テレワークが浸透し、働き方の転換期を迎える現在、企業が求めているPCはどういったもので、どの機種が人気なのか。また、今の働き方に合ったPCを調達するには、CPUやストレージ、メモリなどは、どういったものが最適なのか。法人向けPCの最新トレンドを解説する。
ワークスタイルが多様化するなど、クライアントPCの利用環境は時流に合わせて大きく変化し、PCのトレンドや選定ポイントも転換期を迎えている。
今、企業が求めている機種はどういったものなのか。また、今のワークスタイルに最適なPCを選ぶには、CPUやストレージなどは最低どのくらいのスペックを考えるべきなのか。
本特集では、現在の人気機種とPC選びの選定ポイントについて、法人向けPCのリース・レンタルサービスを専業とする横河レンタ・リースに話を聞き、その内容を基に法人向けノートPCの最新事情を解説する。
これはPC調達にも影響することだが、コロナ禍の影響による工場の操業停止や世界的な需要過多などによる部品供給不足、特にCPUやGPU、メモリなどの半導体不足は現在も続いている。テレワークニーズが後押しし、法人向けPCの需要が供給量を上回る傾向にある中、品薄状態はまだ解消されていない。数十台から数百台といった大量調達では、発注から納品までに数週間から数カ月かかる場合もあり、注意が必要だ。
このように、法人向けPCのニーズが高まりを見せる中で、企業はどのようなモデルを求めているのか。PCの最新トレンドを知るために、PCを中心としたデバイスのレンタル事業を中核とする横河レンタ・リースに、今人気のあるモデルを尋ねたところ、次の5つのモデルが挙がった。
人気なのはA4型ノートPC(15インチ型以上)で、先に上げたモデルの中では、DELLのLatitude 3510やNECのタイプVFがこのタイプの代表例だ。DELLのLatitude 5320、東芝から事業を引き継いだDynabookのG83、パナソニックのレッツノートSV(CF-SV9)などは、現在比較的調達しやすい機種とのことで、それが人気の理由の一つだと考えられる。DynabookのGシリーズは軽量でスタイリッシュなところが人気だという。レッツノートSV(CF-SV9)は、軽さに加えて頑丈なところが企業に好評だという。
コロナ禍以前は、営業担当者などが使う外回り業務に適した、軽量でモビリティーの高い11インチのノートPCが人気であったが、ここ最近のテレワークの浸透により、持ち運びやすさよりも自宅などで据え置いて利用するのに都合が良い機種が人気だという。キーボードの打ちやすさや画面のサイズ、自宅の周辺機器と接続しやすい外部接続ポートの種類の多さなどに優位性があるA4型ノートPCに需要がシフトしているようだ。
PCの調達の際、それらが業務に耐え得るスペックかどうか、利用者の環境に合った端末かどうかなど考慮すべき点は多岐にわたる。ここからは、「CPU」「メモリ」「ストレージ」「ディスプレイ」「外部機器との接続ポート」「カメラ、音声の入出力」「無線通信規格」「バッテリー」の8項目について、PC選定の際に考慮に入れたいポイントを解説する。
現在、法人向けPCではIntelの「Core i5」以上が主流のようだ。特にテレワークでは、VDI(仮想デスクトップ)を用いて仕事を進めるケースもあり、最低でもCore i5以上の性能は欲しいところだ。
だが、Core i5でも開発プロジェクトなど、高速処理が求められる場面では力不足になる可能性がある。一般業務にはCore i5、開発業務にはCore i7といった使い分けが必要になりそうだ。
なお、Intel製以外にも最近ではAMD製の「Ryzen」シリーズの人気が高まっているが、あくまでもパーソナルユースで人気が集中しているようで、業務用途での利用実績はまだ少ないようだ。
メモリは最低でも8GB、できれば16GB以上が欲しいところだ。Windows 10のシステム要件では32ビット版で1GB、64ビット版で2GBとあるが、これは最小限の要件で、複数の業務ソフトやアプリを使うには厳しいだろう。
今後、Windowsの処理負荷が軽くなるとは思えず、業務ソフトの処理負荷も増していくことが予想される。そうした今後を見越して、メモリの容量を決めることが必要だ。開発用途で利用するのであればなおさらで、最低16GB、できれば32GBが推奨される。
今のノートPCはSSD搭載モデルが主流だ。容量は256GB以上の機種に人気が集中している。SSDの登場時には書き換え回数に上限があることを懸念する企業もあったが、法人用途でSSDが十分に長期活用でき、性能低下の問題も頻発しないことが実証されてきた。システム起動や大容量ファイルの読み書きにおいてもストレスのない高速性が評価され、コストと比較しても、今ではHDD搭載モデルを選択する理由はほとんど見当たらないだろう。
液晶ディスプレイは、A4型、B5型のノートPCのどちらも横1920ドット、縦1080ドット以上の機種が多く、この程度の解像度が得られれば実用にほぼ問題はないだろう。パナソニックのレッツノートシリーズは、12.1型機種でも1920×1200ドットの解像度だ。ハイエンドのノートPCには4K対応(3840ドット×2160ドット)のものもあるが、一般業務ではほとんど出番はないだろう。日常業務でセカンドディスプレイに接続する場合は、HDMIポートで外部ディスプレイに出力できる機種や、ワイヤレスディスプレイ対応の機種を選択するとよいだろう。
外部機器との接続には、USBやHDMI、ミニD-sub15ピンなどが、そしてWi-Fi環境がない場所で作業をする場合は、有線のLANポートも必要だ。最近のノートPCやモバイルPCは軽量化のために、外部接続用のポートは必要最低限に抑えられている傾向にあり、ノートPCの中にはUSB Type-Cポートしか搭載していない機種もある。
しかしテレワークなどオフィス外で作業をすることがある場合は、作業環境に応じた接続ポートが必要となり、PC選定の際は従業員の作業環境も考慮に入れたい。USBは万能な接続コネクターだが、USB2.0やUSB3.1 Gen1、USB3.1 Gen2などの仕様があり、それぞれで転送速度が異なる。また端子形状では従来の「Type-A」や「Type-C」を標準装備する機種が多い。端子形状が異なると変換アダプターを追加することになるので注意が必要だ。
PCの調達の際は、例えば「USB3.1対応のポートを3個以上搭載し、そのうち1個以上はタイプA端子、1個はタイプC端子であること」「1000BASE-T対応端子を1個以上備えること」などといった要件を示すとよいだろう。
テレワーク時代に、PC選びの要件として無視できないのがカメラとマイク、スピーカーの有無と精度だ。これらは、現行のノートPCのほとんどに標準搭載されているため問題ないと思われるが、マイク用の音声入力端子やイヤフォン用の音声出力端子がUSB Type-C端子の機種もあるため、注意したい。
カメラの解像度は1280x720ドット(720p)のHD画像対応のものであれば万全だが、このレベルよりも多少粗くても実用上は問題ないだろう。ただし、紙の資料などを鮮明に見せたい場合は、より精細なカメラ搭載モデルか、外部カメラを利用したほうが良いだろう。
現行のノートPCは「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)対応の無線LANモジュールが搭載されているものが増えてきているが、IEEE 802.11axでも「IEEE 802.11ac」でも、テレワークでは特に大きな支障はないと思われる。Wi-Fiの接続環境がない、あるいはセキュリティ上自社施設以外でのWi-Fi通信を禁止している場合は、調達コストは少々かさむが、LTEモジュール搭載機という選択もある。
リチウムイオンバッテリーはバッテリーサイズと容量が比例し、小さいサイズのPCほどバッテリー容量は小さい。ただし筐体デザインによっては、バッテリーをうまく筐体に収納することで大容量、長時間使用を可能にしているものもある。
こうした点が主なPC選びのポイントとなるが、PC調達の際には、テレワークなど利用環境に適したPCライフサイクル管理も考慮に入れたいところだ。中にはこうしたライフサイクルの運用管理のアウトソーシングサービスを提供するPCベンダーやSIerなどもあるため、PC調達の際にそうした点も確認するとよいだろう。
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