つなぐマーケティングが運営するフリーランス情報メディア「フリーランスガイド」は、ビジネスパーソンを対象に電子契約に関するアンケート(調査期間:2022年1月10〜15日)を実施した。
電子契約の認知度について尋ねた項目では、「はい」が76.1%、「いいえ」が23.9%であった。8割近いビジネスパーソンが電子契約を認知しており、サービス利用者以外にも認知されているのが分かる。
デジタル改革関連法の施行により、企業が電子契約に前向きになった影響で認知が進んだと考えられるが、一時期テレビで頻繁に流れたCMの効果が大きいとの見方もある。
図1 電子契約書を知っている人の割合(出典:つなぐマーケティングのリリース)
「勤務先で電子契約を導入しているか」と尋ねた項目では、「はい」が21.7%、「いいえ」が60.9%、「わからない」が17.4%という結果になった。
確実に電子契約を導入している企業は2割強で、「わからない」という回答の17.4%を足しても39.1%となり、4割を下回る結果であった。コロナ禍の影響でテレワークを実施する企業が増え、契約なども電子化が進んだように思われたが、実際の導入は半数にも満たない。
図2 電子契約書の導入状況(出典:つなぐマーケティングのリリース)
業界別に導入率を見ると、「金融・保険業」が71.4%で最も高く、次に「通信・インターネット業」(36.8%)、「建設業」(34.8%)、「製造業」(29.0%)と続いた。
図3 電子契約書の業界別導入率(出典:つなぐマーケティングのリリース)
以降、電子契約を「導入している」「導入に至らなかった」とした回答者の声から、電子契約の魅力や導入に至らない数々の障壁が明らかにする。
「電子契約はもっと普及すべきだと思うか」という設問では、「はい」が68.3%、「いいえ」が2.7%となり、電子契約の普及を望まない人は3%に満たない結果となった。
図4 電子契約書が今後普及するべきか(出典:つなぐマーケティングのリリース)
電子契約について利用者は感想を、利用したことがない人はイメージを自由記入方式で回答した。
契約の締結がスムーズかつスピーディーに済むことや、紙や管理コストを削減できることなどが挙げられた。
- 契約のスピードアップに貢献し、管理や保存が容易で紛失などの心配がない。契約書情報の共有や透明化が進む
- 原本が紙ベースではないので保管スペースの心配が不要
- 契約に際しての時間が格段に早い
- 導入が面倒くさいかもしれないと先入観があったが、実際利用すると便利です
- 書類の持参や送付が不要なため効率が良く、収入印紙が不要なため経費削減にもなりとても良いと思う
- 送料などのコスト削減、社内進捗(しんちょく)を可視化できる
- 遠方の企業に直接訪問する手間や費用を省け1時間以内など短時間で契約できる
- 対面での契約ではなく、やりとりがスムーズなところは非常に良い
- ペーパーレス化の時代なので、企業的には経費の削減や時間短縮にもつながるのが良い
セキュリティや安全性への不安、自社や取引先で使い方が分からない、操作に慣れてないことへの不安などが挙げられた。
- セキュリティやプライバシーなどを配慮する点が増える
- 電子契約業者のクラウドセキュリティに不安がある
- バックアップを紙で用意するなどの実務が残る可能性がある
- 読み合わせなどをしていないのでお互いの認識に誤解を生じる
- 簡単な売買契約などは電子契約を推進するべきだが、大きな金額が動く契約などはまだまだ難しい
- 電子契約に慣れていない、または安全性に不安のあるアナログ上司を説得すること
- 先方が不慣れな場合は敬遠される、丁寧な説明が必要になる
- 押印がデジタルなので、効力あるのかどうかが心配
- 地方ではあまり普及しない気がする
- まだまだ電子契約に慣れていない取引先がある
- 電子契約の社内ルール作成と実行(浸透)にハードルがある
- 「コロナ禍ということもあり、ここ数年で一気に普及してきていると思います。それにより店頭でしかできなかった契約、来社して押印しなければならない契約書といったものが不要になり、自宅で契約、処理できることが多くなりました。もちろん情報漏えいのリスクも報告されていますが、それは紙媒体のものでも変わりはないと思っています。特に社内での稟議(りんぎ)書や契約書、見積書、決裁書など多くの押印、署名を必要とした業務も、その書面をPDFでデータ化するという方法での管理保存をしてたので、保存の為の項数を考えれば、電子契約については良い面の方が圧倒的に多く感じています」(30代男性/通信・インターネット業)
- 「契約書を紙で取り交わす時代はもう終わっても良いと思います。発送、返送にかかる費用もなく、スキャンしデータにしなくともダウンロードするだけで電子データとしていつでも確認できるメリットが大きいためです。実際使ってみた感想としても同サイトのIDさえ作成してしまえば簡単に利用できるため、そこまで不自由は感じませんでした。データ漏えいのリスク、契約書の改ざんのリスクなどはもちろんあると思うので、双方がしっかりと保存を行うことで危険を回避できるのであれば問題ないかと思いました」(20代男性/通信・インターネット業)
- 「導入が面倒くさいかもしれないと先入観がありましたが、実際利用すると便利です。良い点はPDFを印刷すればいいので最悪無くしても再発行できることです。デメリットは電子契約に慣れていない、または安全性に不安のあるアナログ上司を説得することです」(50代女性/製造業)
- 「スピーディーに契約が済むところは良いですが、会社によって導入の仕方が違うので、こちらも契約を提示された時に戸惑いを感じます。もう少し普及、統一性があるとイメージがより良くなると思います」(50代女性/通信・インターネット業)
- 「ペーパーレスになることで、印鑑と記入の手間や管理の簡略化が良い点。悪い点としては、アップロードに不備があった場合、改めてクライアントと契約処理をし直す必要がある」(40代女性/サービス業)
- 「紙の書類を保管する必要がなくなること、事務処理や書類整理が楽になりそうなことは良い点だと感じますが、電子契約を導入するコストがかかりそうなため、業種にもよると思いますが頻繁に使用しない個人経営の会社などでは当面必要がなさそうに感じます。ただ、大手企業ではテレワークが推奨されている昨今、他者が触った紙に触れるのも抵抗があるので、非接触ツールとして役立つ場面が増えるのではないかと想像しています。また、電子帳簿保存法が改正されたこともあり、今後さらにさまざまな書類が電子化されていくことが予想されるので、そういった動向に注視していきたいと思います」(30代女性/飲食業)
- 「契約書を扱う部署によりますが、昨今の世情により電子申請などが普及しないとリモートワークに移行できないということで電子契約を視野に入れているようです。使用したことはありませんが、印紙などの経費も削減できると聞いております。確かに電子契約を使用する際に費用はかかりますが契約書を紙ベースにすることによるコスト、作成の手間や出社の必要を考えると、私個人としては良い点の方が多く感じております」(40代女性/不動産業)
- 「大きな企業は良いのかもしれないが、弊社のような中小企業かつ契約を結ぶという作業があまりないような場合、システムを導入するのにかかる費用がかなり負担になる。電子契約が当たり前になると、ちょっと困ります。システム導入ではなく、1回限りのスポット使用みたいなものができれば、使用を検討するかもしれません」(40代男性/サービス業)
- 「契約手続きが簡便化、短期化されるイメージがあり、もっと普及するとよいと思います。ただ、改ざんなどの不正行為の可能性がアナログの契約と比べて高まるイメージもあるため、その点が心配です」(40代男性/通信・インターネット業)
本調査で電子契約の認知度は8割に迫ったが、実際の企業の導入率は4割にも満たないことが明らかになった。導入しない理由として、セキュリティ面や使い方などへの不安が多く挙げられた。
電子契約の普及にはもう少し時間がかかるだろう。さらに電子契約を推進する動きが活発化なることで、近い将来電子契約が当たり前になる時代がくるかもしれない。