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デジタル人材が育たない企業に届けたい「育成を成功に導く4つの要因」

Gartnerはデジタル人材育成の実情に関する調査結果を発表した。同社が導き出した、成果の実現度に影響を与える4つの要因を紹介する。

» 2024年10月03日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 ガートナージャパン(以下Gartner)は、デジタル人材育成の実情に関する調査結果を発表した。本調査を基に、Gartnerは成果を出している企業と出していない企業の取り組みを比較し、成果の実現度に影響を与える要因を抽出した。

 デジタル人材が育たない企業に届けたい、「育成を成功に導く4つの要因」とは。

デジタル人材の育成を成功に導く4つの要因

 Gartnerは2024年4月、非IT部門の従業員に対するテクノロジー教育を実施している国内企業、公的機関の、企画・実施を担当するIT部門やデジタルトランスフォーメーション(DX)部門のマネジメント層を対象にデジタル人材育成に関する調査を実施した。本調査から、全社的なデジタル人材育成に3年以上取り組んでいる企業でも、「業務向上・事業戦略の推進に貢献している」「実業務でスキルを発揮している」などの具体的な成果を実現している割合は24%にとどまることが明らかになった(図1)。

図1 デジタル人材育成の取り組み期間3年以上の企業における成果の実現度(出典:Gartner)

 Gartnerの林 宏典氏(ディレクターアナリスト)は、「人材育成が具体的な成果に結び付くには、ある程度の期間が必要です。しかし、3年以上取り組んでいる企業でも、具体的な成果を得ている割合は4分の1にとどまっています。一方で、過半数は成果を得られていないことも判明しました。これは、デジタル人材育成にかけたコストや時間が多くの企業で回収されていないことを示しています」と述べた。

 成果を出している企業と出していない企業の取り組みを比較した結果を基に、成果の実現度に影響を与える4つの要因を紹介する。

事業部門の関与が強いほど実績を得やすい

 調査では、デジタル人材育成に対する事業部門の関与度が高いほど、成果を獲得が出やすいことが明らかになった。林氏は「習得したスキルを活用する場は事業部門であり、そのニーズを把握せずに教育プログラムを実施しても、現場で求められる人材を育成する可能性は低いでしょう。CIO(最高情報責任者)は事業部門と共にプログラム内容を検討できる関係を築くことが重要です」と述べだ。

 事業部門の関与を促す方法について、林氏は「CIOは、DXプロジェクトに積極的に取り組んでいる部門長を見つけ、その部門の人材育成を重点的に支援することが求められます。小さくとも早期に成果を出すことで、人材育成の重要性を認識させられます」と提案した。

実践的な教育手法を採用すると成果を得やすい

 デジタル人材育成で「仮想テーマにチームで取り組むケーススタディー型研修」や「自社の実際の課題に取り組むプロジェクト型研修」などの実践的な教育手法を採用すると、習得した知識やスキルを自ら実践し、定着度を高める機会が増える。CIOは、デジタル人材育成のリーダーに、知識やスキルの習得から現場での活用までを支援する段階的なプログラムを策定すべきだ。

スキル活用機会の有無で成果に大きな差が出る

 非IT部門の従業員が習得したデジタルスキルの活用を奨励する支援策がある企業は、支援策がない企業と比べ、4倍近く高い割合で成果を出している(支援策がある企業:26%、支援策がない企業:7%)。特に「デジタルスキルの習得・活用を人事評価の目標に組み入れる」「社内副業制度を導入する」などの支援策が有効だった。

評価指標が経営視点に近いほど成果を得やすい

 調査では、デジタル人材育成の成果の評価指標を4つに分類した。「人材育成活動の指標」「直接の成果指標」「経営・事業レベルの成果指標」「定めていない」とした上で、成果創出の段階別に評価指標の利用率を比較したところ、成果を出していない企業は「定めていない」の割合が最も高かった。一方、成果を出している企業は「経営・事業レベルの成果指標」を定めている割合が最も高いことが判明した(図2参照)。

図2 利用している成果の測定指標別に見た成果の割合(出典:Gartner)

 林氏は「デジタル人材育成の成果は、DX本来の目的である経営、事業レベルの指標で評価すべきです。CIOは、設定した指標に基づき、経営や事業部門が期待したインパクトをどの程度実現できているかを把握し、教育プログラムを進化させてより大きな成果を実現する必要があります」と述べた。

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