおよそ1年。会議の実施状況はどう変化しているのだろうか。以前よりも具体化した会議に関する不満などに焦点を当て紹介したい。
キーマンズネットは2020年12月9日〜23日にわたり「会議の実施状況」に関する調査を実施した。全回答者数145人のうち、情報システム部門が26.2%、製造・生産部門が20.7%、経営者・経営企あ画部門が10.3%、営業・販売部門が9.7%と続く内訳であった。
今回はコロナ影響によってリモート中心に変化しつつある“ニューノーマル時代”の会議について、1週間に出席する会議数や平均出席者数などの実態や運用で不満や課題に感じる点を調査。その結果、2020年1月に行ったコロナ以前の前回調査時と比較して、会議がリモートを中心に短時間かつ少人数で行われる形式に変化しつつあることなど明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
前編ではコロナ禍で会議はどう変化したのかを調査した。後編ではニューノーマル時代の会議について実態や課題の調査結果を紹介したい。
はじめに、現在の1週間当たりの会議数を調査したところ「週2〜4回」が33.3%、「週1回」が29.9%、「週5〜7回」が12.5%と続き、会議1回の平均時間は「30分以上、1時間未満」が49.3%、「1時間以上、2時間未満」が34.0%、「〜30分」が9.7%となった(図1)。また会議への平均出席者数は「6〜10人」が最も多く43.8%、次いで「4~5人」が36.1%、「2~3人」9.7%、「11~15人」7.6%と続いた(図2)。
この結果を2020年1月の同調査と比較すると、会議は短時間かつ少人数開催に変化しつつある一方、会議の数が増加傾向にあることが分かった。例えば、1週間に出席する会議数についてはコロナ影響を受けていない2020年1月調査時では「週5回以上」が23.7%、「週8回以上」では11.9%だったが、今回の調査では「週5回以上」が31.3%、「週8回以上」が18.1%とそれぞれ7.6ポイント、6.2ポイントと増加した。
同様に会議1回の平均時間については「1時間未満」が前年より9.9ポイント、会議への平均出席者数では「5人以下」が5.6ポイントとそれぞれ増加しており、遠隔会議が主流となったことで従来の対面型会議とは明らかに違った会議形態に変化しているようだ。
遠隔会議の増加を背景に会議が短時間かつ少人数化してきている。前編で自社会議についての不満1位が「1回当たりの会議時間が長い」であったことからも、まだまだ企業における“長時間会議”における課題は大きいと見ていいだろう。長時間会議を防止するため、遠隔会議では創意工夫をしているユーザーも少なくない。フリーコメントでも多く意見が寄せられていた。
例えば、遠隔会議によって長時間会議を防ぐことができた事例として「Outlookのスケジュール作成時にデフォルト30分に設定する」や「時間を決めて開催しているのと次予定が入っているので終わらせる必要もある」など、時間設定をはじめから明確にした上で会議システムと連動させておくといった運用のアイディアがあった。他にも「社内説明会など長時間に及ぶものは録画データを残して後程閲覧可能にする」といったツールの活用例も挙げられた。
そもそも長時間会議が発生してしまう要因は、参加者の“意識”の問題だ。「会議が長時間になるのを積極的に防ごうという姿勢がない。最低でも会議目的の明確化とゴール(これが決まったら会議終了)、資料事前配布程度は実施すべき」や「形骸的な会議になってしまっている。前からやっていたから…は廃止したい」「議事録に残せないような会議は不要」など、参加者自身が会議をより良いものにし、できるだけ短縮化するように意識を保つことが重要であるとの意見が多かった。
また「皆で集まって合議する業務の仕方をやめ、ある程度の権限移譲が進まないと無駄な会議の削減はできない」「メールやチャットでのやり取りでは解決しないことが多く会議を行うのは仕方ないが、関係者の選定基準が甘くあまり関係がない会議にも呼ばれるのには困っている」といった声にあるように、まずは会議の開催者や決裁者などの上位レイヤーが会議に対する意識を変えることからスタートする必要もあるだろう。
変わりつつある会議形態とそれを取り巻く課題に企業はどのような対策を講じているのだろうか。調査したところ「ビデオ会議システムを導入し出張会議を削減」53.8%、「チャットなどコラボレーションツールを活用し会議を削減」39.3%、「会議のゴールを設定し会議目的を明確化する」15.2%、「参加者の見直し」13.8%、「定時後の会議を廃止する」13.1%と続き、2020年1月に行った前回調査時と上位の顔ぶれにはほとんど変化は無かった(図3)。
こうした取り組みに対しての“効果”については「やや効果を感じる」が最も高く55.9%、次いで「やや効果を感じない」19.3%、「全く効果を感じない」18.6%、「大きな効果を感じる」6.2%となり、まとめると62.1%と過半数が効果を感じている結果となった。一方、コロナ影響の少なかった2020年1月の前回調査時では85.3%が効果を実感していたものの、コロナ渦の現在については23.2ポイントも効果を感じる割合は低くなっていることも明らかになった。
そこで取り組みごとに“効果を感じる度合い”を比べてみたところ「ビデオ会議システムを導入し出張会議を削減」や「チャットなどコラボレーションツールを活用し会議を削減」といったITを活用した取り組みについては総じて高い傾向にあったものの「日常のコミュニケーションを増やし会議を削減」や「参加者の見直し」については全体よりやや低い傾向にあった。また全体的に効果度合いが高かったのは「会議のゴールを設定し会議目的を明確化する」取り組みであった。このことから想定されるのは、コロナ渦において物理的な移動を極力避けるためにもIT活用による効率化には一定の効果を感じている一方で、普段のコミュニケーション量や質についてはどうしても劣ってしまうため、会議そのものの改善にはなりづらいと考える方が多いのでは、ということだろう。そしてもう1つの重要な示唆は、会議形態によらず会議目的を明確にした上で参加者全員が最終アウトプットを出すために意識をそろえるといった、会議における基本的な“姿勢”が最も重要であるということが改めて認識できる結果となった。
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