本記事は2020年12月22日のBUSINESS LAWYERS掲載記事をキーマンズネット編集部が一部編集の上、転載したものです。
コロナ禍によりデジタル活用が一段と推進されるようになり、デジタル化の実現度合いが企業活動の成否を大きく左右するという声も聞かれます。
そうしたなか「強制的にデジタル化を取り入れなければ、企業は本当に生き残れなくなる」と語るのは、元日本マイクロソフトの業務執行役員であり、現在は株式会社圓窓の代表取締役としてITコンサルティングや多数の講演を行う澤 円氏です。本稿では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を取り巻く潮流や、デジタル化に取り組むうえで経営層、システム担当者それぞれが持つべき考え方について、澤氏に忌憚(きたん)のない見解を聞きました。
――近年、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」をキーワードとして、デジタル化推進の必要性が盛んに叫ばれ、コロナ禍の影響からその流れがさらに加速しています。企業の経営層は、事業活動におけるデジタル活用の必要性についてどのように見ていますか。
2020年1〜2月の時点では、企業イメージアップや採用促進などの理由から働き方改革やDXに取り組む経営者の方が多数派で、経営課題として真面目に取り組む方は少なかった印象があります。多くの経営者が、「会社をよくしたい」とは思っていながら、デジタルの活用方法がわかっていなかったことも理由にあるでしょう。テクノロジーに関わるバックグラウンドを持つ経営者の方はすごく少ないんですよね。さらに周りも経営者がITについて知らなくても困らない状態にしてしまっている。会議のときには、いまだに紙を配るわけです。経営者の方も「資料閲覧はタブレットだけにしなさい」という指示は出さないんですよ。
――経営者を含めてビジネスパーソンに今一番求められているのはどのようなことでしょうか。
「やめることを決める」ことです。やることを減らすためにもっとも大事なのは自動化であり、そこでITツールを使うことになるはずです。
日本は長時間労働を美徳とするところがあり、「システムではなく運用でカバー」しがちですが、僕はこれを「悪魔の言葉」「地獄への片道切符」と呼んでいます。運用でカバーする際には、誰かの時間を犠牲にしています。それを是とすることは経営の放棄とも言えるでしょう。国際競争力の低下や、優秀な人材の海外への流出にもつながりかねません。
こうした状況を改善するうえで、今は一世一代のチャンスです。新型コロナの影響で、インターネット元年である1995年以来のリセットボタンが押された状態だと言えるでしょう。
――四半世紀ぶりに訪れた大きな転換点というわけですね。
一般でもインターネットが使われるようになった1995年、「ファクスとメール、効率がよいのはどちらか」という特集が本当にありました。今聞くとギャグのようですが、当時はみんな本気だったのです。今はそれとそっくりの状態だと思います。リモートワークとFace to Faceはどちらが良いか、という議論はまさに同じ話でしょう。
新型コロナは今後ある程度は収束するかもしれませんが、変化したさまざまな運用は、コロナ禍以前には絶対に戻りません。かつてのような密な状態でレストランを営業するかといえばやらないのではないでしょうか。1995年の例で言えば、インターネットが普及する前に戻ることは考えられないですよね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。