2021年残すところあとわずかだが、多くの企業でテレワークに対する意見が割れたままだ。Future Forumの調査から、役員と従業員のオフィス出社に対する意見の違いや、テレワーカーとオンサイトワーカーがひそかにされている"扱いの違い"などが明らかになる。
多くの企業で役員と従業員のテレワークに対する意見が割れている。Slackが運営するシンクタンクFuture Forumが多国籍企業向けに実施した調査で、両者の相いれない"テレワーク観"が明らかになった。
Future Forumは米国、英国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本の1万人以上のナレッジワーカーを対象に、テレワークへの考え方について調査した。
回答した従業員のうち76%が「フルタイムのオフィス勤務に戻らないことを希望する」と答えた。一方、役員のうち68%は「フルタイムまたは大半の時間のオフィス勤務を希望する」と答え、そのうち59%は「ほぼ全ての勤務時に従業員のオフィス出社を求める」方針だと述べた。
別の調査項目では、ほとんどの経営層が従業員の要望を聞かずにコロナ収束後の勤務方針を決めたことが明らかになり、Future Forumは「警報を発すべき発見」だと述べた。「役員が決めたパンデミック後のテレワークポリシーは透明性がある」と答えた従業員が半数未満の状況からも、両者の意見の相違は明らかだ。
他の調査会社からも、Future Forumの調査と同様の結果が出ている。Prudential and Morning Consultが2021年4月に実施した調査では、米国の労働者のうち68%が「コロナ禍の終息後もハイブリッドワークを希望する」ことが分かり、87%が「週に1日以上のテレワークを希望する」と回答した。
管理職が考える、テレワーカーとオンサイトワーカーの"代替の容易さ"や"キャリアへの影響"でも、興味深い結果が出た。Society for Human Resource Managementの調査結果を見ていく。
本調査では、管理職の67%がテレワーカーはオンサイトワーカーに比べて「人員の代替が容易」だと答えた。また、管理職の62%はフルタイムのテレワークは「キャリアに支障がある」と考えており、72%は「全ての部下をオフィスで働かせたい」と回答した。
人事領域の専門家によると、経営層と従業員の意見の差を埋めるには、テレワークの状態でも企業文化と業務フローを従業員に浸透することが重要になるという。そのため、人事部門はテレワーク時のネットワーク環境やチームビルディング、コンプライアンス順守、不動産コストなどさまざまな点を考慮する必要がある。
テレワークの浸透は全米の職場に大きな変化をもたらし、都市や地域全体の姿をも変えた。サンフランシスコのベイエリアでは、テクノロジー関連の労働者の流出により空きアパートが増え、人の流入が増えた周辺地域の住宅価格は上昇中だ。人材の移動に伴う居住地の変化を考慮して給与を決めるべきかという議論があり、実際に居住地の変化による影響を給与に反映した企業もある。
今後の従業員の勤務形態については、デルタ変異株流行時のAmazonを参考にするのもよい。CEOのアンディ・ジャシー氏は、全社的な勤務体系の基準を設けるのではなく、オフィス勤務とテレワークの組み合わせ方をチームリーダーが自由に設定できるようにした。
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