2019年調査に実施した前回調査の傾向が順調に推移し、ワークフロー専用ツール”離れ”が起きている様子がある。このまま「オワコン化」するのか? 企業規模によって異なる、ワークフローツールの在るべき姿とは。
キーマンズネットは2021年4月7日〜23日にわたり「ワークフローツールの導入状況」に関する調査を実施した。全回答者数165名のうち、情報システム部門が28.5%、製造・生産部門が17.0%、営業・販売部門が12.7%、経営者・経営企画部門が6.8%といった内訳であった。
前編では大企業を中心に脱Excel/ペーパーレスが進む一方でワークフローの導入率や満足度は減少傾向にあること、ワークフローツールのレガシーがコロナ禍対応の足かせとなっている可能性について触れた。後編では、ユーザーが今後のワークフローツールに何を求めているかを紹介する。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
はじめに、利用しているワークフローツールの導入形態を聞いたところ「グループウェアの一機能として」が45.4%と最も高かった(図1)。この結果を2019年1月に行った前回調査と比較すると、ワークフロー専用ツールの利用率に大きな変化はない一方でグループウェアの一機能を活用しているケースは22.4ポイント増と、およそ2倍となった。
これは前回調査で「今後の予定」を聞いた結果と関連している。当時30.7%が「グループウェアの一機能としての導入を予定している」と回答し、今回の調査で実際にグループウェアの利用が増加していることから、多くの企業が計画通りにワークフロー専用ツール“離れ”を進めているとものと考えられる。
また、グループウェアの活用が進んだ背景には、2020年のコロナ禍が考えられる。既存のワークフロー専用ツールの利用が続く一方で、テレワーク環境における新しいワークフロー管理の手法が現場に定着しつつあるのかもしれない。
ワークフローの専用ツール離れが進んでいる理由を探るため、まず企業規模別に、ワークフローツールをどのような用途に使っているかを調べた。(図2)
回答全体を見ると、最も多かったのは「稟議書類管理」59.4%で、次いで「経費・旅費精算管理」58.0%、「勤怠管理」51.0%が上位に続いた。企業規模別に見ると、ほぼ全ての項目において従業員1001人以上の大企業ほど「使っている」と回答した割合が高い。例えば「稟議書類管理」は72.7%で、「経費・旅費精算管理」78.2%、「勤怠管理」69.1%となる。従業員100人以下の企業では、それぞれの項目で「使っている」と回答した割合は半数を下回り、大企業ほどさまざまなシーンでワークフローツールを活用している状況が見えた。
前編では既存のワークフロー専用ツールが変化の足かせとなり、ユーザーの不満が高まっている状況が見えた。さらにグループウェアへのシフトが進んでおり、企業は今後ワークフローツールをどうしたいと考えているのか。
そこで「今後連携したいツール」を聞いたところ、全体的には「グループウェア」や「文書管理」に注目が集まった(図3)。これらは別々のツールを連携させるか、いずれかのツールに集約させて付帯する機能を使うかは悩ましいだろう。ワークフロー管理が「別ツールのオプション機能で済んでしまう」という状況になれば、専用ツール離れはさらに加速する可能性がある。
もう1つ注目したいのは企業規模別のニーズで、1001人以上の大企業を中心に「RPA(Robotic Process Automation)ツール」との連携ニーズが高い。
RPAは定型業務の自動化によって人材の生産性を高める。一般的に従業員の多い企業ほど業務の細分化が進んでいるため、定型業務の洗い出しのハードルは低くなるだろう。経費精算や旅費精算、勤怠管理といった業務をRPAで自動化したり、AI-OCRによる紙情報のデータ化を進めたりといった方法で業務全体の効率を上げる取り組みを進めやすい点が、今後の意向として出ていると推察できる。
一方で従業員101〜1000人の中堅中小企業を見ると、「ノンプログラミングアプリ開発ツール」との連携を見込んでいる割合が高く、IT人材の不足を補いたい意図が見える。
全体的にワークフロー専用ツールの「離れ」傾向が見えるアンケートとなったが、それでは現状「ワークフローツールに求めるもの」はどうなっているのか。そこでワークフローツールを検討する際に重視するポイントを調査したところ「操作性の良さ」76.2%、「導入コスト・運用コスト」60.1%、「安定性・可用性」44.8%が上位に挙がった(図4)。
従業員規模の大きい会社ほど、操作性や他システムとの親和性、柔軟なフロー設計など、多様な働き方への対応を見据えた機能と、安定性・可用性やセキュリティを重視する傾向にあった。規模が小さい企業群では、ノンプログラミングやモバイル端末への対応など、リソースが限られる中でも直近の変化に対応したいと考えている様子が見えた。
これらを2019年の前回調査と比較すると、「ノンプログラミング」や「モバイル端末への対応」「仮想環境・クラウド環境への対応」といった項目が5ポイント近く増加している。以前から注目していたトピックスが直近の課題となり、多くの企業が「見込みの通り」にワークフロー管理について再考している様子が見て取れた。
全体的に、2019年の前回調査で見えた傾向が今回の調査でそのまま実現している様子が見えた。今度も同様に「傾向通り」が続くのであれば、ワークフローツールはグループウェアや文書管理ツールのオプション機能に吸収されて「不要なもの」になる可能性もあるだろう。
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