M1プロセッサを搭載したMacが好調な一方で、Appleは訴訟問題も抱えている。有名なのが「Fortnite」の課金にまつわる訴訟だが、その対審中に、Appleの幹部が長年語り継がれてきたMacの安全神話を崩壊させるようなことをつい“漏らしちゃった”という。
最近のAppleは、Intel製CPUから脱却して「Appleシリコン」と呼ぶ独自のCPUを搭載したMacシリーズを発売するなど、“攻め”に入っている。
好調のように見えるAppleだが、一方で訴訟問題も抱えている。その一つがユーザーやゲーム業界をザワつかせた、ゲームベンダーEpic Gamesの「Fortnite」にまつわる問題だ。2021年5月3日にこの訴訟のトライアル(対審)が始まったところだが、訴訟の中で、Macの安全神話を完全崩壊させるようなあることをAppleがついに認めたという。
Appleの幹部が、つい“漏らしちゃった”こととは?
まずAppleとEpic Gamesの訴訟についてもう少しだけ説明しよう。Epic Gamesは、バトルロワイヤルゲームとして人気を集める「Fortnite」を、「App Store」で「macOS」および「iOS」向けに提供してきた。しかし2020年8月にEpic Gamesは、ゲーム内課金についてApp Storeを介さない課金方式に変更した。
これによって、従来は手数料30%を徴収されていたというApp Store内課金を回避することが可能となったのだが、当然Appleも黙ってはいない。App Store規約違反としてストアからFortniteを削除した。Epic Gamesはこれを独占禁止法に違反するとして提訴。そして、2021年5月3日から対審を開始した。
対審でEpic Gamesは、そもそもAppleデバイスへのゲーム配信と課金決済についてApp Store経由を必須としていることが独占に当たると主張した他、30%の手数料が高すぎること、一部のベンダーに対しては手数料を割引していることなどを述べた。
対するAppleは、Epic Gamesのゲームは他のプラットフォームでも配信しているのだから独占には当たらない、手数料も高くない、この配信方式は他のプラットフォームでも採用されているものだ、と主張した。また、App Storeを介さないで課金決済させることは若年層のプレイヤーにとって衝動的な課金を促しかねないとも指摘した。
こうしてまだ対審は続いているのだが、2021年5月19日に開催された対審中に証人として登場したAppleのソフトウェアエンジニアリング担当 上級ヴァイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ氏がとんでもないことを発言したというのだ。Tech系サイト『The Verge』をはじめ、幾つかのサイトが報告した。
それによると、今回の裁判の論点の一つとして「なぜMacは複数のアプリストアを利用できる(一部のアプリはストアを介さなくても利用できる)のに対して、『iPhone』や『iPad』などのiOSデバイスは必ずApp Storeを利用しなければならないのか」ということが挙がった。
これを受けて、裁判官はフェデリギ氏に質問をした。するとフェデリギ氏は「Macは定期的に悪用されているからだ」と回答した。そして「iOSは顧客保護のために高いセキュリティ基準を確立した。一方でMacはその基準を満たしていない」と続けたという。さらに「現在、Macには許容できない数のマルウェアが存在する」と続けたというのだ。
フェデリギ氏は、MacとiOSデバイスを「全く違う製品」だと説明し、Macを「オフロード車のよう」と表現した。「オフロード車がオンロードでもオフロードでも走れるのと同様に、Macはさまざまなストアを使え、自由にアプリをインストールすることもできる。その自由さの代償として、ときにはマルウェアの脅威にさらされることもある。一方でiOSデバイスは完全にオンロードのみ、つまり認証され安全が確保されたアプリしか使えない」と言ったのだ。
さらに裁判官は「Macは安全なプラットフォームなのか」と質問し、フェデリギ氏はそれに対して「車の運転で慎重な人は事故を起こしにくい。MacはPCよりは安全だと思うが、車と同様に慎重さに欠けると危険な目に遭うこともある」と説明した。
フェデリギ氏がこの発言を持ち出したのは、もちろん対審においてApp Storeの正当性を主張するためだ。最終的にフェデリギ氏は「Macは安全に操作できるものと信じている」と述べたものの、Appleの重役が「Macは大量のマルウェアに脅かされている」と認め、以前から語り継がれてきた「Mac安全神話」をApple自体が否定するとして、インパクトを与える発言となった。
まだまだこの訴訟は続くが、今後も関係者による衝撃的な発言があるかもしれない。訴訟の結果とともに注目していきたいところだ。
上司X: Macは恐ろしい数のマルウェアの脅威にさらされていると、Appleが認めちゃったということでちょっとした話題になっている、という話だよ。
ブラックピット: Mac安全神話の大崩壊ですね。Appleの幹部がそう話したのなら、まぁ仕方がないですね!
上司X: Epic Gamesとの訴訟の中の発言だけどな……ってなんで妙にうれしそうなんだ?
ブラックピット: 別にうれしくはないですけど、なぜか面白くて。しかしEpicもストアにこだわりますね。Mac用のアプリケーションは別にApp Storeじゃなくても配信できますけど、iOS用のアプリケーションはApp Store以外じゃ配信できないのが基本ですからね。
上司X: iOSだけでFortniteを遊んでいたプレイヤーは全世界で1億1600万人もいたって話だからな。Macよりも、とにかくiOS版を従来通り配信したいんだろう。
ブラックピット: だったら30%ぐらい別にいいじゃん、とも思いますけどね……って、Fortniteはどうでもいいんです。今回の論点は「Macはもはや安全じゃない」ということですから。さて販売元が危険だというMacの運命は果たしてどうなるのでしょうか?
上司X: 変わらないんじゃないの? 最近だとさ、マルウェアそのものより、ユーザーの判断ミスで偽サイトでマルウェアに感染したり、詐欺サイトに連れて行かれて個人情報が流出しちゃったりすることの方が危険になりつつもあるからなあ。フェデリギさんが言うように「使う人次第」の側面は否めない。
ブラックピット: 確かに。自称超安全なMacよりも危険だとされているWindows PCだって、普通に生活やビジネスで使っているわけですからね。まあなんとかなりますかね。
上司X: 相変わらずテキトーだなキミは。でもその通りで、セキュリティ対策をしたり、ベタな詐欺メールに対応したりしなきゃならないのは、WindowsだろうがMacだろうがあまり変わらないからな。Apple幹部の「Macは安全じゃない」発言は衝撃的だけど、なるようにしかならないだろうな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
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中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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