ガートナーが発表した2021年の「ハイプ・サイクル」で話題になったのが「ヘルスパスポート」だ。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などに罹患(りかん)していない健康体であることを証明するものだ。
注目されているのは、COVID-19に感染している可能性があるか否かを証明するデジタル技術を利用したサービスだ。日本の厚生労働省が提供する「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」がその一例だ。しかし、COCOAはCOVID-19感染者に接触した可能性があれば本人に通知されるだけのものだ。グローバルではアプリを使って感染の有無を確認し、罹患していないことが確認できれば入国や施設への入場を許可するなどの仕組みが、国や地域、航空関連団体、民間会社などで整備されつつある。
ヘルスパスポートは、COVID-19対応のための仕組みというわけではない。個人の健康管理や、医療機関、介護機関、行政機関などでの医療、介護対応、ヘルスケア対応のために、種々のパーソナルデータを利活用しようという試みの一つだ。ヘルスパスポートはデジタル情報をベースとしているため、「デジタルヘルスパスポート」と呼ばれることもある。
欧州でいち早くCOVID-19のパンデミック抑制に成功したと言われるデンマークで開発された「Coronapas」では、「ワクチン接種済みであること」「72時間以内に受けた検査で陰性であること」「陽性判定から14日〜180日以内」のいずれかであることを、医療ポータルのアプリで証明できる。このアプリで感染していないことを示せば、入室、入場制限が課されている各種施設や店舗への入場、入店が可能となり、利便性を損なわずに経済活動が続けられ、同時にパンデミック抑制効果もあったと考えられる。
このようなCOVID-19対策のための健康状況証明アプリは、特に地域や国を越えた移動の際に利便性が高いことから、各国で開発、導入が進められてきた。2021年7月には、欧州連合(EU)が準備してきた「デジタルCOVID証明書」(グリーンパス/デジタルグリーン証明書)の共通システムが本格運用を開始した。
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